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ネコと人間と金の羽根

いつの頃からか、ネコが尻尾を持ち上げて歩いていると、尻尾の付け根のところから背中に向けて、分け目のような毛癖ができるようになった。痛がったり気持ち悪がったりすることはなく、手でなでればすぐに元に戻るし、座っていると勝手に消えることもある。

SNSに投稿するといくつかコメントをいただいたが、同じようになるというネコは少数派のようで、ここまで大きな癖がつくのは珍しいようだ。そんななかで「まるで金の羽根のようですね」というコメントがあって、ああ、それはいいなと思った。

ネコと人間の八日間」で書いたとおり、ネコを拾ったとき彼は下半身が麻痺して動かなかった。事故かなにかで腰骨あたりをケガしたせいではないかと、よくこの尻尾の付け根あたりを軽くなでてマッサージしたものだ。

のちにこの麻痺はFIP(猫伝染性腹膜炎)による神経症状であり、原因は脳に炎症があるせいとわかるのだが、それでも人間は「歩けるようになれ」とつぶやきながら、やはり尻尾の付け根をなで続けたのだ。

しかしその後、幸にして治療がうまくいき(といっても抗生剤を注射し、あとは栄養のあるものを食べさせただけだが)麻痺が完全に解消すると、この尻尾の付け根をなでる習慣はなくなり、噛み癖との戦いへと移行したのだった。(ネコと人間と噛み癖の話

そんなことも忘れかけていた頃に現れたこの「金の羽根」は、あのとき尻尾の付け根をなで続けたことで奇跡が起こりネコが歩けるようになったという、ひとつの物語の象徴のような気がして、それが事実かどうかなんて関係なく、一匹の捨て猫を救うことができた自分へのギフトのように思えるのである。

ネコはもうすぐ1歳になる。生後1ヶ月ほどで彼を拾い、病気であることがわかったときには、一日一日をなんとかもう一晩生きてほしいという思いで過ごしていて、まさか1歳まで生きられるとは想像することができなかった。きっとそんな日々のどこかで、金の羽根がどこからともなく飛んできて彼に宿ったのだろう。まるで幼い頃に耳にした不思議なお伽話みたいだ。

お気持ちだけで十分だと思っていますが、サポートされたくないわけではありません。むしろされたいです。