僕たちは完璧なものしか見ていない
タイトルにあるのは中小企業を顧客に持つ会社でインターンをしていて感じたことだ。正直僕は中小企業を侮っていたかもしれない。何も知らずに大企業の方が優れていると思っていたのかもしれない。自分の中にある固定観念や傲慢さを痛感したような気がする。就活でも多くの就活生が大企業を目指す構図は今も変わらない。それは悪い事ではないし仕方ない事でもある。でも、中小企業が大企業より劣っていると考えるのは少し違うかもしれない。僕が言っているのは中堅企業や未上場ベンチャーなどではなく、本当に十数人規模の従業員数で事業を行っている会社たちだ。確かに知名度や経営的な部分で大企業よりも制限がかかっている部分はあるだろう。しかし僕らが目にしている洗練された商品も、名もない中小企業の技術の結集だったりするわけだ。消費者として商品を消費するとき、どうしても目が行くのはその製品の完成形だ。それが優れていればそれを買ったところの会社は優れていると考える。しかし、実際はバリューチェーンの中で様々な規模の企業が価値をのせてここまで運ばれてくる。それはたった一つのねじかもしれないし、製品のメインの機能を司るものではないかもしれない。それでもそれを開発したり、売り込んでいくのに様々なストーリーがあることを知れたのはインターンをやっていての大きな学びだったと思う。それと同時に採用において多くの企業が「志望動機」を重要視し、たずねる意味が分かった気がする。
日本の中小企業
この国にある99.7%企業が中小企業と言われている。これには様々な業種が含まれるが、中小製造業について考えてみた。その中にはすごい技術や地道な経営を行って何とかよいものを提供しようと頑張っている企業もたくさんある。しかし、それが明るみ出ることは少ない。いくら良いものを作っても大手の下請けでは価格以外で評価を得ずらかったり、ロゴを入れられないなどの問題から、知名度は上がっていかず、結果大手企業からの受注に頼るようカタチになってしまう事がある。それは需要の変動や景気面のリスクから危険なものであるが、だからと言ってすぐに次の受注をと言えないような状況でもある。その中でどう知名度と信用を得て、内部留保を確保し、それを実現するかもわからない自社開発に投資するかをを考えるとその大変さは計り知れない。問題はそれを多くの人に認知されない点だ。こと製造業において中小企業が知名度を上げられないのは決して何かが劣っているわけではなく、そのような産業構造の中で思うように自分の製品をアピールできていない事でもあるのだ。
部品をどう売り込むか
多くの場合人はすぐに使える、完成品にしか興味がない。それは消費者の立場であればしょうがないが、そこがTo Bで技術力や製品を売り込んでいく事の難しさでもある。最終的な成果物を扱う会社では商売の基本である「安く仕入れて、高く売る」を実現したいため、なかなか価格以上にその技術力の持つ意味を認めてもらえなかったりするようだ。しかし、洗練された技術が何か新しい製品の価値に合致した時、それはとてもイノベーティブなものが生まれるかもしれない。そこにはすごくロマンみたいなものがあると思う。いくつか中小製造業が自社のブランドを持ったり、知名度を高めていった事例を読み込んだがどれも心躍るものだった。ワクワクする冒険ものの小説を読んでいるみたいだった。一つ一つが下町ロケットのようにドラマがあったし、ちょっとした偶然からの出来事だったりもした。こんなに大変だったのか!とかここが転機だったんだな~と驚く場面も多々あった。そのうち、これがどんなに大変でも折れそうになってもやめられない「やりがい」のようなものなんだろうと思った。事例を読んだ多くの企業の経営者が自社の技術を誇りに思っていたし、誰よりもその可能性を信じていた。言葉通り、「我が子のように」。これは素晴らし事だ。それを必要な人のために使う、開発する、発展させる。それが社会の根幹なんだと改めて感じた。
深くかかわるまで見えてこない
本質的に仕事に対しての熱量について理解するのは生半可ではできないと断言できると思う。頭を悩ませ、現状の「不」に全力で立ち向かい、何度も何度も挫けながらやり続ける中で「これは何とかしないといけない」というのが芽生えてくる。俗にいう「やりたい」とも違うような気がした。別にやりたいより誰に言われたわけでもないが「やらないと気が済まない」が正解だ。実際にこのように中小企業の課題について考えるようなきっかけがなければ僕も一生知らないままだったかもしれない。大きな会社はやっていることが多すぎて中身が見えずらい。上場してればガバナンスが厳格化するからなおさら外に出る情報は精査されるだろうし、内部事情を知るのは難しくなる。恐らくこれが就活でOB訪問が行われる理由なのだろう。ただ今回思ったのは本気で向き合ってみると、不利な環境でも、実力が及ばない事でも、見えてくるものがあるという事。それを教わった。自分の役割を全うし、他に価値を提供しようと努力している会社は全て尊い。それは会社だけでなく、個人でもいえる事だと思う。その人の世界観の中で「俺がやらないと気が済まないんだ」とやっている人は素晴らしい。どんなことでも一度本気で向き合って、自分に何が出来るのかを問いかけてみたいと思った。そしていざというその時のために力を蓄えるではなく、未熟な状態であっても必死にくらいついていく事が大事だと思った。準備万端の状態でやるべき何かが来ることよりも、予期せぬタイミングでやってくることの方が多いと思う。そこでどれだけ粘れるか、それがやってきたときにニヤリとしながらファイティングポーズをとれるような人間になりたいと思う。