見出し画像

NBAデイリーレポート(12/3, TUE)

12/3のデイリーレポートのメニューです。
・ロケッツのディフェンスについての記事:「ロケットサイエンス」
・サンダーのハーテンスタインの契約と、そのディフェンスのポテンシャルについて


昨日のサンダー対ロケッツ戦は、ウェストの1位と2位の対決だけではなく、NBAのディフェンスの1位(103.6)と2位(104.3)の戦いでもありました。また、イーストでは1位のキャヴァリアーズと2位のセルティクスの試合もあり、同じ日に両カンファレンスのトップチーム同士の対戦が行われたのは、ほぼ5年ぶりの事だったそうです(最低15試合)。試合はロケッツが119-116とサンダーを下し、その差を0.5ゲームと縮めました。

今日はそんなウェストの首位争いをしているサンダーとロケッツのディフェンスにフォーカスを当てた記事を紹介します。この記事を読んでから、NBAトップのロケッツやサンダーのディフェンスだけを見るのもおもしろいかもしれません。

まずはロケッツのディフェンスについて、The Ringerのマイケル・ピナの記事から重要な部分だけ抜き出して紹介します。オリジナル記事全文+それに伴う映像に興味がある方は、下のタイトルのリンクをクリックして翻訳してみてください。

ロケットサイエンス:イーメイ・ウドーカがヒューストンの驚きのスタートの原動力について語る

成功の根本を掘り下げると答えはシンプルだ。規律があり、アナリティクスでもすらばらしく、身の毛がよだつような厳しいディフェンスが、100ポゼッションあたりの失点をリーグでオクラホマシティ・サンダーに次ぐ少なさに抑えている。まだシーズン序盤だが、ヘッドコーチのイーメイ・ウドーカが昨シーズンに蒔いた基盤の種が今まさに花開こうとしているのかもしれない。ヒューストンはエネルギッシュで柔軟だ。ピースはすべて噛み合い、役割は機能していて、スキームには信頼があり、選手たちは容赦なく激しい。

ロケッツのすでに確立されているディフェンダーたちはエクセレントだ。ディロン・ブルックスとフレッド・ヴァンヴリートはトーンを作る要となり、アメン・トンプソンとタリ・イーソンは歯にかけられたゴムバンドのように動き、ジャバリ・スミスJr.は誰にでも守れる。一方で、疑問を持たれていた選手たちでさえもポジティブな貢献をしている。

2024-25シーズンに向けて、リーグ内でもトップクラスのロスターの継続性を持つロケッツは、昨シーズンに大きく改善したディフェンスをさらに向上させることを目指していた。リムプロテクションから3ポイントシュートの抑制から、ピック&ロールの妨害、そしてセカンドチャンスの機会を犠牲にせずにトランジションに戻ることまで、すべての分野を改善したがっていた。そして、ウドーカが求める「ほぼすべてをスイッチする蜘蛛の巣」のようなディフェンスを実現するため、最大の焦点は全ての選手たちがオンボールディフェンスへのプライドをさらに持たせる事だった。

「1対1のディフェンスが良くなければいけない」とウドーカは言った。「コートに立つ5人全員の良さがチームの良さだ。そして弱点がひとつでもあれば、そこを突かれる」この哲学がすべてのベースになっていて、理論上では筋が通っているが、実践するのはとてもきびしい。「戦術的な要素はあまり多くない。意志とやる気が大部分を占めている。でも、過去数年のデータを見せると、選手たちは気づくんだ。本当に負けるのが嫌なら、チームのイメージを変えたいなら、そこから始めるしかないんだ」

自立心なしではこのシステムは共有できない。多くのチームがダブルチームで他が攻められることを心配するが、ロケッツはダブルチームをやりたがっていない。ウドーカは基本的に選手たちに自分自身を救うよう求めている。それは本質的にリスクが高く、精神を疲弊させるものだ。ロケッツは多くの場面でスイッチするが、ミスマッチを信じていない。つまり、ロケッツの選手全員が相手の動作や傾向を完璧に把握している必要がある。これは、瞬時に情報をダウンロードし処理することを繰り返すことを意味し、精神的な負担がとても大きい。ロケッツは若くて未熟な部分もあるが、これまでのところ選手たちはシステムに従い、互いの能力を信頼し合っている。ボールを守り、むずしいショットを撃たせている。

ロケッツのアプローチはチームスポーツの複雑さを排除し、競争を個々の対決の連続に変えている。対戦相手は100ポゼッションあたりわずか20.9アシストしか記録できておらず、これはリーグで圧倒的に最も低い数値だ。さらに重要なのは、このディフェンスがますます多くの3ポイントシュートが飛び交うリーグに理想的だということだ。オフェンスの3ポイント率がリーグ26位であるにもかかわらず、ヒューストンはディフェンスの3ポイント率がリーグ3位のため、対戦相手よりも23本多くの3ポイントを放っている。
「すべてのスキームは基本的に3ポイントを止めることを目的としている」とウドーカは言った。「スイッチして相手の動きを封じ、1対1で勝負させることで、3ポイントの数を減らすことができる」(ウドーカが就任する前、ロケッツはディフェンスの3ポイント率でリーグ最下位だった)

彼のローテーションにいる屈強なディフェンダーたちがそれを可能にしている。身長6フィート6インチのブルックスが、7フィートのカール=アンソニー・タウンズとポストで戦っていても、ロケッツはダブルに行くことを考えすらしない。

ロケッツのコート上でのブレーンパワー、ヴァーサタティリティー、そして何回もエフォートする意思は超デカイ。しかし、ウドーカのスキームは、コート上の全員が「踏ん張れる」タイプでないと、まるでトランプの家のように崩れてしまう。この問題に対して、ロケッツはいくつかの方法で対応している。まず、非伝統的なマッチアップを展開し、ブルックス、イーソン、トンプソン、スミスがそれぞれセンターを相手にスタートし、その後はプライマリー・ボールハンドラーに自由にスイッチできる。この贅沢さが、アルペレン・シェングンがピック&ロールに関わる数を減らしている。その代わりに、彼はオフボールでローミングしたり、リム付近でヘルプする時間を増やしている。彼がコンテストしている時、相手のリム付近でのシュート成功率はわずか54.9%だ。

昨シーズンから今シーズンにかけて、NBAでセンターを守る時間の割合が最も減ったのはシェングンだ。その割合は17.5%も減少している。この傾向はリーグ全体で増加していて、セルティクスのヘッドコーチ時代にウドーカがロバート・ウィリアムズで大きな成果を上げたものと一致している。ロケッツでは、この戦術は双方にとって有益だ。

3ポイントを徹底的に排除しているため、相手のリム付近のシュート数が増えている。しかし、リム付近でのディフェンスでは、相手のシュート成功率はリーグでサンダーに次ぐ低さになっている。ヘルプディフェンダーがあまり動かない頻度を考えると、これは驚くべきことだ。ウドーカは、この数字が持続可能だと考えている。理由として、チームがペリメーターでドライブを許す頻度が少ないこと、フィジカルなプレー、そしてシェングンが新しい役割を受け入れていることを挙げている。(ロケッツはドライブで「blow-by」と記録されるプレーで、1チャンスあたりの失点がリーグ1位で、その頻度が少ないチームは6チームしかいない。また、彼らは相手の2ポイントシュート全体の成功率を通常の平均より5.5%下げていて、これもリーグトップだ)

シェングンが相手のボールスクリーンを受けた場合、ロケッツは彼にアップトゥータッチしてほしがっていて、プルアップ・スリーを阻止しつつ、自分の相手を前に留めることを求めている。ロケッツは彼の後ろでペイント内を固めずに、オープンなキックアウトを許すのを避けたがっている。これは簡単な事ではないが、シェングンは2対2の状況を保つという点で堅実な仕事をしている。

「私たちはドロップやセンターフィールドやビッグが後ろにいるような事はやらない」ウドーカは言った。

ヘルプに関しては、ウドーカは選手たちにペイント内の脅威よりも、ペリメーターでチェックしている相手を優先するよう指示している。2点より3点のほうが重いからだ。「例えばカイリー・アーヴィンを守っているなら、あまりヘルプに行かない方がいい」とウドーカは言う。それでもヘルプがまったくないわけではない。ウドーカはスパーズ時代を振り返り、グレッグ・ポポヴィッチがマヌ・ジノビリに自身のディフェンス本能で自由に動くことを許していたことを思い出す。それによって生じるメリットが最終的にデメリットを上回ることを理解していたからだ。

彼は、時としてディフェンスを失敗したとしても、ディフェンダーに制限をつけたがっていない。

そのフリーダムは、ボールハンドラーが動きの中でどれだけパスを出せるかから、プレーが起きる前にその準備をする事までの多くの要素を解放する。

アルケミーは正しいように思えるし、戦略も理にかなっている。ただし、ロケッツがここまで激しくなれたのは、トンプソンとイーソンの存在があってこそだ。このふたりは相手をただ守るのではなく、相手の魂に呪いをかけ、相手の精神を蝕むようなディフェンスを見せる。このふたりはリーグで最もエンターテイニングなノン・スターとして議論に加わるべき存在だ。健康を維持できれば、ふたりともオールディフェンシブチームの候補にふさわしい。(昨シーズンは合わせて80試合を欠場した。)この「テラー(恐怖)・ツインズ」を含むラインナップは、1ポゼッションあたりわずか99.6点を許していて、少なくとも300分以上一緒にプレーしたデュオの130組の中で2位の数字だ。

トンプソンは今シーズン、ディフェンシブEPMでトップ5に入っている。彼は驚くほど反応が速く、目を瞬きする間に消えるようなスピードを持っている。

そしてイーソンもいる。彼のオフェンシブ・リバウンドに対する執念は、ほぼひとりでロケッツのトランジション・ディフェンスを支えていると言ってもいい。これを口にすると矛盾しているように聞こえるが、彼がセカンドチャンスを作り出そうとする脅威が常にあるため、相手がトランジションを狙うのを防いでいるのだ。「高い頻度でリバウンドを狙うことができ、それがトランジション・ディフェンスの最初のレイヤーになれると感じていた」とウドーカは言った。そしてその通りになっている。ロケッツはオフェンシブ・リバウンド率でリーグ1位、100ポゼッションあたりのファーストブレイク・ポイントではリーグ最低だ。

この点をさらに深掘りしてみよう。Sportradarはプレイヤー・トラッキング・カメラを使って、ハーフコートを超える時にチームが数的優位または劣位に立っているポゼッション数を測定している。その結果、ロケッツは81.7%の時間で数的に均衡しており、これはリーグで2位の数字だ。彼らは全力で走り、圧力をかけ、互いに責任を負う。この結果、ロケッツは相手のシュートを厳しくコンテストする回数でリーグ3位、ディフェンシブ・ローテーションが絡まないプレーでのポイント・パー・チャンスではリーグ1位になっている。彼らはディフェンシブ・リバウンドに優れ、多くのターンオーバーを強いる。

経験の浅いロスターにここまでディフェンスを重視させ、厳しいゲームプランを信じさせるのは途方もない偉業だ。ウドーカはこれをロケッツのアイデンティティにした。彼はロスター全員に定期的に挑戦し、とりわけ相手チームから狙われる傾向にある選手には厳しく接する。

今シーズン、ロケッツには優勝するだけのオフェンス力が足りないが、ディフェンスをベースにしたすべては球団の今後の方向性を強く示唆している。「チャンピオンシップを獲ったチームはどこも、ふつうはディフェンス・ランキングでトップ5に入っている」とウドーカは言った。「これは私にとって譲れない条件だ」


続いてはThe Athleticのアンソニー・スレイターの記事、「Isaiah Hartenstein, a ‘dream big’ for Shai Gilgeous-Alexander, discusses decision to join Thunder」から、サンダーのアイザイア・ハーテンスタイン獲得とそのポテンシャルについてまとめました。

アイザイア・ハーテンスタインは、シャイ・ギルジャス=アレクサンダー(以下SGA)にとって「理想のビッグマン」として注目されていたが、サンダー加入に至るまでの過程には興味深いエピソードがある。

NBAのフリーエージェンシー期間を控えた数日間、ハーテンスタインは家族の事情でテキサスからオレゴンのユージーンへと向かわなければならなかった。祖父母を訪ねるためで、彼に対するフリーエージェントの売り込みは直接会うか、オンラインで行う必要があった。

サンダーのフロントはその状況に即座に対応した。もともとはハーテンスタインの地元のヒューストンに飛ぶ予定だったが、日程を変更し、GMのサム・プレスティ、ヘッドコーチのマーク・デイグノールト、そしてチームの医療部門を率いるドニー・ストラックがユージーンに飛んだ。

「よくあるロサンゼルスの豪華な環境って感じじゃなかったね」とハーテンスタインは言った。「ユージーンのどこかのホテルで会ったけど、その名前すらも覚えてない」

家族の事情を考慮して訪問先を変更したことは、ハーテンスタインにとって大きな意味を持った。「このチームがどれだけ自分を欲しがっているかがよくわかった」と彼は言った。そして、サンダーとしても、それほどまでに重要なターゲットである彼に大きな契約を提示する価値があった。

実際、チームの顔であるSGAもハーテンスタインの獲得に大きな期待を寄せていた。サンダーがキングスに130-109で勝利した後、彼は「シャイにとっての理想のビッグマン」と称賛した。

「サンダーがどんな球団かは遠くから見てなんとなくわかっていた」とハーテンスタイン。「でも、実際に会って彼らがどのように自分を起用したいのか説明を受け、カルチャーを知ることで、とてもワクワクしたよ。若い選手たちが正しいプレーをしていて、ウエストでトップのチームだし、自分が貢献できる部分があると感じたんだ」

ハーテンスタインは3年$87Mの契約を結んだ。この契約は1年目の$30Mから2年目には$28.5Mに減額され、3年目はチームオプション付きとなっている。この柔軟な契約で、ジェイレン・ウィリアムズやチェット・ホルムグレンが大型契約延長を結ぶタイミングで、チームのサラリーキャップに余裕が生まれる。

SGAも彼の状況を遠くから見ていて注目をしていた。「実はプレーオフ中に彼の契約状況も気にしてたんだ」と彼は言った。「ニックスが夏に彼を含めずにいくつかの動きをしているのを見て、ちょっと『ふ~ん』って思っていたんだ」

「フロントオフィスのことは全部サムに任せてる」と、SGAは言った。「彼のことは本当に信頼してるし、まるで心を読んでいるみたいなんだ。だから俺が何も言う必要はなかった。…チームとして、そして世間的にも、去年の私たちには明らかな穴があったことは分かってた。その穴をアイザイアがしっかり埋めてくれると思う。サムは良い仕事をした。私たちはそのおかげで強くなった」

ここでSGAが言っている「穴」はリバウンドです。サンダーは昨シーズン、リバウンド率でワーストチームのひとつで、プレーオフでもその課題が浮き彫りになっていました。サンダーが昨シーズンにディフェンシブ・リバウンド率でリーグトップ10(最低65試合25分以上出場)だったハーテンスタインを狙った理由もそこにあります。

実際に、ハーテンスタインのリバウンド能力はサンダーの期待に沿うもので、加入後最初の2試合で24リバウンドを記録し、サンダーのリバウンド率はリーグ5位の53.8%にアップしました。

サンダーのディフェンスのビジョンはそこで終わりません。サンダーは、ハーテンスタイン獲得時に、彼がセンターとして、ホルムグレンがパワーフォワードとしてプレーできるシステムを提案し、2人のエリート級のリム・プロテクターを同時にコートに立たせる柔軟性を強調したそうです。

それを聞いたハーテンスタインは、自分とホルムグレンがセンターでの出場時間を争うのではなく、互いに補完し合えると考え、「ホルムグレンが4番でプレーできるって知ったことも魅力だった。自分がまったくスタートできないような状況でもないってわかったんだ。私たちならお互いを補完できると感じた…私たちはリーグでもエリート級のリム・プロテクターのふたりだと思う。でもそのアプローチは少し違っていて、彼のほうがブロック数は多くなるだろうし、私は相手のゴール下でのフィールドゴール成功率に影響を与えるタイプだ」と話し、ツインタワーが機能するであろうことを示唆しています。

現在、ハーテンスタインは、そのポストからプレーをつなげる能力やディフェンス力でサンダーのシステムにシームレスにフィットしていて、自身のスキルセットにフィットするサンダーのプレースタイルを気に入っているようで、「彼らは私が好きなプレースタイルでプレーしている。私はみんなのプレーをもっと楽にするためにプレーしている」と言っています。

現在ウェスタンカンファレンスのトップに立つサンダーは、ハーテンスタインを獲得して課題だったリバウンドを解決すると共に、インサイドのディフェンスも強化しています。ホルムグレンが骨盤骨折からいつ復帰できるかは1月中旬以降にならないとわかりませんが、はやくふたりが揃った時のサンダーのディフェンスが見てみたいと思います。

もしサンダーの目論見通り、このふたりがお互いを補完できるようであれば、ラインアップは6'6"のJ-Dubをセンターとして起用するマイクロボール(リーグでもトップクラスのペリメーター・ディフェンダーであるアレックス・カルーソ、ル・ドート、ケイソン・ウォレスが含まれる)から、ハーテンスタインとホルムグレンを並べたツインタワーのビッグラインアップまで幅広い展開が可能になります。そうなれば、サンダーのポストシーズンの可能性はさらに広がりそうです。


いいなと思ったら応援しよう!