わたしのおくすり。つらい時の処方箋。たらればさんの記事を読んで思ったこと
謹直にして篤実、さらに頭脳明晰なおかつユーモアもあるたらればさん。
Twitterにて遠くから勝手に応援させて頂いています。
私は記事タイトルのうち「管理職が苦手なきみ」の側の人間ですが、それは私の職場にいる管理職の人柄から感じるのであって、実際は人間関係の軋轢に悩む、精神的にもきつい職業なのだろうと……想像しています。
大変だなあ……、と記事を読みながら(ごめんなさい)、自分の身につまされる話も多々あり、しみじみと納得する。とても良い文章でした。
最後にたらればさんは、管理職だけでなく「がんばる必要のないところでがんばってしまっている人」へもメッセージを送られていました。
一度誰かにバトンを渡して、ゆっくりお風呂に入って、好きな食べ物を食べて好きなマンガを読んでみる。それで気分がすこしだけ上向いてきたら、そのとき自分に「効いた」食べ物やマンガをトリセツとしてメモっておくと、きっとそれからそれが「命綱」になるんじゃないかなと思います。
おお、「トリセツ」!
自分に「効いた」ものをメモっておくこと!
これらは普段から心がけておくと、実際にしんどくなってしまった時、本当に役立ちます。
それすらできない状態まで陥ってしまった人は、どうにかして病院へ行ってひたすらに休むしかない。
私も今、休んでいる人間なので、この機会に「わたしのおくすり」(私はかつて、体調不良の時に聴く歌を「おくすり」と呼んでいました)を、挙げていきたいと思います。
「わたしのおくすり」は、好きなものというより、しんどい時に少しだけ楽になるようなものです。
だから、好きなものと同じくらい、大切にしています。
食べ物①: にんにくのみそスープ(漫画「みかん絵日記」より)
オレンジ色のしゃべる猫「みかん」が出てくる懐かしの漫画、「みかん絵日記」の文庫版5巻、その「おはなし㊳」に出てくる、おみそ汁です。
みかんの飼い主の吐夢(とむ)が風邪をひいた時、お父さんが作ってくれるのですが、なんとおみそ汁の具は、にんにくをすりおろしたものだけ。
お湯を沸かして味噌を溶いて入れて、すりおろしたにんにく(無精な私はにんにくチューブ)を混ぜてから飲むと、本当にしんみりと美味しいのです。
もちろん普通のおみそ汁に、にんにくを入れるだけでもいいです。
にんにく好きな方は、ぜひ試してみてください。
食べ物②: カルボナーラ
うふふ、二つ書いてしまおう。
かれこれ二十年以上好きな食べ物ですが、加齢によって食べ切ることが困難になってきたものの、変わらず気分が上向くお料理です。
初めて行くレストランで、メニューにあれば必ずカルボナーラを頼みます。
もちろん、味はお店によって様々ですが。
乳化したソースの旨みに和合する、パンチェッタとチーズの絶妙な塩加減!
「炭焼き人風」の名に恥じぬ黒胡椒の存在感!!
カルボナーラは本当に良いものです。しみじみ。
小説: 「デッドエンドの思い出」吉本ばなな
タイトル通りの内容揃いである短編集なのですが、どうしようもなくつらい時に寄り添ってくれる、私にとってとても大切な本です。
私は表題の「デッドエンドの思い出」が一番好きで、そういえばこの物語構成は、以前レビューを書いた映画「はじまりのうた」とも少し似ています。
主人公の「ミミ」は、遠距離恋愛をしていた彼氏に二股をかけられて落ち込んでいました。そんな彼女に、特殊な環境で育った「西山君」が、彼なりの心を込めて、慰めの言葉を掛けます。
「いい環境にいることを、恥じることはないよ。武器にしたほうがいいんだよ。もう持っているものなんだから。君は、帰って、またいつか誰かを好きになって、いい結婚をして、お父さんとお母さんと交流を絶やさず、妹とも仲いいままで、その場所で大きな輪を作っていけばいいんだ。君にはそういう力があるし、それが君の人生なんだから、誰に恥じることもないよ。相手が君の人生からはじき出されたと思えばいい。」
ただその場しのぎで言っているのではなく、ミミのことを思いやって、考えてくれていて、そのことが、読者にも伝わります。
傷ついた人の心に歩みより、やさしくあたためてくれるお話です。
漫画: 「ぼくんち」西原理恵子
あらゆる貧乏を煮つめたような街の外れで、時にはいのちの危険をも伴うことをしながらも、生きるためにあがき続ける、幼い兄弟の話です。
父は不明、母は夜逃げした後に家を売り飛ばし、姉はピンサロで働いているけれど、兄弟にとてもやさしい。
長男の一太、次男の二太、姉のかのこは、この街で、地べたに這いつくばるようにして生きているけれど、笑顔でいることを諦めない。
作品中に漂う奇妙なあかるさに救われ、そしてかなしさに涙する。
読み終わった時に少しだけ微笑むことが出来る、そんな漫画です。
音楽 : カーペンターズ
1970年代において絶大な人気を誇った兄妹デュオ、カーペンターズ。
私の父が好きだったので、私自身、子どもの頃からよく聴いていました。
学生時代、電車の中で生理痛がきついとか、頭痛がするとか、そういった時によくカーペンターズを聴いていました。
カレンの歌声には、心にしみわたるようなやさしさがあります。
飲み物: ほうじ茶
「焙じて飲むのは庶民」なんて言うひとは、今時そんなにいませんかね。
まあ言われたとしても、実際庶民なんだしいいじゃん、と思います。
子どもの頃、茶筒を何度も開けて、香しい匂いを味わっていたものです。
実際に焙じた時の香りはもう、天まで昇る心地です。
香り: オハナ・マハロ「アクア コアナニ」
夏しか売っていないので、まとめて買って大切に使っています。
すきとおる海のような爽快感と、みずみずしく甘い果物の清涼感が混じり合った香水です。
上記リンク先のものは「練り香水」で、口紅のような見た目をしています。
好きな部分に狙って着けることが出来て、香りもそこまで飛び散らない(と思います)ので、愛用しています。
自分の「好きな香り」を手軽に持ち歩いて、好きな時に着けられるのって、実はかなり贅沢なことなのだと、思っています。
花: 金木犀
期間限定なので、常時使える「おくすり」とは言えません。
ですが、この花が咲く季節は、どこからでもこの匂いが漂ってくるので、私はいつも幸せです。
平安末期を生きた歌人である西行法師の、有名な短歌があります。
願わくは 花の下にて 春死なん その如月の望月のころ
西行法師は生涯において桜を愛し、また釈迦の入滅(如月の望月=旧暦の二月十五日)と同じ頃に、この世を去ることを選びました。
釈迦入滅は沙羅双樹の下と言われていますので、この「花(桜)の下」という表現は、西行法師の願いそのものに他なりません。
私もできることなら、金木犀の咲く季節に息を引き取りたい。
金木犀の咲く間ってあまりにも短いので、難しいかもしれないけれど。
私にとっては幸福と死を思わせる、そんな花です。
さてさて、けっこう語ってしまいました。
「好きなもの」とはすこし違う「わたしのおくすり」について、改めて考えてみると、私にとっては「しずかに寄り添ってくれる」ものですね。
もちろん、人によってそれぞれだと思います。
あなたの「おくすり」は、どんなものでしょうか。
もし宜しければ、ちょっとお知らせ頂きたいです。
そこまでいかずとも、どんなものが自分にとっての「おくすり」か、考えてみるのも楽しいものです。
やさしい記事を書いてくださったたらればさん、ありがとうございました。