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【第26回】“機能性米”飛躍の年 コメの新需要が生まれる

2024年はコメ業界にとって二つの明るい話題が出てくると希望的観測を交えてその可能性に言及したい。

一つは、これまでコメの評価基準としては「食味」が重視されてきたが、新年は“機能性”の評価が高まり、健康効果によるコメの需要が新たに生まれると予想される。機能性と言うと、玄米に含まれる様々なビタミンや栄養素などが知られているが、ほかにも最近の研究で、これまであまり知られていなかった健康効果が次々に発見され、それらを活かした商品が登場。また、自治体の中には市民の健康推進のために玄米を食べやすくした商品を妊婦に提供したり、学校給食に提供するという取り組みを始めたところもある。

もう一つは、コメの価格形成の場として現物市場と先物市場が新たなスタートを切る年になると予想している。こちらは予想と言うより、そうならなければならないという思いの方が強いのだが。


コメの機能性表示食品 初めて消費者庁が受理

23年8月に東京ビッグサイトで開催された「ウエルネスフードアワード2023」のアンチエイジング部門で横浜のコメ卸(株)ミツハシが開発した機能性加工食品が金賞を受賞した。「澄(SUMU)」という玄米商品で、食べると肌の潤いを維持するバリア機能があり、コメの加工品で初めて機能性表示食品の認証を取得した。

ミツハシは4年前からコメの健康機能に着目、組織横断型の取り組みとして「お米健康プロジェクト」を立ち上げた。

機能性表示食品として認めてもらうには科学的なエビデンスがなければならない。そこで同社はセラミドを多く含む品種を調べ、さらに1年間保管してセラミドの含有変化も調べた。

摂取する食べ物100gに対して1.8mgのセラミドが含まれていれば肌の保湿効果があるとされており、これを基に様々な品種を調べた結果、「つきあかり」に最も多く含まれていることがわかった。

分析を行なった同社品質管理室の担当者は「品種によってセラミドの含有率がこれほど違うとは思わなかった」と言う。

商品化に当たっては玄米を食べやすくするために無洗米化したうえでスチーム加工した。

同社がコメの健康機能に着目して商品化したものはこれだけではない。「アスリートプラスおにぎり」(スポーツ専用)や亜鉛米をご飯にした「腸活弁当」を自社直営レストランで販売している。

機能性に着目したコメ加工品はシリーズ化する予定で、半年以内に第2弾を出したいと意気込んでいる。とくに関心を持っているのが鉄分を多く含んだコメで、食べれば貧血改善効果が期待できる。

医食同源コンソーシアム コメで国難解決を目指す

23年11月14日、東洋ライス(株)が発起人になり「医食同源米によって我が国の国難を解決するためのコンソーシアム」がスタートした。

この取り組みが目指すのは
(1)国の財政を圧迫している医療費を大幅に減らす
(2)次代を担う子供や妊婦の健康度を高めるとともに少子化を防ぐ
(3)病魔で苦しむ人々を減らすとともに健康寿命を延長させ介護費を減らす
(4)コメ消費量を増やし食料自給率の向上を図る
(5)休耕地をなくすとともにコメの輸出によって海外の人々にも健康長寿で貢献する
(6)コメの価値を高め生産農家の意欲向上を図る。

どの項目も大変大きな課題だが、このコンソーシアムには官・学・産・消の400を超える団体や個人が参加した。

設立総会で代表会員に選出された大阪府泉大津市の南出賢一市長が講演。それによると、市民の健康増進や安心・安全な食料の安定確保のために東洋ライスと連携するとともに、産地の自治体と連携して独自のサプライチェーンを構築している。

連携先は北海道旭川市、長野県上伊那郡南箕輪村、滋賀県東近江市、和歌山県日高郡日高川町、熊本県人吉市、沖縄県石垣市。

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