嫌いなものには蓋をして
見ないふりをしても見えないわけじゃない。
ひどい、残酷だ、なんでこういうことをするんだ。
道徳の授業では、そんなことをクラスメイトと共有しあって、駄目だねなんて言う。
そう言いあった夜には美味しい肉を食べる。
残酷に殺された、生きるはずだった動物たちの肉を。
平然とした顔で。あまつさえ美味しいと微笑みながら。
もちろん、その行為自体は否定しようだなんて考えてない。僕にはできない。僕がそうだから。
ベジタリアンは言う。
動物を殺して食べるなんて。
僕は思う。
野菜は殺されていないのかって。
道徳というのは、「人間のわがまま」だ。
美味しい動物を食べるくせに動物を育て出荷し解体している人たちのことを平気で残酷だなんて口にする。
野菜を育て収穫する人を見下しあたかも自分が上のように語る人間もいる。自分で育てたこともないのに。
臭いものには蓋をして。いや、違う。
物事を自分勝手に煙に巻く。
なぁ、そうじゃないか。