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物語紹介

~物語紹介~

2015年8月 福島。

民喜は故郷の浜通りの町を4年ぶりに訪ねていた。大切な「落とし物」を取りに行くために――。

桜が満開に咲き誇る4月初めのある日、民喜は大学の広場に一人で座っている明日香と出会う。

「また朝が来てぼくは生きていた」――

明日香の歌声と、彼女に借りた詩集の一節をきっかけとして、ずっと民喜の内に埋もれていた記憶がよみがえる。それは、あの原発事故が起こる直前の2日間の記憶、そして「ネアンデルタールの朝」を巡る記憶だった。……


~作者より~

作者:鈴木太緒(すずき・たお)/岩手県花巻市在住

2015年の福島と東京を舞台に、原発事故後の世界を生きる若者の姿を描くことを試みた作品です。主人公の民喜は故郷の町を4年ぶりに訪れて以降、次第に厳しい現実を知らされてゆくことになります。

と同時に、ネアンデルタール人と私たちホモ・サピエンスの秘められたつながりについて気づき、生きる勇気を与えられてゆくことともなります。

先のことがなかなか見えず、投げやりにならざるを得ないような現実が目の前にある中で、私たちはいかにしたら自暴自棄にならずに、自身を大切にして生きてゆくことができるのか――。主人公の青年たちと一緒に考えながら、書き進めていきました。

東日本大震災と原発事故から10年目を迎えた今年、一人でも多くの方に読んでいただきたいと願っています。 

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※本作品は季刊詩誌『十字路』(第9号 2016年5月発行~第23号 2019年11月発行)と『舟』(第164号 2016年8月発行~第178号 2020年2月発行)に同時連載したものを、大幅に加筆・修正したものです。

~登場人物紹介~

民喜(佐藤民喜・さとうたみき)。
本作の主人公。21歳の大学3年生。東京都三鷹市にある大学に通う。出身は福島県の浜通り。
高校時代は美術部に入っていたが、大学ではコーラス部に所属(担当はテナーパート)。
同じ部に所属する明日香にひそかに想いを寄せている。
この度、夏休みを利用して4年ぶりに故郷の浜通りの町を訪ねる。

明日香(永井明日香・ながいあすか)
民喜が想いを寄せる相手。同じ大学のコーラス部に所属(担当はアルトパート)。
出身は岩手県盛岡市。現在は中野区にある叔父叔母の家に同居している。
笑うと可愛らしい八重歯がのぞく。
思い出の曲は合唱曲の『朝』(詞:谷川俊太郎)。

駿(佐久間俊・さくましゅん)民喜の幼馴染。福島県郡山市の実家から県内の大学に通う(専攻は人間システム科学)。出身は福島県の浜通り。
読書家で、ネアンデルタール人のことを民喜たちに初めて教えたのも駿だった。
趣味はゲーム。最近は少々ゲームに依存傾向にある。
ずっと屋内で過ごしているので夏もまったく日焼けをしていない。

将人(星将人・ほしまさと)
民喜の幼馴染。高校卒業後、郡山市内の会社に就職し、現在は営業を担当している。出身は福島県の浜通り。
高校時代は陸上部に所属。民喜や駿と比べてがっしりとした体つきをしている。
趣味は釣り、アウトドア全般。駿とは対照的によく日焼けている。

民夫(佐藤民夫・さとうたみお)。民喜の父。50歳。出身は福島県の浜通り。
原発事故後はいわき市に家族で避難をする。職場にはいわき市から通勤している。
趣味は写真撮影。ただし原発事故後はまったくカメラを手にしていない。飲酒量がかなり増えていることを妻に心配されている。

晶子(佐藤晶子・さとうしょうこ)
民喜の母。48歳。出身は静岡県浜松市。仙台の大学で2年先輩の民夫と出会い、その後結婚。
放射能への不安を周囲の人々に話すことができないことの孤立感を抱えている。唯一、放射能についての不安を話すことができるのは駿の母の恵子。

咲喜(佐藤咲喜・さとうさき)
民喜の妹。11歳の小学5年生。民喜とは10歳、年が離れている。
まだ成長期には入っていないようで、小柄な体格。
ヘアドネーションのために髪を伸ばしている。最近は髪を顔の前に垂らして貞子の真似をすることがお気に入り。

山口(山口凌空・やまぐちりく)民喜の大学の友人。出身は東京都八王子市。実家から大学に通っている(ただし学費はすべてアルバイトで賄っている)。
185㎝の長身。
4月から国会前の安保法制反対デモに熱心に参加している。


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