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NBAデイリーレポート(12/5, THU)

今日のデイリーレポートのメニューはこちらになります。

  • ジャ・モラント、ダンク封印宣言

  • 1/4シーズンで見えてくる攻守のトレンド

  • 記事:「ニコラ・ヨキッチはすべてのルールをぶち壊す」


ジャ・モラントがダンク封印宣言

ヒューマン・ハイライトとして知られるグリズリーズのスター、ジャ・モラントが今シーズン驚きの決断を下しました。

「私はもうダンクをしようとはしない。あなたたちみんな、私がウソを言っていると思ってるだろ?私はマジで真剣に言っている」

モラントはその理由を「空中でぶつかってもファウルが取られないことがある。それで怪我をしたら、予定より長く離脱することになる」と説明しています。

これは11月はじめのレイカーズ戦で、モラントがアリウープのダンクに飛んだ時に床に叩きつけられてしまい、股関節の後方亜脱臼とグレード1の骨盤筋の肉離れで8試合の欠場になってしまったからなのかもしれません。ただ、今シーズンの彼のこれまでの12試合でダンクがたった3回のため、シーズン前からそう決めていた可能性もあります。

モラントは「たとえ観客が(派手なダンクをしなかった時に)ブーイングしても、私は気にしない。2点は2点だ」と話し、今後は怪我のリスクを抑えるため、派手なダンクよりも確実な得点を優先するつもりのようです。

さらに、モラントはファンが期待するオールスターのダンク・コンテストへの参加についても「試合でダンクしないのに、コンテストなんてもっとやらない」と言っています。

ダンクはNBAで最も魅力的なプレーのひとつですが、その華やかさの裏にはケガのリスクが潜んでいます。選手たちがよく挙げるのは、指を曲げたり、手首を打ちつけたりすることで、リングに勢いよく腕をぶつけて、打撲や裂傷、血豆ができることもあるようです。特に、リングとの衝突で小さな面積に40ポンド(約18キログラム)の圧力がかかるとも言われていて、ダンクが怪我につながりやすいのは確かです。

さらに問題なのは着地で、ダンクの勢いでバランスを崩し、足首や膝を捻ったり、手を床についたりして怪我をするケースが多い上に、何事もなかったとしても、着地での膝や腰にかかる負荷はとても大きいため、選手の中には着地時に両足を使うことで衝撃を分散させたりする人たちもいます。

特にモラントは体が小さい割には大きな選手相手に果敢にアクロバチックなダンクを挑むため、デリック・ローズのような大きなケガが懸念されていました。

もうモラントの電撃的なダンクを見れなくなるのは残念なような気もしますが、モラントの「ハイライトがすべてではない」という発言からは、チームを率いるフランチャイズ・プレーヤーとしての成長と自覚が見てとれます。このモラントのゲームに対する意識の変化は、グリズリーズが激戦のウェスタン・カンファレンスでプレーオフを狙っていく上で大きな意味を持つでしょう。今後もモラントのプレーの変化やスタイルにも注目です。


NBAの1/4シーズンで見えてくるトレンド

NBAシーズンの約1/4が終了したこのタイミングで、リーグ全体の注目すべき動向をThe Ringerのカーク・ギヴォニーの記事をベースに整理してみます。

まずはここまでのザ・アソシエーションのオフェンシブ・レーティング、ディフェンシブ・レーティング、ネット・レーティングのランキングを見て行きます。

オフェンシブ・レーティングのランキング(*12/4時点)

昨シーズンのレーティングと比べると、2位だったペーサーズが一気に22位までに急落しています。11位だったペリァンズも29位になっていますが、彼らにはスターターのケガ人が多く、しばらくの間Gリーガーでしのいでいたので、これから順位を上げて行くと思われます。

逆にあがっているのがキャヴスです。彼らは去年は16位の114.7でしたが、今では去年の覇者のセルティクスと肩を並べるほどまでになっています。去年はスターターのケガに悩まされたのは確かですが、同じロスターなのにシステムを変えるだけで、ここまでのポテンシャルが出るとは思いませんでした。

ディフェンシブ・レーティングのランキング

注目は昨シーズン18位とディフェンスに課題があったマーヴェリックスがトップ10入りをしている事です。マヴスはオフェンスも4位にあげてきており、今後の巻き返しが見込まれます。

逆に顕著に落ちているのがセルティクスです。セルティクスは昨シーズンは2位でしたが、ここまで10位になっています。ただ、去年もレーティングは110.6と今とほぼ変わらないので、あまり心配する必要はなさそうです。

心配と言えば、去年1位で現在7位のウルブスではなくニックスです。ニックスの去年のディフェンスは112.4で9位でしたが、今は21位まで落ちてしまいました。ウィングにはリーグトップの3&Dと言われているミケル・ブリッジスとOJ・アヌノビーを揃えているだけに、もっと良い順位にいても良いのではないでしょうか。リムプロテクションがリーグ最低レベルのKATの影響でしょうか?この辺り、様々なデータを読み解けば答えが出るかもしれません。

リーグ全体的には、去年の1位のウルブスが108.4なので、ディフェンスは良くなっています。

ネット・レーティングのランキング

優勝する条件としてあげらる攻守でのトップ10に現段階でランクインしているチームは以下になります。

  • ウェスト:サンダー、ロケッツ、グリズリーズ、マーヴェリックス、ウォリアーズ

  • イースト:セルティクス、キャヴァリアーズ

「最強」のチームはウィザーズの相手チームなのか!?

今シーズンの「最強チーム」は、ボストン・セルティクスでもオクラホマシティ・サンダーでもありません。それは「ワシントン・ウィザーズと対戦するチーム」です。

ウィザーズの対戦相手は、19試合で17勝2敗という驚異的な成績をあげ、ネットレーティングはリーグ最高の+14.1。歴史的な強豪チームと比較してもその強さは際立っています。

  • 1995-96シーズンのブルズ:勝率87.8%/ネット +13.4

  • 2015-16シーズンのウォリアーズ:勝率89.0%/ネット +10.6

  • 2024-25シーズンのウィザーズの対戦相手 : 勝率89.5%/ネット +15.0

ウィザーズは再建中と言うこともあり、ルーキーを3人スタートさせていたりしていたので、この数字は仕方ありません。

西高東低が顕著に

今シーズンもウェスタン・カンファレンスのチーム層の厚さが際立っています。

現在、ウェストでは10チームが勝率5割を超えているのに対し、イーストではわずか5チームのみになっていて。プレーイン争いに関しても、ウェストでは実力があるチーム同士の激しい戦いが予想されます。

ただ、ネット・レーティングを見てもわかる通り、ワースト5位の中にウェストのチームが3つ入っています。ウェストはプレーオフを狙うチームとタンクチームと極端にわかれているという事でしょう。

リーグの3大オフェンス:セルティクス、キャヴァリアーズ、ニックス

今シーズン、歴史的な攻撃力を見せる3チームがイースト上位を占めています。セルティクスは3ポイントシュート記録を更新中で、キャブスはリム付近の得点効率で他を圧倒し、ニックスはスローペースながらハーフコートオフェンスで成功を収めています。

ただ、これも弱いイーストとの対戦が多いという要因もありそうで、今後のトレンドに注視していきたいと思います。

サンダーとロケッツのディフェンス力

今シーズンのディフェンスのトップは若い選手を中心としたサンダーとロケッツです。しかも、激戦のウェストとの対戦が多い両チームだけに、彼らのディフェンスは素晴らしいとしか言いようがありません。

サンダーはスティール数でリーグトップを走り、相手にターンオーバーを強いて、センター不在のディフェンスを乗り切っていました。来年になればチェット・ホルムグレンが復帰し、さらにディフェンスがよくなる可能性が高そうです。

ロケッツはほぼ選手のメンツは変わらないにも関わらず、昨シーズンの10位から2位まであがっています。ロケッツも同様に試合をこなすごとにディフェンスの精度をあげていくでしょう。サンダーとロケッツのディフェンスについては、12/3(火)のデイリーレポートをご覧ください。


ナゲッツはこれまで11勝8敗でウェスト8位とあまりパっとしませんが、上でみたようにオフェンスはリーグ6位に入っています。それもスリーポイント・アテンプトが31.4本とリーグ最低であるにも関わらずです。

最後に、そのナゲッツのオフェンスを取り上げたThe Finderのトム・ハバストローの記事を紹介します。

ニコラ・ヨキッチはすべてのルールをぶち壊す

NBAの3ポイントブームに関する熱い議論の多くは、「全てのチームがただ3ポイントを放りまくるのが賢いオフェンスだ」という考えに焦点を当てている。これはある程度真実だ。ちょうど、昨シーズン200本以上のホームランを打った6つのMLBチームのうち3チームがALCS/NLCSに進出したのと同じように。スコアボードもロングボールが好きってことなんだ。

でも、デンバー・ナゲッツを見るんだ。

ナゲッツのオフェンスは今シーズンNBAでトップ6だ。それをアーロン・ゴードンがほとんどプレーしておらず、ジャマール・マレーがほとんど良くない状況で達成している。

それは彼らにはニコラ・ヨキッチがいるからだ。

そのエリートオフェンスの多くは、7フィートのセルビア人の天才によるものだ。

彼がコートにいる時、ナゲッツは100ポゼッションあたり126点を記録している。これはNBA最高だ。セルティックスですら、どの選手がコートにいる時でもこの数値に届かない。

バスケットボールには多くの得点方法があって、セルティクスとナゲッツはそのスコアリング・スペクトラムの真逆を行っている。

ナゲッツの話をする理由は、彼らが少ない3ポイントシュート数でボールを叩き込むような得点力を誇っているからだ。

彼らはフィールドゴール・アテンプトのわずか35.5%しか3ポイントラインを越えていない。じゃあヨキッチがコートにいる時にその割合がどうなるか知りたいか?さらに33.8%にまで減るんだ。

ここでぶっ飛んだスタッツを紹介する。ナゲッツは今シーズン一度も3ポイントを40回以上撃ったことがない。一方で、セルティクスは一度も40回を下回った事がない。

どちらのチームもこの40本というラインを超えていないが、それぞれ逆の方向からだ。オイルとビネガーのような対比だ。

なぜこの話を持ち出したのか?

どのチームも3ポイントを打ちまくるのがトレンドだと言われるが、デンバー・ナゲッツは絶対にそうしない。それでも彼らはほとんどの試合で止められない。

「それはヨキッチがいるからだろ」と言うかもしれない。

それに対して私が言いたいのは、「それがバスケットボールだ」という事だ。

ひとりの選手が全てのルールを破ることができる。それがバスケットボールが楽しい理由なんだ。


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