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脳波アレルギーの克服はここから




脳波検査とは

脳波検査は、大脳皮質の大錐体細胞の先端樹状突起に発生するシナプス後電位が、細胞外に作り出す電場の同期的な加重によって発生する電位を記録するものなんですが、そんな難しいことは置いておいて、形から入りましょう。


脳波には2つの立ち位置がある

脳波が臨床で必要となる場面には2つの主なセッティングがあります。
1つ目は、慢性疾患であるてんかんを主な対象とする通常の外来での脳波判読。2つ目は、意識障害てんかん重積状態などの救急診療での脳波判読であり、これをCritical Care EEGと呼びます。

どちらの場合も、同じ脳波検査であり、記録方法も基本的には同様ですが、評価対象の疾患が異なるため、検査の目的は根本的に異なります。

外来では、主に慢性的なてんかんの診断や治療方針の決定に脳波を使用しますが、救急の場では、脳波を用いて意識障害の鑑別やてんかん発作の継続を評価し、緊急治療の判断を行います。

このように、両者は同じツールを使いつつも、診療の場面や目的に応じて異なる判読方法が求められます。




脳波関連用語

まずは、脳波に関連する用語について簡単に説明します。

律動・周波数:
脳波の単位は周波数(Hz)です。1秒間に何回繰り返されるかで表現します。正常は8-12hzなので、その中心にある10Hzが脳波活動の正常ど真ん中になります。
 


  • 背景活動(Background Activity):
    背景活動とは、てんかん性放電など特定の一過性の異常所見に対して、それ以外の基礎的な活動を指す言葉です。前述の周波数(Hz)が脳波の単位なので、どの周波数単位が主にみられているかが背景活動の概念です。


  • 優位律動(Dominant Rhythm):
    優位律動とは、脳波上で最も頻繁に観察される律動(波)を指します。脳波にはさまざまな周波数の活動が含まれていますが、その中で最も豊富に現れる周波数の律動を優位律動と呼びます。例えば、健康な成人では安静にして目を閉じた状態でアルファ波(8-13Hz)が後頭部に多く現れます(下図)。この律動は後頭部優位律動(posterior dominant rhythm)と呼ばれ、脳の正常な活動を評価する上で重要です。正常な後頭部優位律動の特徴としては、以下の条件が挙げられます。


正常なPDRの条件


1)安静で目を閉じているときに出現すること
2)後頭部に限局したアルファ帯域の律動であること
3)左右差なく持続的で、waxing and waning(波の強弱)があること
4)目を開けると消失する(alpha attenuation)こと



電極・連結・誘導


電極は、国際10-20法に基づいて頭皮上に配置されます。この配置された電極のうち2つの電極を繋ぎ、その2点間の電位差を脳波として表示します。

この電極の繋ぎ方、つまり誘導には単極誘導双極誘導の2つの方法があります。単極誘導は全体的な所見を把握しやすく、双極誘導は局所的な異常を見つけやすい特徴があります(下図)。す。





双極誘導では、例えばFp2-F8、F8-T4、T4-T6というように、隣り合う電極同士を順に繋ぎます。この繋がりを**連結(chain)**と呼びます。


単極誘導では波形の最大点は振幅が最も高いところで示されますが、双極誘導に切り替えると、同じ波形の最大点は位相逆転(phase reversal)として示されることが特徴です(上の図の赤点)。


波の高さ:高いか低いか

脳波の波の高さは「振幅」で表現し、その単位はμV(マイクロボルト)

明確な正常値はないのですが。50μVくらいが通常の高さで、100超えると高いくらいのイメージを持っておいてください。個人差も大きいので。心電図も振幅はそこまで細かく意識しないですよね。


波の先端が尖っているか鈍っているか

波形はその形状で呼び方が異なります

ざっくりいうと、尖っているものは「棘波(きょくは)」と表現し、鈍っている遅い波形を「徐波(じょは)」と呼びます




脳波の異常所見の分類

脳波の異常にはどういったものがあるのかを説明します。
脳波の異常は、時間的な観点から
「突発性(paroxysmal)」
「非突発性(non-paroxysmal)」の2つに分類されます。



1)突発性の異常
発作間欠期てんかん性放電(inter-ictal epileptiform discharge)
発作時てんかん性放電(発作時脳波パターン: ictal EEG pattern)
の2種類があります。


これらの異常所見は、空間的な分布に基づいて
・「焦点性(focal)」
・「全般性(generalized)」に分けられます。

さらに、焦点性の異常はその局在に応じて詳細に表現されます。例えば、hemispheric(半球性)や前頭側頭部(frontotemporal)、または両側性(bilateral)や多焦点性(multi-focal)などがその具体例です。詳細は「脳波判読オープンキャンパス」を参照ください。


2)非突発性の異常
非突発性の異常所見は、すなわち徐波だと考えてください。
徐波は少し難しいので割愛しますが。徐波はどれだけ連続して続くかで少し表現が異なります。まあそんな分類もあるんだくらいの認識でokです。


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