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【第281回】AIはアラジン魔法のランプ

『人が想像できることは必ず実現できる』と言ったSF小説家ヴェルヌの時代には想像もしなかったAI人工知能が秒速進化している。

Robotはチェコ語で奴隷Robotaが語源。

12年前に会ったロボット発明家の高橋智隆東大教授はTIME誌で「最もクールな発明家で未来を変える33人」に選ばれ、ロボカップ世界大会で5年連続優勝、3つのギネス世界記録を持つ。

HONDAロボットASIMOは二足歩行以上に“走って”見せ、トヨタのロボットは難しいトランペット曲を奏で、村田製作所ムラタ君が自転車を乗り回してみせたのは数年前で、アイボ犬のオモチャと思ったロボットが人工知能を駆使して人間並みに単独行動する今日が来るとは! 

配膳ロボットが混雑客の間をすり抜けて人一倍働き、空ではAIドローンが荷物配達をこなし、数万人のスタジアムで瞬時に参加者数を判別監視、道路混雑でAIが信号機操作するなど活躍している。

無人トラクターの畑仕事が不思議でない光景、自動車が自律走行する運転手無しの世界!

ハリウッドでは俳優が自分たちに似せたAI合成人物に取って代わられ失業する危機感でストに突入、SONY MUSICもAI合成新曲は自社曲を盗作合成していると損害賠償裁判に出る。

アナウンサーの声もAIか人間か区別がつかず、合成美人も本物かと錯覚する。AIとテレワーク普及でシリコンバレーの技術者陣はフロリダなどに転居、花のサンフランシスコはゴーストタウンになり、警官不足で15万円以下の万引きは逮捕されないので店舗は倒産に追いやられて難民で溢れる犯罪ガレキ都市になった。

人間は記憶が薄れミスもするが、AIロボットはインプットされた膨大な知識蓄積で“正確な行動”を実直に再現する。

休憩も賃金、労働時間、冷暖房、照明も不要で、徹夜労働でも不平を言わず、膨大で正確な集積知識で要求を一瞬にして引き出して提示するスピードは驚異である。

過去の判例を調べて法廷に臨む弁護士は、瞬時にデータ処理して“判決”を明示するAIに完敗して廃業になる。

難しい手術はロボットがより的確にこなすと医者が断言。十数時間の立ちっぱなし大手術で生身の人間医師は疲労蓄積でミスや失敗を犯すが、ロボットは高難易手術手順を丸ごとINPUT学習して黙々と正確にこなし、医師は監視しているだけで良いとか。

ただ、過去データ蓄積に基づいた施術なので、癌など人間の経験と勘による転移推測は、まだ及ばないだろうとか。

さて、あなたの職業はAIロボットに取って代わられることは絶対に無い!と断言できるだろうか? 

AIで「黒木安馬」と入力したら驚愕の詳細プロフィールが瞬時に画面に表記され、緻密で的確な長文に心底恐れ入った。

過去をコピーして正確に再現できるAIは人間に勝るだろうが、問題は独力で新世界を創造できるかだろう。

神域に近いそこまでは無理だと願いたいが、1968年映画『2001年宇宙の旅』では、宇宙船が木星探査飛行中に、人工知能コンピューターHALが謀反を起こして搭乗員と争いが起こる展開。

HALは自我の欲望を持つほどに成長を続けて宇宙船を乗っ取る……56年前のSF映画だが、AIが従順なシモベの器械ロボットでは無くなって人類の強敵になる恐怖を物語っている。

近未来はどうなるのか誰にも予測できない。アラジン魔法のランプは持ち主の命令を実行するが、もしそれが悪魔の手に渡ったら!ロボットは仕事を奪うのではなく、人の能力を拡張して作業軽減で働いている人が楽しくなる環境を作ることに貢献する夢のAIのままであって欲しい。

問題は手ぶらになったアナタの、“その先は何をしたいのか?”が問われる。

『農業経営者』2024年8月号


【著者】黒木安馬(くろきやすま)
高校時に米国留学後、早稲田大学を経てJAL国際線客室乗務員として30年勤務。 世界初の「カラオケ・フライト」や「1万メートル上空・北島三郎機上コンサート」などを実現させる。 千葉の自宅は1300坪の山林を開墾してブール、テニスコート、コンサートホール等を手作りする。 現在、日本成功学会社長として自己啓発や社員教育で講演中。 著書に『ファーストクラスの心配り」、『あなたの人格以上は売れない!』(プレジデント社)、『成「幸」学』(講談社)、『出過ぎる杭は打ちにくい!」 (サンマーク出版)、『面白くなくちゃ人生じゃない!』(ロングセラーズ)、『小説・球磨川』(上下巻・ワニ ブックス)、『雲の上で出会った超一流の仕事の言葉』(あさ出版)などがある。

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