小説 ねこ世界16
ダンはテーブルに温めたクリームシチューとロールパンを並べると子ねこ達を呼んだ。
「おーい。夕ご飯ができたぞー。おいでー」
その声でおもちゃで遊んでいたウリとスミレがやってきた。
「お腹空いたね!」
ウリがスミレに言うと、スミレもうん、と肯いた。スミレの表情は少し明るくなっている。やっぱり子ねこは子ねこ同士で遊ばせるのが一番なのかもしれないな、とダンは考えた。ウリとスミレは並んでテーブルについた。「シチュー!お父さんのぶんは?」
ウリは自分達の前だけにシチューが並んでいるので父に訊ねた。
「お父さんはいいから、先にウリ達が食べな」
ダンが言うとウリは、
「お父さんもシチュー?」
と訊いた。
「いや、シチューは二匹ぶんしかなかったからお父さんは焼きビーフン」
「へぇぇ〜」
横のスミレは黙ってウリとダンのやりとりに耳をすませている。無口な女の子だ。
「早くシチューを食べな。パンもあるからね。さ、いただきますだよ」とダンが言うとウリは「いただきまーす」と元気よく言った。スミレも小さな声で「いただきます」とスプーンを取った。子ねこ達がおいしそうにシチューを食べるのを見るとダンは自分の夕ご飯を作りに台所に行った。
乾燥ビーフンはお湯の中でちょうどよく戻っていた。フライパンで豚こま肉を炒め、キャベツ、もやしをサッと加えて炒める。そこにビーフンを入れて、顆粒の鶏ガラスープを少々、塩コショウ少々、味の素も少し、仕上げに醤油で味を付ける。
うーん。うまそうだ。
ミケが帰ってきたらミケにも焼きビーフンを作ってやろう。
出来たての方がおいしいからな。
ミケは何時頃帰って来るかな。
ダンは台所の時計を見た。夜7時過ぎ。
そろそろ帰って来るだろうか。
ダンはミケの分のビーフンもお湯に浸して戻して置くことにした。
居間のテーブルに自分の焼きビーフンと箸を持って行くと、子ねこ達はシチューを食べ終わるところだった。
「お腹いっぱいになるかい?」
ダンはテーブルにつきながら言った。
「お腹いっぱいになってきたよ!あっお父さんのは何?何?おいしそう!」
ウリが言った。スミレの目もダンの焼きビーフンに釘付けになっている。
「お父さんのは焼きビーフンだよ。ちょっと食べてみるかい」
「一口ちょうだい!」
ウリが元気よく言った。スミレはもじもじしている。
「スミレちゃんも一口食べたいよね!」
ウリが隣のスミレに言うとスミレはこっくり肯いた。