深夜のラーメン猫おやじ4🐾
親父さんはこねことお父さんを寝かしつけました。お父さんは散々泣いたのでくたびれ果ててお布団にもぐりこみました。
こねこはお布団の上で寝ています。
お手てをモミモミ動かしているこねこ。
猫が寝ている時やリラックスしている時、
お手てをモミモミするのは赤ちゃんの頃を思い出しているのでしょうか。
ああやってお手てでお母さんの御乳を押しておっぱいを飲んでいた頃の名残りなのでしょうか。
「可愛いなぁ…。こねこ…。」
親父さんはしんみりしました。
今はひとり暮らしの親父さんはかつては妻と子供がいました。
こねこを見ると自分の子供を思い出してしまいます。
するとお店の方から
「親父さーん!お·や·じさん!いるー?ラーメンちょうだい!」と元気な声に呼ばれました。(あっ!いけねぇ。お客さんだよ。)
親父さんは慌ててお店に戻りました。
「いやぁ。いらっしゃい。ごめんね。ちょっと裏に行ってたんだよ。」
親父さんが言うとミケちゃんは
「いいのよ。いいのよ。アタシ親父さんが来るまでいつまででも待つつもりだったもん。親父さん海老玉ラーメンお願い。」と言いました。ミケちゃんは近所のスナック蛾で働いています。いつも仕事帰りにラーメン猫おやじに寄って海老玉ラーメンを注文します。
ミケちゃんは海老玉ラーメンが大好きなのです。親父さんはさっそく中華鍋に油を熱しネギと生姜のみじん切りを入れ香りが立つまで炒め、下ごしらえした海老を8尾サッと炒め取り出してから卵をふわっと炒めまた取り出してからキャベツ、もやし、人参を炒め、スープを注ぎ煮立たて、海老と卵を戻し入れ、水溶き片栗粉でとろみをつけぐつぐつ煮ました。サッと湯切りした細麺を少なめのスープ入りの丼にあけ具入りの海老玉あんかけをのせれば出来上がりです。ベースは醤油味です。塩味もあります。(注、猫はねぎ類で中毒になってしまうので本物の猫ちゃんには長ネギや玉ねぎを食べさせないでね。)
「あー!おいしい!海老がぷりぷりしててホントこれ好き!生き返るぅ!」
ミケちゃんは上機嫌です。
「うはは、生き返るってミケちゃん今まで死んでたのかい?」
親父さんは椅子に座ってミケちゃんの話相手になっています。
「そうよ!今日の酔っぱらいは長っ尻だったのよ!アタシ眠くなっちゃってさ。毎回同じ話しかしないのよ。その人。耳にタコができたわ。アタシしばらく死んだように寝ちゃったらその人も寝ちゃってさ。ママも寝ちゃってて気がついたら1時だったのよ。まぁ猫だからしょうがないわよね。他の客が来ないんだもん。」
「そうだなぁ。猫だもんなぁ。じっとしてると寝ちゃうよな。」
「ねー。しょうがないわよね。まぁ、ママがのんびり屋さんだからアタシ怒られなくて良かった。前の店はママがピリピリしててアタシ怒られてばっかだったもん。」
ミケちゃんは麺をすすりながら親父さんにお話をします。職業柄人の話を聴く事の多いミケちゃんは人に自分の話を聴いて貰う機会があまりないのです。
ラーメンを食べながら親父さんに話をするのがミケちゃんの癒やしの時間なのです。