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神経救急 シリーズ1.

けいれんに遭遇したら:二次的脳損傷から脳を守るために



1. 症例紹介

自宅でけいれん発作を起こし倒れているところを発見された高齢者。救急隊が到着時には、けいれんが続いており重度の意識障害(JCS 3桁)が遷延。酸素化の低下(SpO2 88%)もあり搬送。


2. けいれん重積は「Time is Brain」

脳卒中と同様に、けいれん重積状態も時間との勝負です。発作が5分以上続く場合は「早期てんかん重積状態(early status epilepticus: SE)」とされ、即座に治療が必要です。30分以上の発作は「確立したてんかん重積状態(established SE)」と呼ばれ、後遺症や死亡率が上昇します。

POINT 1

  • 5分以上持続する発作は治療対象

  • First line: ベンゾジアゼピン系薬剤(例: ジアゼパム 5-10mg)


3. 研修医のToDo:30分のタイムリミットを守る

発作をいかに早く止めるかが重要。発作が30分を超えるとリスクが急増するため、First lineとしてベンゾジアゼピン系薬剤の投与を速やかに行い、それでも止まらない場合には2nd line、3rd lineを検討します。


研修医のToDo①:救急搬送時の準備

  1. モニター設置、点滴ルート確保、酸素投与

  2. 血液検査、血糖測定、ルーチン検査の準備

  3. 1st lineと2nd lineの薬剤準備

(ジアゼパムなどをシリンジに事前に吸っておく)


研修医のToDo②:Second Lineの準備

  • Second line薬剤: レベチラセタム、ホスフェニトイン

  • 救急車到着前に薬剤の準備を整えておくことが重要です。

  • これらの薬剤はERに常備されていないので、事前に撮りに行っておくことが大事。ただし安価ではないので、開封は指示を待ちましょう。いつでも出せる準備をしておくことが大事。



4. 治療介入の判断基準

すべての発作が治療対象となるわけではありません。例えば、てんかん患者の日常的な短時間の発作は治療を要しないことがあります。しかし、5分以上続く発作や初回発作、バイタルサインが不安定な場合は早急な介入が必要です。

治療介入の必要な発作

  • 初回の発作

  • 普段と違う発作パターン

  • バイタルが不安定な発作

  • 5分以上持続する発作



5. けいれん時の初動対応

入院中の患者で発作が発生した場合、まずはバイタルサインや意識状態を確認し、院内救急を要請するか判断します。必要に応じて初期対応セット(点滴、採血、ジアゼパム)の準備を指示し、迅速に発作への対処を行います。



6. 発作鎮静後の対応:誤嚥性肺炎予防

ジアゼパム投与で発作が鎮静した場合、気道確保を最後まで徹底し、誤嚥性肺炎のリスクを防ぐために側臥位での体位変換や吸引処置を行います



まとめ

発作に対する初期対応は、研修医の準備にかかっています。早期に適切な介入を行い、脳を二次的損傷から守るためには、素早い「鎮火活動」が重要です。どの段階でも対応の遅れが長期的な転帰に影響することを覚えておきましょう。


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