マテリアリティ特定までのストーリー~プロジェクト成功のカギは、「多様性」、「心理的安全性の確保」、そして「熱量」~
こんにちは。ナガセケムテックスです。
ナガセケムテックスは、2021年度に若手・中堅社員を中心メンバーとした「サステナビリティ推進プロジェクト」を発足し、サステナブルな事業活動を推進するための3つのマテリアリティ「環境にやさしい化学工場をつくる」、「素材・技術の開発で豊かな未来をつくる」、「働き続けたい職場環境をつくる」を特定しました(マテリアリティについては後述します)。
今回は、当時「サステナビリティ推進プロジェクト」に事務局メンバーとして参加していた経営企画本部 経営企画室の髙森哲也さん、経営企画本部 経理部 経理課の吉本賢一郎さんのお二人に、マテリアリティ特定までのストーリーを伺いました。
そもそも、マテリアリティとは?
「マテリアリティ」を端的にあらわすと、企業や組織が最優先で取り組むべき重要課題。
かつては企業が開示する情報のうち、財務諸表などの定量的な情報が重要視されていました。
しかし、社会や環境の変化にともない、企業が社会課題や環境課題にどのように取り組んでいるのか、といった非財務情報の重要性が増してきました。
さらに、近年のサステナビリティに関する取組やSDGsの達成に向けた活動への興味・関心が高まるなか、マテリアリティとSDGsを結びつけ、SDGsの17の目標・169のターゲットのうち、自社の事業内容がどの課題を解決できるか、また、どの課題と関連があるかを明確にする企業や組織が多くなってきました。
マテリアリティ特定までのストーリー
ある日とつぜん、"サステナビリティ推進担当"に
昨今、社会問題や環境問題への関心が高まり、SDGs、ESG経営が世の中の潮流となっています。
ナガセケムテックスではこれまで、部署ごとにサステナビリティ活動をおこなってきましたが、会社全体としての取り組みは不十分でした。
そこで、経営陣はナガセケムテックスも潮流に乗り遅れないよう、会社全体で取り組むことを決断。
ですが、当時は専任組織もなく、経営企画室に所属していた髙森さん、吉本さんに白羽の矢が立ち、2021年4月、とつぜんサステナビリティ推進担当に任命されたそうです。
髙森:ほかの企業の統合報告書などを見る機会が多かったので、サステナビリティに関する記載が増えてきているな、という印象はありました。
でも、サステナビリティやSDGsに関して情報収集をしたこともないし、会話に出てくることもなかったので、何から手をつけようか、という状態でした。
その日から、本を読んだり、YouTube動画をみたり、セミナー等に通って猛勉強して知識を身に付けたそう。
また、同時並行で、プロジェクトの目標をどこにするかについて2人で議論を重ねました。
髙森:「サステナビリティ推進」と言っても、ビッグワード過ぎてある程度の目標を決めないと議論がぼやけてしまう可能性があります。
そこで、世界的にも広く使われている「SDG Compass -SDGsの企業行動指針-」を参考にして、ステップ2にあたる「優先課題を決定する」ことを目標に定めました。
プロジェクトメンバーは多様性を重視して選出
目標を設定した2人は、続いて「サステナビリティ推進プロジェクト」発足に向けた準備に着手。
最も重要視したのがメンバーの人選で、それがプロジェクトの成功に結び付いたのではないかと語ります。
髙森:ナガセケムテックスにはさまざまな職種、バックグラウンドを持った従業員がいます。そのため、考えが偏らないように、多様性を重視しました。
事務局からは、「リーダーシップを発揮できる人」という条件のみを提示し、幅広い部署から候補者を挙げてもらいました。
それを踏まえて、職種・年齢・性別・新卒/中途など様々な観点で、フラットな目でメンバーを選出しました。
こうして、サステナビリティ推進プロジェクトがメンバー11名、事務局2名の体制で2021年8月1日に発足しました。
プロジェクトは最初が肝心。全身全霊のプレゼンで熱意を伝え、メンバーの士気を向上
多様なメンバーが集まったサステナビリティ推進プロジェクト。しかし、サステナビリティに関する知識や価値観、興味・関心の持ち方は人それぞれ。
どのようにして、メンバー全員が同じ方向を向くように働きかけたのでしょうか。
吉本:このプロジェクトは、最初にメンバーの熱意と共感を引き出せるかどうかが勝負だと考えました。テーマが抽象的なので、「サステナビリティ推進って具体的に何をするのかよく分からない」と思われてしまってはいけない。
そんな危機感を持って、サステナビリティ経営の考え方、企業が対応するべき環境・社会課題、そして、事務局が持っている熱意を伝えるため、メンバーに向けて全力でプレゼンをしました。
そのうえで、中長期的な社会の変化と、その中でのナガセケムテックスのリスクや機会は何かを議論し、マテリアリティを特定するという目的を明確に伝えました。
全身全霊のプレゼンが奏功し、メンバーからは前向きな反響が多くあったそうです。
議論の設計
プロジェクトは計7回開催。環境、社会、ガバナンスといったテーマごとにメガトレンドの理解、リスク・機会の洗い出し、重要性についてディスカッションを行いました。
その後、それらを踏まえたマテリアリティの特定のためのワークショップを実施しました。
活発な議論のために、「心理的安全性」を確保
吉本さんの"全身全霊"のプレゼンで順調なスタートを切ったプロジェクトですが、議論を活性化させるために、もうひとつ”しかけ”があったそうです。
髙森:メンバーの心理的安全性を確保することをとても重要視しました。「この場でどんな意見を出しても、評価に好影響・悪影響を及ぼすことはない」ということを何度もメンバーに伝えました。
おかげで、あらゆる観点からびっくりするぐらい意見が出て、出るべき意見はすべて出たな、という印象でした。
ステークホルダーの心に刺さる力強い提言にフルコミット
心理的安全性を確保しつつ、多様なメンバーどうしでの活発な議論を通じて、社会、そしてナガセケムテックスにとって優先度の高い課題、すなわちマテリアリティを特定することができましたが、これで終わりではありません。
吉本さんいわく、プロジェクト冒頭の全身全霊のプレゼンに続き、「2回目のプレッシャー」を感じていたといいます。
吉本:マテリアリティは、プロジェクトメンバーが一生懸命議論して生み出した成果物ですが、受け手に伝わらなければ意味がありません。
社内外のあらゆるステークホルダーの心に響くような“伝え方”について知恵を出し合い、プロジェクトの最終成果物となる資料を作成しました。 どのようなフレームで議論し、どんな意見が出て、どのように3つのマテリアリティに要約したのかをロジカルに記載し、どこに出しても恥ずかしくないような資料を作り上げようという意気込みで取り組みました。
詳細な資料を用いて熱くプレゼンした結果、経営陣からは、異口同音に「まさにこれだ!」と称賛されたといいます。そして、驚くことに、経営陣からの指摘事項はなかったそうです。
プロジェクトメンバーの心境変化
プロジェクト終了後、髙森さん、吉本さんをはじめメンバーの皆さんは心境の変化があったようです。
吉本:自分たちがナガセケムテックスで長く働いていくうえで、サステナビリティ活動が自身のミッションだと感じるようになりました。自分ごと化できたのかなと思います。
髙森:社会課題や環境課題について、自分ごととしてとらえられていませんでしたが、人任せにするのではなく、身近なことから自ら行動するようになりました。
ナガセケムテックスのマテリアリティ(再掲)
ここで、あらためてナガセケムテックスの3つのマテリアリティを①課題、②課題解決と持続的成長のつながり、③課題解決に向けた中長期的なアプローチの観点でもう少し詳しくご紹介したいと思います。
マテリアリティ①:環境にやさしい化学工場をつくる
マテリアリティ②:素材・技術の開発で豊かな未来をつくる
マテリアリティ③:働き続けたい職場環境をつくる
そして、これらのマテリアリティを解決するための土台として、「サステナビリティ意識の浸透」と「従業員エンゲージメントの向上」により、「従業員一人ひとりの『心』に働きかけ、ナガセケムテックスとともに課題解決に取り組む熱意を引き出す」施策が重要だとしています。
マテリアリティ特定のその後
サステナビリティ推進プロジェクトは、ナガセケムテックスのマテリアリティ特定という当初の目的を果たし、2022年3月末日で解散。
その後、2022年4月にサステナビリティ推進プロジェクトから格上げした「サステナビリティ推進委員会」が設置されました。
また、それぞれのマテリアリティに紐づく分科会が発足し、具体的な議論や活動が行われています。
各分科会には、サステナビリティ推進プロジェクトメンバーの多くが参加し、その熱量を他の従業員に伝播させています。
最後に、ナガセケムテックスのサステナビリティに関して今後どのようなことを期待するか、伺いました。
吉本:自ら先頭に立って課題解決に挑戦する人を高く評価し、皆で応援できる会社であり続けてほしいです。
何か新しいことに取り組む時、挑戦者は孤独です。会社として挑戦者を力強くサポートする環境をより一層整えることで、健全なチャレンジ精神を後押しして、サステナビリティを推進する大きな力になっていくと思います。
髙森:サステナビリティを推進するのは、結局は人です。そのような意味では、多様性を重視してもらいたいです。例えば、ある人にとっては「失敗」でも、ある人にとっては「成功への過程」なんです。型にはめるのではなく、これまでに増して、多様性や様々な意見を受け入れて、サステナビリティに取り組んでほしいです。
いまや、どの企業もあたりまえのように推進するサステナビリティ。
ナガセケムテックスのサステナビリティに関する取り組みはまだまだ始まったばかりですが、遅れをとらないよう着実にサステナビリティを推進し、マテリアリティの解決を通じて社会に貢献してまいります。
文 :木下 仁人 (経営企画本部 サステナビリティ推進室)
写真:竹本 知恵 ( 同上 )