《私は揺れていてここに私がいる》 言音『KIND OF RED』感想
《私は揺れていてここに私がいる》(①『KIND OF RED』より)――
詩人・久世孝臣さんと音楽家・市川ロ数さんのユニット「言音(ことね)」のニューアルバム『KIND OF RED』が届きました。久世さんの言葉(ポエトリーリーディング)と市川さんの音によって織りなされる、独特な世界。普段は名づけることをしない無数の感情や感覚、瞬間の記憶が時間をかけて呼び集められ、結晶化しているような作品でした。
一貫して感じられるのは、切実なる平静さ。切実なるものを内に秘めつつも、少し離れたところから自らを静観する視点を失わない。決して声高に何かを主張するわけではないけれど、しかしその言と音の中に確かに作者たち自身が生きて活動していると感じる――。
意味を理解しあうというよりは、手探りをするようにして伸ばされた指先が、ふと互いに触れ合ったような……。
《わたしはここに居ます》(『KIND OF RED CONCEPT』より)――
そのひそやかで決然としたサインに触れることを通して、聴く私自身の胸の内にもこの世界で生きていることの手触りがよみがえってくるようでした。
《私は揺れていてここに私がいる》――。私たちは揺れていて、私たちはいつもお互いにどこか遠い。でもいま、私はここにいる。あなたは、ここにいる。
互いに遠く引き離された日常を送る中、私たちはいかにしたらつながってゆけるのか……。いま、ぜひ多くの人に聴いていただきたい作品です。
ちなみに、私の個人的なお気に入りは⑩「だけど優しい」でした♪
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