ギブアウェイ攻略法
NFTのギブアウェイに参加したことがある、あなたへ。
NFTの世界にはGiveaway(ギブアウェイ)という文化がある。ギブアウェイというのは”懸賞”のようなイメージだ。NFT愛好家はNFTをプレゼントすることを「プレゼントする」とは言わずに「ギブアウェイする」と言う。
ギブアウェイは主にXのタイムラインにておこなわれる。ギブアウェイをする人がXで「ギブアウェイするよ!」とポストすることでギブアウェイはスタートする。そうすると参加希望者がぞろぞろと集まってくる。
参加するにはそのギブアウェイ毎の条件があり、おおむねこんな条件となっている。
1、アカウントをフォローする
2、そのポストをいいね、リポストする
3、Discordコミュニティへ参加する
こんな具合でボタンをポチポチするだけでカンタンに参加ができる。それがNFTのギブアウェイ文化である。
「運が良ければNFTが当たる!カンタンやし最高やん!!」おれはそう思っていた。
しかし、世の中そんなに甘くはないしweb3も甘くない。このギブアウェイという文化はいわゆる”懸賞”とは大きく違う点が存在したのだ。
それは
懸賞が公平な抽選で当選者を決めるのに対して、ギブアウェイは
ギブアウェイ主が当選者を厳選する点である。
もちろんすべてのギブアウェイにおいてこうなっているわけではない。しかし、多くのギブアウェイではこれが暗黙の了解になっている。
これに対して眉をつり上げ「不公平じゃないか!!」などとのたまってはいけない。ただの一般懸賞とは違うこの”厳選文化”こそがギブアウェイの醍醐味なのだ。
つまりギブアウェイは“懸賞”ではなく”懸賞ゲーム”なのである。
ギブアウェイ主に気に入られ、いかに気持ちよくなってもらい自分を選びたくなるようになってもらうかのゲーム=ギブアウェイということになる。
そうなってくるとギブアウェイというものへの見方と参加態度がぐっと変化する。
参加条件である「該当ポストをいいね、リポストする」に加えて引用ポストで追加アピールもしたくなってくる。
「このNFTが大好きです!前から気になっていました!」
「かわいい!!特にこのクマがかわいい!絶対当たりますように!」
「僕は本気です!お願いします!当たったらアイコンにします!」
「やった!待ってました!よっ!!!」
などと、媚びへつらう引用ポストをすることになる。
これらはおれが実際に投稿した媚びへつらい引用ポストである。当然、ギブアウェイ主もバカではない。こんなバカみたいな媚びポストには見向きもしない。おれは何度も何度も何度も媚びへつらい続けたがギブアウェイに当選することができなかった。
では当選するのはどんな人か。
おれは早速、当選している人のXのポストをさかのぼり確認してみた。するとどうか。全然媚びてる感がないしスマートじゃないか。
「かっこいいですね。よろしくお願いします。」
「当たりますように。大切にします、お願いします。」
「参加させていただきます。いつも応援しています。」
など。媚び方がスマートだし謙虚だ。ちぇっ。
”!”をつけない方がいいのかな。お願いしますとかを書いておくと丁寧な人柄ぽく見えるのかな。応援とか書くのがいいのかな。そんな風におれは分析していた。
ふと、うまい人の表面的な部分だけを見て真似しようだなんて、おれは浅はかだなと感じた。
だけどもギブアウェイに当選したいおれの強い気持ちが「浅はかだろうがうまい人の真似をせよ」とおれの背中を押してくるのだ。背中を押されているおれも浅はかだし、押してくるおれも浅はかだ。ついでにそれを俯瞰で見ているおれも浅はかだと感じる。どの角度から見てもおれは浅はかな人間だということがわかった。
間違いなく浅はかなおれはこれらのデータを踏まえ、ギブアウェイの引用ポストで書くべき文を導き出した。おれは本気だ。
「好きです。待っていました。よろしくお願いします。」
我ながら良い文だと感じた。これなら露骨さもなく、汚い投機心も見えず、浅はかさはきっと隠せているだろう。ちょうど良いぞ。そう思った。
そして欲しかったNFTのギブアウェイを見つけて引用ポストでアピールした。
「好きです。待っていました。よろしくお願いします。」
はずれた。
おれは急に恥ずかしくなった。こんなことなら元の露骨な媚びへつらいポストの方が堂々としていて良かった気がした。元来の自分の浅はかさを隠し当選を狙った自分を強く恥じた。
それもあり次のギブアウェイ参加では自分の媚びへつらいの言葉を堂々と前に押し出しアピールした。
「大好き!待ってました!お願いします!絶対当たりたいです!大好き!」
はずれた。
だめなものはだめ。大好き!を二回も言ったのにだめだった。
しかし、堂々と露骨に媚びへつらえたことが清々しかった。NFTを始めた頃の苦い思い出として大切にしている。
おわり