「誰も彼らの叫びに耳を傾けない」
英国王のスピーチという映画を観た。
私が、1番目を見開かされたのは言語聴覚士ライオネルが言った言葉だ。
「戦争神経症で喋れない者たちの治療をした。
“誰も彼らの叫びに耳を傾けない”。大事なのは彼らに自信をつけ、友が聞いていると力づける事。」
ライオネルはジョージ6世に言う。
「あなたの部分と似てるだろ。」
“誰も彼らの叫びに耳を傾けない”
私の頭の中にその言葉が染み入った。
ジョージ6世の、“誰も耳を傾けなかった”子供の時代の記憶にライオネルは丹念に思いやりの言葉を返していくのだ。
兄に吃音をからかわれ、王である父親に怒鳴られ、1番身近にいた乳母には嫌われ、つねられ、食事をもらえない…。
左利きを右利きに矯正させられ、X脚も器具をつけられ矯正させられた。いう事をきかないと厳しく罰せられた…。
「痛かったろう。」ライオネルは言う。
「激痛だった。」ジョージが言う。
かつてジョージにこんな言葉をかけた友人がいただろうか。
ジョージ6世の誰にも話せない苦しみ。
戦争神経症で喋れなくなった者達の苦しみ。
心の病を抱えた者達の苦しみ。
通じるものがあるのではないだろうか。
こうして自分の心に染み入る映画を観れるという事は幸いである。