384.『ばあちゃん』
『ばあちゃん』
盆正月はばあちゃんの家で過ごすのが定番だった
集まった親戚で食事や墓参りをして先祖をしのぶ
たまには違うこともしたいと思いつつも楽しんでいた
ばあちゃんが老人ホームに入り、定番はおわった
自分でやらなきゃ!という緊張感がなくなったからか
外出することがなくなり、楽しみがなくなったからか
ホームに入ってから加速度的に老衰がすすんでいった
入院してからは数日で別人のようにおとろえた
面会した弟がばあちゃんであると気づかないほどに
固形物は食べられないし、酸素マスクも必要な有様
医者も示唆するように、もう先は長くないのはわかる
それなりに孝行はしたけれど、これで十分なんてない
してあげられなかったことばかりが浮かんでしまう
一緒に過ごせない日々が懐かしく、そしてさみしい
「その日」が来るまでの少ない時間で俺は何ができるだろう?
ごめんと謝るよりは、ただ感謝を伝えようか
「俺はあなたの孫で幸せでした」と
2023年8月16日作
ラジオNIKKEI『私の書いたポエム』
2023年8月27日放送分
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