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パーキンソン病は風邪をひきにくい?


パーキンソン病(PD)は高齢者の100人に1人


パーキンソン病(PD)は高齢者の100人に1人いるコモンな疾患です。高齢者の疾患であるため、進行期になるとPDではフレイルが大きな問題になります。一方でPDでもその初期では、みなさん元気です。PDの薬剤調整が安定した初期のPDでは、PDがあるかどうかもよくわからないくらい元気で活動的な方も結構います。


PDは風邪を引かない??


そんな初期のPD患者さんを診ていると「そう言えば風邪とかも引かないよね?」というclinical questionを持ちました。さっそく調べてみると、やはりPDでは他の脳疾患と比べて「感冒での治療歴が有意に低い」ということがわかりました。Parkinsonism & Related Disordersという雑誌に先日採択され、しばらくはPDF閲覧可能です。


https://www.prd-journal.com/article/S1353-8020(22)00387-X/fulltext

主な結果


感冒の治療歴は、コントロールでは8.8-13.3%だったのに対し、PDではわずか3.4%と低値でした。さらにpropensity score matchingという統計処理をかけても、PDでは有意に低いことがわかりました。



なぜ感冒の治療歴が低値なのか?


PD患者の真面目さや我慢強さといった特性のため、少々の症状でも投薬を受けないという行動バイアスはあるでしょうし、他の交絡因子もかなりあると思います。査読でもlimitationをしっかり書くように言われました。ですがPDのonsetからprogressionに関わるαシヌクレインに関連した「炎症」が、一時的に抗感染作用としてPDに免疫特性を与えているのではないか?と推測します。


もちろん進行期における「炎症」はPD病理の促進に関わるため、進行期での炎症惹起は避ける必要があります。つ実際、進行期のPDでは肺炎などの感染症を避ける必要性が高いというのは、みなさん経験していると思います。


スーパマリオでスターを取ると一時的に無敵になると思いますが、PDも発症するとしばらくは感染に強いのではないかな?というのが個人的な推測です。もちろん、もっともっと検証が必要でしょうし、そんな単純な話でもないんでしょう。


Parkinsonism and related disorders. 2022 Nov 21;106:105227. doi: 10.1016/j.parkreldis.2022.11.019.Online ahead of print.


DOI: 10.1016/j.parkreldis.2022.11.019


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