溶接女子から学ぶ職人のイロハ〜庖丁工房タダフサ
澄んだ目をみると吸い寄せられるかのように、職人の手捌きもその洗練した動きには見惚れてしまうもの。ものづくりのまち、新潟県三条市では女性の活躍が目覚ましい。ものづくりと真摯に向き合う現場での姿を追う。
庖丁工房タダフサ(新潟県三条市東本成寺27-16)で開催された、職人の手しごとを間近で見れる工場見学ツアーでの溶接女子の手さばきだ。
そう語るのは庖丁工房タダフサの渡邊さんだ。去る2023年5月3日から5日に行われた<“溶接女子”が教える溶接体験>のひと場面での対話。
昨今、DIYブームが後押しとなり、ご自宅でも大工道具や工具をさわる機会が増えてきた。とはいえ、溶接作業までは体験することはそう多くない。ものづくりに欠かせない溶接作業は庖丁づくりでも同様、大切な工程である。渡邊さんは溶接作業を担当して7年目(2023年現在)、三条市では元祖溶接女子の立ち位置に入るそうだ。
当日は溶接体験のレクチャーを行う渡邊さん。たとえ初心者向けの体験であっても溶接作業では、火花が飛び散らせながら数ミリ単位の部材の接合を行うため、参加者の気を引き締めるのも忘れません。
溶接作業のお手本を示しながら、渡邊さんはそう語ります。
いざ溶接体験をさせてもらうと、わたし自身、初体験で緊張のためか手と足の震えが止まらない。「ご安心ください、上手にできていますよ」とさりげないフォローをもらう。
渡邊さんからレクチャーの通りに1…2…3…4…5のタイミングで、2本のシャフトを接合する。数秒の作業だが、思い通りのかたちにできないのは心の乱れが影響しているのこと。
職人の世界では背中をみて技を覚えるといった習わしは遠い昔のお話。
これまでに庖丁工房タダフサで学んだことを棚卸しながら、体験型ワークショップを通して教えあい、これからの技術の習得にもつなげる。コミュニケーションが求められる時代になってきたのだろう。
次のものづくりは、女性の輝く笑顔とともにものづくりのまちでの変化の兆しがかいま見えるひとときであった。