脳神経内科を目指す若手へ: 必携の医学書ガイド10選(完全版)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・脳神経内科の専攻を決めた若手にお勧めしたい書籍について
自分で実際に買って手に取ったものの中から紹介します
嘘偽りのない個人の感想であることをここに誓います(COIもありません)
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・◾️どんな本が必要かって最初はわからない
研修医から専攻医になったものの、ちょっと前まで研修医だったわけで。neurologyの右も左もわからない状況では、教科書という道標がマスト。
ですが値段も安くはないし、どうせ買うなら効率よくベストマッチの本に出会いたいですよね。
自分の研修医時代は、本当にお金がなかったので全くといっていいほど本が買えなかったのですが。まあそれは自己責任ですけど。その反動のせいか、脳神経内科を専攻後は書籍を買い漁っていました。ちょっと買いすぎた感がありますが、せっかくならその経験からいくつか紹介していきます。
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写真はその一部ですが、一画面に収まりませんでした
眺めていると懐かしい思い出たちが蘇ってきますが、それは置いといて
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今回のテーマは脳神経内科医を目指す若手が最初に買っておきたい医学書
ちなみに医学書には
・辞書的なもの
・通読性が良いもの
・汎用性が高いもの
・クリニカルパールが多い
・検査系
・病態生理
などなど、さまざまですが。
まずは、主軸となるであろう「1. 診断プロセス全般」のジャンルから紹介していきます。その次に「2. 神経診察」のカテゴリーで紹介します。
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1. 診断編:脳神経内科病棟での頼もしい味方
・神経内科ハンドブック 第5版: 鑑別診断と治療
まずはこちら
いわゆるバイブルで、みなさん持っています。脳神経内科のほぼ全領域がカバーされていますので、教科書的な立ち位置の本でしょう。診断と治療について過不足なく網羅されていますので、ちょっとした確認にも役立ちます。写真は10年以上前に買ったものですが、使い倒した感が伝わるでしょうか?
『良い点』
・幅広い神経疾患が網羅的にまとまっている
・鑑別疾患の考え方や、治療の記載もあり、とりあえずこれで調べれば安心
・値段はそこそこしますが、内容的にはコスパ良いでしょう
『強いて言えば』
・重いので、持ち運びには難しいですが、病棟や外来においておけばok
・値段はそこそこ(個人的には元を取りました)
『ひとこと』
簡単に言えば「イヤーノート」みたいなもんで、持っておいて損はないでしょう
【気まぐれ評価も参考に】
・研修医に:★★☆☆☆
・専攻医に:★★★★★★
・通読向き:★★☆☆☆
・辞書向き:★★★★★
・コスパ :★★★★★★
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・脳神経内科診断ハンドブック 改訂2版
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次に紹介するのは『診断』に特化したハンドブックです
(写真は初版)
重要な疾患の「診断基準」や「ガイドライン」、「重症度スコア」など網羅されているのが特徴です。つまり、一つ目に紹介した「神経内科ハンドブック」では収載できなかったような内容をカバーしています。
発売後、第二版が早々に出ましたので、人気書籍ですね!
そして下畑先生が編集されているのも「間違いない」ポイント
個人的には、令和の若手には親和性高い内容かなと思います
『良い点』
・診断基準やガイドライン含め、診断に必要な情報が網羅されている
・重症度分類など診断した後のプロセスもカバー
・持っている若手が多い(個人の感想です)
・一次文献の引用も豊富
『あえてひとこと』
・この本単体だけでは、少し心細いです
・他の成書とのコンビネーションで強力な味方になります
・改定されて値段は上がりましたが、わずか3年くらいで改定されており、本書の人気が反映されています
『一言でまとめるなら』
幅広い神経疾患の診断基準と重症度分類に特化した味方はこちら↓↓
【気まぐれ評価も参考に】
・研修医に:★★☆☆☆
・専攻医に:★★★★★
・通読向き:★★☆☆☆
・辞書向き:★★★★☆
・コスパ :★★★★☆(第2版になって値上がりしている)
初版もありますが
分類などは日進月歩なので、第二版をお勧めします
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・脳神経内科 改訂5版
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「もし何か1冊だけオススメを」と言われればこちらも候補
例えば「金銭的にどうしても1冊くらいしか買えない、でも脳神経内科の病棟業務を幅広くカバーしているものを何か1冊だけは持っておきたい」、そんなときの候補がこちらです。
なお1冊だけ選ぶのであれば冒頭の「神経内科ハンドブック 第5版」も候補ですが、こちらの神田先生の本の方が圧倒的に読みやすいです。よって初学者であればオススメです。上記の写真、つまり私が持っているものは改定4版ですが、すでに5版になっていました。それだけ人気なのでしょう。
『単著』でありながら改定5版まで進んだ本はなかなか類をみませんし、著者の神田先生を知らない脳神経内科医はいないでしょう。中身については、とても読みやすく幅広くカバーしていて初学者に優しい、が当てはまります。また大学病院での研修をする場合でもカバーできる内容です。
『良いところ』
・読みやすい
・初めての疾患の予習に役立つ(特に病棟)
・単著ならではのエッセンスが豊富
『あえていえば』
・かなり分厚いですので、通読には向きません
・ちょっと値段は高めですが、その分、図も多い
『一言でまとめると』
これから脳神経内科を始める時の安心・必携アイテム↓↓
【気まぐれ評価】
・研修医に:★★☆☆☆(やる気あるならフルスコア)
・専攻医に:★★★★★
・通読向き:★★★☆☆
・辞書向き:★★★★☆
・コスパ :★★★★☆
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2. 神経診察編
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・次に神経診察です。脳神経内科医としては、神経診察のスキルを高めることはマスト。ですがその習得も一筋縄ではありません。なぜなら、どのような手順で何を診察すべきか、それすらも最初はわからないから。オスキーの神経診察は標準的ですが、もちろん不足しています。ここでは、神経診察に関する書籍をいくつか紹介していきたいと思います。では、まずは王道から。
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・ベッドサイドの神経の診かた 改定18版
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まずはこちら。半世紀にわたって読まれ続けてきた神経診察の入門書であり、ロングセラー本です(写真は改定17版)
神経診察の入門書であり、超ロングセラー本。写真は10年以上前に購入したものですが、今も内容としては普遍的です。
本書では、神経学的な診察法について正確に理解した上で実践できるためのエッセンスが詰まっています。解説と図が豊富にあるのが特徴。神経診察の入り口として必携です。みなさんオスキーで実習したと思いますが、あれだけではやはり足りません。こういった書籍を病棟に置いておけばトレーニングに効率的。
『良いところ』
・ロングセラーという実績が全てを物語っている
・何度も確認し、スキルを磨くことができる
『強いて言えば』
・わかりやすさは追求されていない
・非専門医にはもっと簡単なものがある
『ひとことでまとめると』
個人的には「神経内科ハンドブック」ととともに必携の部類に入るでしょう
【気まぐれ評価】
・研修医に:★★★☆☆
・専攻医に:★★★★★
・通読向き:★★☆☆☆
・辞書向き:★★★★★
・コスパ :★★★★☆
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・病態生理と神経解剖からアプローチする レジデントのための神経診療
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次は、若手に向けた神経診察の「わかりやすく」かつ「詳細」にまとめた人気書籍 を紹介します
神経診察って、ロジックなんですよね。だからまず大事なのが解剖。つまり、神経というシステムを理解しなければ、その診察や評価ができるわけないんです。ただ、そうなると当然ながら内容としてはどうしても難しくなりますが、本書は驚くほど『ちょうどいい感じ』でわかりやすく、でも『しっかり』と解説してくれています。まさにレジデントのため。そして、入門書なのかというとそれだけではありません。さまざまなピットフォールまでカバーされていますので、臨床での思考力や注意点も学べるでしょう。
そして神経診察は問診もかなり大事です。いかに効率よく問診を取るか、そしてその問診の土台に神経所見を重ねたうえで病巣を類推するという立体的なプロセスはまさにサイエンスなのですが、そこを心地よく解説してくれています。
『良いところ』
・問診、診察、思考過程、鑑別などあらゆる局面が網羅
・図が豊富で、わかりやすい
・かなりのボリュームですが、結構、安い
『強いていえば』
・脳神経内科へのアレルギー体質が強い方は、もっと薄い本からがいいかも
『ひとこと』
まあ、買いですね、特に若手の脳神経内科や総合診療医にオススメ
【気まぐれ評価】
・研修医に:★★★★☆(やる気ある研修医ならMAX)
・専攻医に:★★★★★
・通読向き:★★★☆☆
・辞書向き:★★★★☆
・コスパ :★★★★★★(この内容でこの値段は破格!!)
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・神経症状の診かた・考え方―General Neurologyのすすめ 第3版
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続いては、エキスパートが綴った「これぞ臨床本」
(写真は初版:現在は第3版)
『達⼈はこうやって考える』、それがわかる本。著者の福武先生は脳神経内科のレジェンドであり、“総合神経学”の達⼈です。その思考プロセスがぎっしりと詰まったロングセラー本
『良いところ』
・コモンな症候や疾患にフォーカスが当てられている
・経験値に裏付けられた納得感が得られる
・クリニカルパールが豊富
『強いて言えば』
・文章はちょっと読みにくいかも
・全体の構成として通読には向かない
・病棟管理には向かない
『ひとこと』
ハンドブックなど教科書的な書籍とセットで持つと付加価値は倍増
【気まぐれ評価】
・研修医に:★★★☆☆
・専攻医に:★★★★☆
・経験値がすこしついた後なら超おすすめ:★★★★★★★
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・神経診断学を学ぶ人のために
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神経診断学の王道を学ぶのであればこちら
柴崎先生は、日本のneurologyの超絶レジェンドです。一度だけ、お話ししたことがありますが、オーラが違いました。そんな神経生理学の第一人者が神経診断学の極意を単著で解説した本になります。類はありません。
神経診断学の王道を学ぶのであれば、この手の本を一つ持っておくことをお勧めします。対抗馬の本としては、次に紹介する「神経症候学を学ぶ人のために」でしょうか。
『良いところ』
・とにかく本質的で、大事なことが豊富にある
・不随意運動や運動障害など、カテゴリー別の構成で調べ物にも向いている
・図も多く、セクションごとに通読しやすい
『強いていえば』
・若干、値段は張ります
・診断基準や治療法などはカバーされていません
・ですが、この手の本を持っておくこと自体に意味があって、持っているだけで「臨床を頑張ろう」と思える付加価値もあります
『ひとこと』
ハンドブックなど教科書的な書籍とセットで持っておくと、臨床で活用しやすいでしょう(何より、この手の本を持っておくこと自体に意味があって、持っているだけで「臨床を頑張ろう」と思える付加価値があります)
【気まぐれ評価】
・研修医に:★★☆☆☆
・専攻医に:★★★★☆
・簡単な神経診察ができるようになれば:★★★★★★★
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・神経症候学を学ぶ人のために
………….………….………….………….………….………….………….………….………….…….……神経症候学の基本的な知識と技術をまとめた臨床医必携の入門書
著者ならではの間違いのない臨床経験に基づいた本書は、タイトル通り「神経症候学」をこれから学ぶ人にとっての礎になります。イラストや写真も豊富です。また解説もとても読みやすいです。
前述の柴崎先生の本と、どちらか一方を買うといいでしょうね。私は両方買いましたが。買って後悔はありません。
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・神経症候学
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レジェンドによる名著のシリーズとしてもう一つ紹介します
平山先生の「神経症候学」です
私が脳神経内科を専攻したのは10年以上前ですが、当時の上級医に取っては必携だったのではないかと思います。
2巻セットで
なんと1巻目は900ページあり、2巻目は1300ページほどあります
もちろん、通読には不向きですが
神経症候について確認したいことがある時、用語の確認や定義の確認などでチェックすることがあります
専門医を目指す時には、検討してみてもいいかもしれませんね
カラーイラストで学ぶ 神経症候学
ちなみに、同じ平山先生の書籍で、カラーイラストのこちらがありました
私は持っていないので、内容は分かりませんが
平山先生が編著のようです。おそらく平山先生の「神経症候学」ではハードルが高すぎる方向けの書籍なのだろうと思います
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・臨床のための神経機能解剖学
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神経診察の難しさは、神経機能解剖の理解が足りないから
運動系や感覚系など、神経システムの経路の把握が欠かせません
神経症状の評価のためには神経機能解剖の知識はマスト。本書はタイトルにある通り「臨床のため」に必要な情報が過不足なくあります。
例えば「あれ?この症状って、ここが責任病巣でよかったっけ?」というような時の随時チェックに役立ちますし、学会で発表するときの準備でも活用した記憶があります。
ちょっと高いですが、普遍的な内容なので、予算に余裕が持てるようになったらこの系統の教科書を一つ持っておくと良いでしょう。
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・末梢神経と筋のみかた (ビジュアルガイド)
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神経の機能解剖について、末梢神経と筋に特化したガイド本
「あれ?この筋ってC5支配でよかったっけ?」
このようなことはよくあると思います。神経支配を全部覚えるのはなかなか難しいので、病棟や外来にこの1冊を置いておけば便利ですよね。
筋の評価方法も解説があり、カラー写真とともに詳細な模式図もあるので、わかりやすいです。そしてポケットに入るサイズなのでそこもグッド!!
脳卒中ばっかりの病院ならあまり活用はしないかもしれませんが
NCSなど電気生理もするようになれば、必携です
第6版が出ていました↓↓
お手頃ですし、脳神経内科医としてほぼ必携と思います
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まとめ:結局、どれ買ったらいいの?
………….………….………….………….………….………….………….………….………….…….……たくさん紹介しましたが、脳神経内科を専攻する上でのマストバイをまとめたいと思います。もちろん予算次第でもあり、ご自身の環境も含めて参考にしてください。
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予算があれば2-3冊の組みわせがオススメです!
まずイヤーノート的ポジションの「神経内科ハンドブック: 鑑別診断と治療」は買うとして、どのように組みわせるか考えてみました。できれば「ベッドサイドの神経の診かた」もマストバイに入れていただきたいですが、そこは予算次第で。
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・神経内科ハンドブック 第5版: 鑑別診断と治療
・ベッドサイドの神経の診かた
・神経診断学を学ぶ人のために
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【予算的にまずは1冊だけを選ぶならこの2つ】
・紙媒体 → 脳神経内科 改訂5版(神田先生)
・電子媒体 → レジデントのための神経診療(杉田先生)
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(※杉田先生の本はipadとの親和性高いと思います)
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【予算的に2冊までなら】
1)手堅い2セット
・神経内科ハンドブック 第5版: 鑑別診断と治療
・ベッドサイドの神経の診かた
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2)手堅い2セット(よりお手頃に)
・脳神経内科診断ハンドブック(初版)
・末梢神経と筋の診かた
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………….………….………….………….………….………….………….………….………….…….……2)iPad活用が多い先生は
・レジデントのための神経診療(電子版)
・神経内科ハンドブック 第5版: 鑑別診断と治療
または
・レジデントのための神経診療(電子版)
・脳神経内科診断ハンドブック
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………….………….………….………….………….………….………….………….………….…….……3)変性疾患など幅広い疾患のマネジメントも必要なら
以下の2つの組み合わせは親和性がいいと思います
・神経内科ハンドブック 第5版: 鑑別診断と治療
・脳神経内科診断ハンドブック
または
・脳神経内科診断ハンドブック
・脳神経内科 改訂5版(神田先生)
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4)とにかく安く押さえたい
急性期病院でこれから脳神経内科医師としてスタート
でも予算がないし、まだ研修医レベルのことしかわからない
そんな時には山本先生の「みんなの脳神経内科Ver.2」が頼もしい味方
非専門医やレジデント向けの本ですが、研修医上がりであればとりあえずこれを買って、週末で読破しましょう。ベッドサイドの神経の診かたと組み合わせれば、予算も抑えられて、研修スタート時の不安は払拭できるでしょう
初版は自分で買ったのですが、その後に第二版が出まして、第二版については出版社から献本としていただきました。
初版はこちら
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最後に一言
結局、私から言えることは2つだけです
・何かは買うし、どれ買っても結局は必要だった
・買ったものは大事にしたし、広義でコスパは良いものばかりだった
皆さんの臨床にすこしでも役立てればと思います。
救急脳波を学びたいなら
非専門医の先生が、とりあえず、最低限の脳波の知識を学びたい
意識障害のファーストタッチとしての脳波が少しでも読めたらいい
NCSEの評価ができるようになりたい
脳波判読を基本から学びたい
脳波判読の基本から応用まで
判読手順の基礎を知りたい
てんかんの診療をブラッシュアップしたい
脳波レポートを作成できるようになりたい
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もっと非専門医が手の取りやすい発作は?
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