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出産のこと

出産して2年。先日迎えた息子2歳の誕生日、私は出産当日のことを懐かしく思い出していました。1歳の誕生日は「今」に必死すぎて正直あまり感慨というものはなかったけれど(というか、息子が手足口病になり、私も高熱を出し、というさんざんなものでした…この件も機会があれば書きます)、今年は少し子育てに余裕がでてきたということですかね。そんなわけで、記憶が鮮明なうちにいろいろ書き残しておこうと思っている次第です。

出産というと多くの人が想像したり映画やドラマなどで見るのは急にお腹が痛み始めて苦しむ妊婦の姿ですかね。私もなんとなく陣痛から始まるんだと思っていましたが、現実は違いました。

ドバっと破水

正直今思い出してもちょっと冷や汗がでそうです。

気づいたのは出産予定日から10日ほど前のある日の午前4時ごろ。ふと目が覚めて、違和感に気づいて。最初は尿漏れかなと思ったんです。ほら、妊娠後期の妊婦さんはよくあるって聞くでしょ。私もとうとう尿漏れしちゃったかな~と。でも、私の意志に反してとめどなくドバドバと明らかに尿ではないものが出ているんですね。動くたびにドバドバ。とりあえず寝室からトイレに向かったんですけど、その道すがら、床がどんどん濡れてくるわけです。とりあえず、トイレに座ってみて、そこで「破水か」と頭ではなんとか認識しました。そこからとりあえず夫を大声で呼んで起こしまして、「すごい勢いで破水してる。たぶん即入院になる」と伝えました。

夫、かなり冷静に「病院に連絡した?」と返してきまして、私もそこで少し落ち着きを取り戻しました(相変わらず心臓はバクバク)。夫に私の携帯をとってきてもらい、自分で病院とタクシー会社に電話しました。これから出産の予定がある方は、手元に診察券とタクシー会社の電話番号を控えておくといいと思います(タクシーをすぐ呼べるアプリも便利)。

夫はその間、私が指示した持ち物をカバンに詰めてくれてました(あらかじめ入院セットは用意していたんですが、着替えなどもろもろ)。そして静かに自分の身支度をしていました。私は一度濡れた服を着替えるも、大きめのナプキンをしても間に合わないほど濡れてくるので、あきらめてバスタオルを腰に巻いていました。今思い返すと、いつも通り落ち着き払って「いよいよか~」などと言いながら歯を磨いていた夫、ちょっとシュール。2人とも冷静にタクシーを待っていたら、到着したタクシーの運転手さんが慌てふためいていてしっかりしてくれよ…と思ったりしました。

胎動がない

午前5時頃、タクシーで病院に到着すると、やはりすぐに入院ということになり、LDRに入りました(LDR=陣痛、分娩、回復までを行う部屋のこと)。出産まで部屋を移動する必要がないというのは今考えるととてもよかったと思います。

破水しているので点滴をつけられ(おそらく感染症予防のため)、赤ちゃんの動きを把握するためのモニターもつけられ身動きがとれなくなりました。そこで「赤ちゃん動いてない」と言われました。まじか。

今赤ちゃん寝てるかもしれないから、と言われひとまず様子見になったものの、朝食の時間になって、「赤ちゃん元気なかったら帝王切開するかも」「一応朝食抜き」といわれげんなり。この時、陣痛ははじまっていたものの、まだご飯を食べたいと思うぐらいには余裕があったんですね。不思議と赤ちゃんは大丈夫だろうという根拠のない自信もありました。

陣痛はこれからもっと強くなると助産師さんに言われたので、これ以上痛くなったら間隔を自分で測るのは無理かもしれないと思い、夫に測っておいてほしいと頼んでおきました(これは今考えると正解)。夫はしばらくLDRの中を観察したり、モニターなどをじっと見たりしていました。何に対しても知識欲が高い方なので、これからどのように出産が行われるのかについても興味深かったのかなと思います。助産師さんの話も真剣に聞いていました。

「余裕やね」

9時頃になって、無事に胎動が確認でき、当直の医師から朝食が許可されました。赤ちゃん大丈夫だったという安堵からか、夫が「コンビニに行ってくる」と言って出ていきました。そして私にも待望の朝ごはんが運ばれてきました。病院のごはん、期待してなかったけどちゃんと味もしっかりあるしおいしいなぁともぐもぐしていたら、私がいつも外来で診察を受けていた担当の女性医師が様子を見に来て、破水の状況や体調などについて軽く確認していきました。もぐもぐと朝ごはんを食べている私を見て、担当医は「余裕やね」と言い残し去っていきました…。いや、痛いですこれでも。このとき陣痛は10分間隔ぐらいだったと記憶しています。

いよいよ

午後になると陣痛間隔も短くなり、痛みを黙って耐え、陣痛がない間は目を閉じて一瞬眠る(というか気を失うというか…)という感じでした。夫は陣痛がくると腰をさすりながら、「吸って!吐いて!」などと助産師さんのように声をかけてくれていました。陣痛って痛すぎて息が止まりそうになるんです。しつこく「吸って、吐いて」と言われるのも頷ける。誰かに声かけてもらってきちんと呼吸を意識するのが大事なんでしょうね。あっという間に酸欠になりそうですし。

陣痛がいよいよ耐え難く、痛みが下の方に降りてくる感覚(敢えて形容するとしたらものすごくひどい下痢のときのような…すいません…)になってきた頃、外来診察を終えた担当医(朝も来た人)がやってきて、内診。「あら~もう子宮口前回やわ!分娩の準備します!」と言って夫はいったん外に追い出されました。それが17時半頃。

バタバタとスタッフが動き回る気配があり、すぐに夫が部屋に呼び戻され、私の頭側、左手に立たされました。そのときにはもう何か出てきている感覚があって、「頭でてきてるよ!」と助産師さんに言われました。自分の意思ではなく、いきみたいような(ものすごい下痢のような…すいません…)。担当医と助産師さんがいきんで!というタイミングで2~3回いきんだでしょうか。急にお腹が凹む感じがして「17時45分、生まれました!」と。うわぁ、本当に人間が入ってた。息子が生まれた瞬間の素直な感想です。

(そういえば、どこかのタイミングで会陰を切開する生々しい「ブチッ」という音もしたけれど、陣痛が痛すぎるので何も感じませんでした。出産後の痛みは地獄でしたけど。)

立ち合ってもらってよかった

夫は珍しく、感慨深げに「おつかれさま。ようがんばったな」と言っていました。のちに聞いたところ、生まれた瞬間は泣きそうになっていたそうなのですが、息子の後にでてきた血みどろの胎盤を見てしまって涙が引っ込んだとのこと。立ち合い出産も良し悪しあるな…という気がしてしまいますが、私が処置を受けている間、私にしか聞こえないぐらいの小さい声で「母は強しやなぁ…」と夫がつぶやいていたので、やはり立ち会ってもらってよかったなぁと思います。陣痛約11時間、分娩の準備がはじまってからは15分とまぁまぁ安産ではあったけれど、やはり出産は壮絶な大仕事でした。この「大仕事」を、父親の目線でのちに息子に語れるというのは良いことだと、うちの母は言っていましたが、その通りだと思います。出産直後の私は若干ハイになっていて、「ねぇねぇ、めっちゃお腹凹んだ!」と話しかけるも、夫はなんだかボーっとしていました。出産が壮絶で圧倒されていたのかも。そういえば、何を思っていたのかあまりちゃんと聞いたことがないので、機会があればどんな風に感じたのかゆっくり聞いてみようと思います。

しみじみ

別室で身体をきれいに拭いてもらった息子を初めて抱いたとき、思わす「温かい…」とつぶやいていました。ふと見ると背中にはたてがみかよというぐらい濃い産毛が生えていて若干驚いたんですが、私の心を読んだのか、「産毛はそのうち抜けるからね」と助産師さんに言われました。正直に言うと、すぐに「かわいい」と思ったかというと、そうでもなく、ひとまず生きて出てきてくれたことに安堵していたという感じです。

こうして2年前の春に爆誕した息子は、すっかり産毛も抜け「赤ちゃん」を脱し、元気いっぱいの「幼児」になりつつあります。あの時抱いたひどく頼りなくふにゃふにゃだった我が子が、むちむちぷくぷくと肉がついていき、やがて寝返り、ハイハイ、二足歩行と確実に人間に近づいてきたことは「しみじみ」と言うほかはありません。そして、今は迷いなく「かわいい」と言えます。息子を育てながら、私もゆっくりと「母親」になることができたのだと思います。

もちろん、息子を育てる中で悩みはつきなかったのですが、それについてはまた別の機会に。

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洋梨
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