見出し画像

【著作権】学校内での「朗読」の放送は、著作権的にOKか?

【1】たくさんある行政書士のお仕事

 行政書士の業務範囲は多岐に渡っています。先日、日本行政書士連合会から「報酬額のアンケート調査」なんて紙が届いたのですが、その紙には実に410種類の業務内容が掲載されておりました。主だったものでもこれだけあるわけですから、大変なもんです。
 当然、全部が全部、当事務所で扱えるわけではなく、実際に当事務所で扱っている分野はその一部であり、さらに得意な分野となるとさらにごく一部となります。

 そんな中で、比較的得意分野とさせて頂いているのが「著作権」分野のお仕事です。どんな業務があるか、なぜ得意なのかはまた次の機会においておくとして、「著作権やって〼(マス)」なんてノレンを下げておりますと、いろいろご相談を受けたりします。そんな最近受けたご相談の中から一つ。


【2】コロナ禍で「朗読会」をどう行うか

 さぁここからが今日の本題です。

 コロナ禍でいろいろな場面において、いろいろな工夫をしてなんとか乗り切ろうとしています。と、ある学校のPTAの皆さんからのご相談です。その学校では毎年、放課後体育館に生徒を集め、父母の方による小説の「読み聞かせ会」を行っているとのことでした。父母の方はもちろん、報酬や日当などは受け取らず完全ボランティアです。しかしこのご時世、生徒を体育館に集めるわけにはいきません。

 そこでPTAの皆さんが考えたのが……
 1)校内放送で朗読を流し、生徒には教室で聞いてもらう。
 2)校内の無線LANを通じて、校内限定で、生徒の持っている「タブレット端末」に朗読の様子を配信し聞いてもらう。

というどちらかの方法でやってみよう! と考えたのです。しかし……そうなると著作権のことが気になります。果たして何か問題は無いのだろうか? と、いうことでご相談を頂きました。

【3】体育館での朗読会

 まず毎年、体育館で行っていた朗読ですが、こちらは「非営利」「無料」で行われ、また翻案・脚色などが行われない限り、著作権者から許諾をもらわなくても、利用することができます。
 著作権法第38条1項では「公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。」とあります。


 朗読は「口述」にあたりますので、この条項の範囲内で行われる限りは、許諾を得ずとも利用することができるわけです。

【4】校内放送での朗読会

 ではコロナ禍でいろいろ考えた利用方法の場合どうでしょうか?
 1)校内放送で朗読を流し、生徒には教室で聞いてもらう。 を考えて見ましょう。

 朗読は「口述」にあたると書きましたが、この「口述」には
「著作物の口述を離れた場所にあるスピーカー等に送信して伝達することも含まれます。」とされています。(文化庁制作「著作権なるほど質問箱https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/naruhodo/outline/4.3.html)

 校内「放送」とありますが、これはいわゆるラジオなどの放送とは異なり、校内で流すことは「離れた場所にあるスピーカー等に送信して伝達」の扱いになりますので、先述の第28条1項がそのまま摘要され、体育館で朗読をするのと同じく、著作権者から許諾を得ずとも利用することができます。

【5】校内配信での朗読会 

 2)校内の無線LANを通じて、生徒の持っている「タブレット端末」に朗読の様子を配信し聞いてもらう。
 こちらはどうでしょうか? まず通常インターネットなどを通じて、配信等を行う行為は「公衆送信」を行うということになります。この「公衆送信」について著作権法第2条1項7号の2では、
「公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。」
 と規定されています。

 条文のなかに「 電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内 にあるものによる送信を除く。」とありますので、学校の中において配信される限りにおいては、著作権法の言う「公衆送信」には当たらないということになります。
 そうしますと、前述の「校内放送で朗読」と同じように、第38条1項が適用されることになりますので、こちらも 著作権者の許諾なく利用することができます。

 
 と、言うことで今回、PTAの皆さんが考えたコロナ禍での代替え案は、普段体育館で行っている朗読会と同じように使うことが出来るということになります。

 ただし録音・録画を行ったり、生徒さんが自宅からでも見られるように配信したりするなど条件がかわってくるとこの限りではありません。
 またこれが、正規の学校の授業の場合には……


 話が長くなるので今日はこの辺で切りましょう。また気がむいたら別の記事で書きます。あー「真田小僧」を講談の下りをやらずに切る感じの中途半端さですが、今日はこのあたりで。


※本記載は実際のご質問とはnote用に一部内容を変えて記載しております。
※本記載は投稿日現在の法律に基づいた記載となっております。また記載には誤り等がないよう細心の注意を払っておりますが、誤植、不正確な内容等により閲覧者等がトラブル、損失、損害を受けた場合でも、執筆者並びに当事務所は一切責任を負いません。

いいなと思ったら応援しよう!