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ナガセケムテックスには魚がすんでいるらしい

兵庫県たつの市にあるナガセケムテックス播磨事業所。
ここでは、半導体や自動車、日用品など、私たちの日常生活に欠かせない製品に使われる化学品を製造し、国内のみならず世界中に提供しています。

そんな化学工場に、魚がすんでいる…という噂を聞きつけたので、調査してみました。


魚のすみかは貯水槽


詳しい社員に話を聞くと、魚がすんでいるのは工場の最南端にある貯水槽とのこと。

ピンを立てているところが貯水槽

貯水槽は、排水処理後の処理水を河川に放流するためのもの。
工場の西側を流れる一級河川の林田川と水路でつながっていて、どうやらその水路をつたって林田川から魚が遡上してくるようです。

魚がすむ貯水槽
林田川につながる水路。ここを魚がのぼってくるようだ

担当者に聞いてみた

魚がすめるということは、この貯水槽の水はかなりきれいなのだろうか…?

ということで、播磨事業所の廃水を管理する機能化学品事業部 生産第二部 環境管理課の担当者に、ナガセケムテックスの廃水処理について聞いてみました。

廃水処理のプロセス

ナガセケムテックスの廃水処理は、好気性バクテリアの働きを利用した活性汚泥法によって実施されています。

製造設備で生じた廃水は、まず原水槽に送られます(高濃度廃水は、高濃度槽を経由)。原水槽では、油や固形物などを取り除き、水質を均一にする処理が行われます。

その後、曝気槽(ばっきそう)で空気を吹き込みながら廃水と活性汚泥を混ぜて処理を行い、膜ろ過装置(MBR)で処理水と汚泥を分離します。さらに、汚泥は脱水機で容積を減らしたうえで産業廃棄物として処分、浄化された処理水は貯水槽を経て河川に放流されます。

廃水処理のプロセス

廃水処理能力向上に向けた取り組み

この廃水処理プロセスの中で、廃水処理能力や処理水の水質を高めるためのさまざまな取り組みが行われています。

取り組み①:活性汚泥による処理

曝気槽(ばっきそう)では、自然界に存在する好気性バクテリア群(活性汚泥)を用いて、廃水中に含まれる有機物を分解しています。

また、槽内に散気管を設置して空気を送り込むことでバクテリア群の動きを活発にし、処理能力を向上させています。

曝気槽内に設置された散気管

取り組み②:膜ろ過装置の導入

処理水と汚泥を分離するための装置として、沈殿槽が一般的ですが、ナガセケムテックスでは曝気槽内に、膜ろ過装置(MBR)を設置しています。

沈殿槽で汚泥と処理水を分離しようとすると、有機物が処理水と一緒に流出してしまうため水質が悪くなりますが、MBRを使用することで、有機物と処理水の分離だけでなく、水中に浮遊する物質や大腸菌も除去できるため、処理後の水質が良くなることが知られています。

膜ろ過装置

 取り組み③:pHコントロール

廃水の種類によっては、活性汚泥による処理後にpHが大幅に低下し、処理能力が低下するという問題がありました。pHが低下する要因を調査したところ、活性汚泥による処理過程で生じる塩化水素(酸性)が原因であることがわかりました。
そのため、水酸化ナトリウム(アルカリ性)を投入し、曝気槽内でのpHを適切な値に維持することで、有機物の分解率を示すCOD分解率を約1.5倍改善させることに成功しました。

曝気槽で処理される廃水

取り組み④:オゾン処理装置の導入

活性汚泥による処理は、バクテリア群を利用した処理方法であるため、気温の変化や処理する廃水の影響を受けやすく、処理能力が低下するおそれがあります。
ナガセケムテックスでは、オゾン処理装置を設置し、活性汚泥による処理水の水質が、当社の設定値を上回った場合には装置が自動で起動し、オゾンの強力な酸化作用によって水質を向上させています。

オゾン処理装置

河川に放流する排水は厳しい基準をクリア

工場に隣接する林田川は瀬戸内海につながっています。そのため、林田川への排水は、瀬戸内海環境保全特別措置法が定める規制値を下回る必要があります。
ナガセケムテックスでは、これまでご紹介したようなさまざまな取り組みを通じて何重ものセーフティーネットを設定し、規制値を徹底して厳守しています。

ナガセケムテックス播磨事業所の貯水槽で気持ちよく泳ぐ魚たち。
それは、環境負荷の低減に取り組む環境管理課のみなさんの努力の結晶なのかもしれません。

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