【りんご農家の未来を変える仕組みづくりに取り組む】りんごPJ・永井温子
\NCLインタビュー第8弾/
Next Commons Lab弘前は地域おこし協力隊制度を活用して、経済的なリスクを軽減しながら起業を目指す取り組みをしています。地域資源を活用したり、地域が抱える課題にアプローチするプロジェクトを立ち上げ、現在6名のメンバーがそれぞれのテーマに沿って弘前市で活動しています。
今回ご紹介するのは、りんご農家の後継者を増やしていくための仕組みづくりに取り組む永井温子さん。NCLとの出会い、現在の取り組み、弘前市への思いについて、お話を伺いました。
弘前との出会い、弘前への想い。0から1を生み出す仕事に挑戦したい
-弘前に来たきっかけと、現在の仕事に就くまでの経緯を教えてください
地元は福島県郡山市で、高校のときにお世話になっていた先生の薦めもあり、大学進学を機に青森県弘前市に来ました。最初こそ「なにもないな」と思ったものの、買い物などに多少不便なことよりも、城下町などの歴史や、先人たちが守り育ててきたりんご畑など、地元にはないコンテンツの多さに魅力を感じて、弘前が好きだなと思うようになりました。
大学時代は、スティールパンの演奏サークルとフランス語サークルに所属していました。スティールパンは珍しい楽器なので、年に20回くらい弘前市内外から演奏の依頼があり、幅広い世代の地域の人たちとの交流する機会がありました。そういう活動を通して「地域でいろいろやるのがおもしろいな」と思うようになりました。
大学2年の夏に、かねてから行きたかった海外への留学が叶い、1年間フランスへ留学。その経験から、弘前市で「音楽の祭日in弘前」というフランス発祥の音楽イベントを運営しました。現在でも、「フランス日和」というフランスのものを集めたマルシェの形式で、授業の一環として続いています。
大学卒業後は、伝える仕事に興味を持っていたこともあり、フリーペーパーを発行している関東の企業に就職し、営業を担当しました。その後、大手広告代理店に転職し、食品を取り扱う企業の担当として企業広告や媒体、広報などを担当しました。
-NCLとの出会いについて教えてください
大学一年の春に東日本大震災を経験し、そのときから、東北にとっていいことをしたい、将来的には東北に軸をおきたいと思っていました。一度目の転職をして広告代理店で食品メーカーの担当になったのは、後々東北に戻ったときのことを見据えて、東北の食や農業に携わりたいと思ったためでもありました。
勤めていた広告代理店がいくつかの企業と協賛で開催している3.11のシンポジウムがあり、当時NPO法人に勤めていた石山さんに声を掛けていただいたことが最初でした。その後NCLの説明会に参加すると、ちょうど弘前市でNCLの仕組みを導入するところで、音楽祭などのイベントでお世話になった弘前市に対してなにかしたいと思っていたこともあり、NCLのプレーヤーとして「りんごプロジェクト」に携わることになりました。
数あるプロジェクトのなかから「りんごプロジェクト」を選んだのは、弘前市にとって最も重要な課題の一つに関わりたい、と考えたからです。また将来的に、東北全体に対して何かしていきたいと考えると、「りんごプロジェクト」から他産業への展開がいろいろできそうだな、と。0から1をつくる仕事に挑戦した経験がこの先の強みになると思い、「りんごプロジェクト」を選びました。
まずは農家のことを知ることから。農業の未来を見据える仕組みづくり
-現在の仕事について教えてください
2019年の4月から弘前市の「りんごプロジェクト」に参画しています。「りんごプロジェクト」というのは、年々減り続ける弘前のりんご農家を維持していくため、後継者を増やしていくための仕組みづくりをするプロジェクトです。NCL弘前のパートナーである弘前シードル工房kimoriでりんご作りの基礎を学びながら、事業の枠組みを作っています。
現在は、週に2~3日はりんご畑に出て農作業をし、それ以外の日はりんご協会の方や弘前市りんご課の方など、りんごに関する有識者の方へお話を聞きに伺って、どういうかたちで事業化していくかをディスカッションしたり、そのための根拠となる資料づくりをしています。また、弘前シードル工房kimoriでの新商品開発にも取り組んでいます。りんごを育てるということがどういうことかを身をもって知るためにも、今年1年は農作業を一通り勉強するつもりです。農作業がある日は朝が早いので必然的に規則正しい生活になり、筋肉もついて、週に一度は温泉に行くようになりました(笑)
0から1を生み出す苦しさや大変さはありますが、自分がやりたいなと思ったことをそのまま実行に移せるところに仕事の面白さがあります。まだ地域の方とのつながりや誰に相談すればいいか分からないとき、NCL弘前事務局のコーディネーターや他のメンバーに気軽に相談することができるので、心強いです。
農業を支える仕組みをどう構築するか。メディアを立ち上げて情報発信も
-これから取り組みたいことや展望を聞かせてください
今、弘前市やりんご協会では、どなたでも参加できるようなかたちで、りんごを育てるための講習会が実施されています。でも、実際に畑(現場)に行ったときに毎日指導してくれる人がいるかどうかについては、農家の親や親戚がいるかどうかによって分かれています。親や親戚にりんご農家がいる農園はりんごの育て方のノウハウを教えてもらえますが、そうではない場合は教えてくれる人がいないのが現状です。指導者を紹介する仕組みがあるわけではないし、指導要綱にも課題があります。
移住してきた人は新規就農の研修を受けることもできますが、その間の生活費は補助金だけでは心許なく、新規就農者は金銭面でも不安要素があります。今後のりんご農家の数について令和17年には平成27年の半分の数にまでりんご農家の数が減少するという予想もされているんです。
そのような状況を打破するべく、①後継者不足は家庭の問題という認識を変える②りんご農家に関するポジティブな情報を発信する③毎日指導してもらえる制度づくり、の3つの課題に対して、さまざまな角度からのアプローチを考えています。
また、今年9月から弘前市が主催する「ひろさき未来創生塾」という講座に参加しています。創生塾のなかで②の課題にも関わるような弘前発信の新しいメディアを作りたいと考えていて、地域おこし協力隊として活動できる3年間の間にかたちにするのが目標です。
同じ志を持つ人へ-この街で挑戦できることはたくさんある
-これからNCLの仲間になりたいと考えている方へ、一言お願いします
なにかに挑戦したい、やりたいことがある人は、NCLの制度をうまく活用して、自分のやりたいことにぜひ挑戦してほしいです。20~30代の背中を押してくれる人はたくさんいます。2020年4月には、弘前市に現代アート美術館がオープンします。建築やアートの分野でも、できることはたくさんありそうです。
ぜひ、一緒に仕事を楽しみましょう!
(文/鈴木麻理奈)
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Next Commons Lab 弘前(NCL弘前)では地域商社・学生・シェアハウスといったテーマでのメンバー募集中のプロジェクトもありますので、興味のある方はぜひ下記をご覧ください!http://nextcommonslab.jp/hirosaki/
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