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日記#29カバさんの癒し
動物園には随分行っていなかった。
最後に行ったのは甥が遊びに来た5年程前だった。
その頃甥はまだ3歳位。
動物園も初めてだったし。
動物に興味があったというわけでもなかったが連れていってみた。
結果。
興味をもって興奮した様子をみせてくれたのは…偶然園内で一緒になった甥と同じ年の頃の男の子が乗っていた三輪車だった。
全く動物は見ず、その男の子の三輪車の後ろばかり追いかけて
大人達から
「ライオンだよ」
「マレー熊だよ」
「チンパンジーだよ」
など声をかけられても上を見上げる事はなく目の前にある三輪車が触りたくて眺めたくて仕方がなかった甥がそこにいた。
我が家の息子や娘は動物園には幼い頃に頻繁に連れて行っていて、それなりに興味をもって楽しんだという記憶しかなかったので甥の反応は意外だったが。
人それぞれ。
今回私は1人で動物園に来てしまった。
ひととおり園内を回って楽しんだ私が、また会いたいと思っている動物がいるので皆様にご紹介したいと思う。
カバさんである。
この動物園の全体からはちょっと外れた所にカバ舎がある。分厚い透明な窓越しにカバさんが見える。
この日も私が行くと1人の男性だけが見ていた。
しかもカバさんは水の中に潜ったまま。
私もカバさんを近くに行って見てみたがじっと潜ったまま微動だにしない。
5分位たっただろうか。
男性はそこから別の場所に移動し、私1人になった。
その間全くカバさんは動かず潜ったままだった。
私はカバさんの顔がよく見える所に移動してぶつぶつと話しかけた。
「カバさん、あなたも退屈なんだろうね。顔が見たいけど無理よね」
「仕方ないよね、見に来る人も少ないし。何もしたくないよね。」
すると…
私の声が届いたのか、先ず目がパチパチと瞬きをして耳がピクピク動いた。
まだ水の中に潜ったままだったが、ちょっとだけ浮上。
「えー動いた、カバさんありがとう」
そして暫くすると頭半分浮上。
息継ぎをする為だったのだろうか。
また潜った。でもカバさんの目が私を見ている。そんな気がした。
「カバさん顔みせてくれてありがとう」
するとまたカバさん浮上。
今度はカバさん更に私がよく見える位置に近づいてくる。
そしてカバさんの顔全体が水から浮上。
なんだか私カバさんとコミュニケーションが取れてるかもと興奮しながらぼそぼそと話しかけた。
「私今ちょっと疲れててね、カバさんに会えて元気でた。ありがとう。嬉しいな」
ずっとカバさんの目が私を見てくれていて嬉しかった。
それからもぶつぶつと話しかけて暫くカバさんの側にいた。
カバさんの所には、20分位いたかもしれない。
すっかり癒され、かなり元気をもらった私はカバさんにお別れを言った。
暫くカバさん顔を水から出してずっと私を見ていてくれていた。
「カバさんありがとう。また来るからね」清々しい気持ちでその場を離れた。
また会いたいと思っている私がそこにはいた。
他の人がそこに遭遇したらきっとかなりヤバイ奴ですが、私にとってその瞬間は紛れもなく癒しの時間。
まずカバさん、そして誰も来なかった事に感謝。
今日からまた元気に頑張れそう。
読んで下さってありがとうございます
今日も明日も良いことがありますように(ホタルブクロ)
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