ドライカレー
私が子供の頃、12歳くらいだったかなぁ。
母と喫茶店に行くのが楽しみだった。
私達は山奥の村に住んでいたので、買い物は峠を越えて隣町に行くのだった。
鄙びた商店街の1階は食器屋で2階がその喫茶店だった。
その喫茶店の名前は忘れてしまったけど階段を上がってドアを開けるとカウンターがあって更に奥に入るといつくもテーブルがあって中は割と広い。
突き当りに予約席専用の広いテーブルがあった。そして席ごとに熱帯魚の水槽が置いてあってその水槽の中を覗くのが楽しかった。
ネオンテトラ、アロアナ、キラキラすばしっこく泳ぐ熱帯魚がたくさんいた。
ガラスにへばりつくカジカの仲間なのかなぁ、まるい口で水槽にへばりつく魚みたいなのもいた。
水槽には「手を水槽に入れないで下さい。」と書いて貼ってあった。
そこのドライカレーがおいしかった。
ドライカレーというのはひき肉や細かい野菜で汁気が少ないカレーを白ご飯にかけるやつとご飯を具材と炒めてカレー粉を振りカレー焼き飯にしたやつがある。
この喫茶店はカレー焼き飯タイプだった。
カレー焼き飯という呼び方はあんまりか、カレーピラフか。
しかしピラフというやつは米をオイルかバターで炒めてからブイヨンで炊く料理の事だから炊いた白飯を炒めてからカレー粉で味をつけた場合はカレーチャーハンと呼ぶべきか。
どうでもいいか。
ドライカレーとよんでいればいいか。
メニューにドライカレーと書いてあったらドライカレーなんだよな。
で、そのドライカレーは玉ねぎ、にんじん、ピーマン、ソーセージを細かーく刻んだ具に福神漬が添えられ、ドライパセリが真ん中に彩りよく散らされている。スパイシーな香りが食欲をそそる。
スプーンの先は紙ナプキンで包まれている。カップのコンソメスープがついた。
優雅に泳ぎ回る熱帯魚を見ながらスパイシーなカレーピラフをがつがつ食べると山奥の村から町に出てきて文明に触れた思いがした。
その喫茶店はもうなくなってしまった。