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経口抗てんかん発作薬の使い分け:概念編




今回のテーマは「経口抗てんかん薬の使い分け」です。このテーマを考える上で重要なポイントは以下の三つです。

  1. てんかんの診断が確実であること

  2. てんかんの分類や発作型が正確に把握されていること

  3. 合理的な薬剤選択を行うこと


確実な診断が全て

てんかんの診断が確実であれば、自然と選択する薬剤が絞られてきます。これは感染症治療に似ており、感染臓器や起炎菌が想定できれば使用する薬剤が自ずと決まるのと同じです。そのため、診断と分類が確実であることが重要であり、次に合理的な薬剤選択を患者ごとに検討する必要があります。



抗てんかん発作薬の導入の原則

テーラーメイドな薬剤選択はもちろん大切ですが、それ以上に抗てんかん薬を安全に導入することが最も重要です。また、導入時やその後の患者教育も欠かせません。導入の原則として、以下の3点を意識することが必要です。

  • 単剤療法が基本

  • 少量から導入し、ゆっくりと増量する

  • 副作用がなければ十分量までしっかりと増量する



実臨床における薬剤選択

成人のてんかん患者(特発性全般てんかんを除く)において、実際に初めに選択する薬剤は、レベチラセタム、ラモトリギン、ラコサミド、ペランパネルの4剤が一般的です。この4剤のどれを選択するかという問題がもちろん大事かもしれませんが、正直なところ「どれでも良い」というのが私の見解でもあります。これは、救急外来で「メインはソルアセトでいいですか?」と聞かれる状況と似ており、どの薬剤もそれなりに効果があるからです。



最適解は一緒に探すもの

そもそも抗てんかん発作薬は、対症療法の範疇に入る薬剤です。そのため、まずは試してみることが重要です。そのためにも安全に試すことが欠かせません。そして、患者さん自身が薬の安全性や有効性を感じるプロセスが必要であり、「この薬は自分にとって必要な薬だ」と理解してもらうことを目指しています。このようなプロセスはつまり、最適な薬剤を一緒に探していく道のりとなり、アドヒアランスの改善にも繋がるでしょう。



てんかん治療の目標

前述の4剤はどれも一定の効果がありますし、難治てんかんの場合、どれを選んでも最終的には「still難治」のままです。加えて、どの薬剤が予後を最も良くするかに関するエビデンスもありません。なぜなら、言葉を変えるなら、てんかん治療の最大の目標は「発作の消失」ではなく、「患者がてんかんによる制限を受けずに生活できるようになること」だからです。このILAEの目指すビジョンを考えると、発作抑制だけを考慮した薬剤選択の重要性はそれほど高くないように思えます。


患者のQOLを優先する診療

よって、どの薬剤もそれなりに効果がある中で、悩むべきポイントは薬剤選択ではなく、そもそも診断は正しいのかと常に考え続けることや、あるいは発作以外の患者の臨床像を立体的に捉えて、患者QOLを改善するには何ができるかを検証していくことに注力するべきだと考えます。


最適な選択の先にあるもの

この原稿を書き終えて思ったことは
以前、家族も増えたので大きなミニバンを購入したいと思った時、ヴェルファイアにするかエルグランドにするか、はたまた他のものにするか、でしばらく悩んだ経験があります。今思えば、どっちてもいいからさっさと選んで家族のQOLに寄与すべきだったと反省しています。


まとめ

・薬の選択より、診断の確からしさの方がはるかに重要
・本当に「てんかんではない可能性が一ミリもないのか?」を再確認
・薬の選択がベストでなくても診断さえ間違っていなければ大怪我はしない


救急脳波を学びたいなら

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