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お空の上の物語 第2部「COSMOS」#2
ピッチの仕事
「今日もエメラルド銀河は美しいな。」
ピッチはエメラルド銀河を見ながらつぶやきました。ピッチの一番好きなことは、宇宙を穏やかに眺めることです。宇宙の星々を見ていると、自分は宇宙に輝く星のどれかだったのではないか?と思うことがよくあります。星だった時の自分はきっと大きな光そのものだった。その大きな光にいつか戻りたい。そう考えながら、自分の星を探すのが大好きでした。
COSMOSの双子の王子のピッチはとても穏やかな性格です。ピッチは白銀の光を内面から輝かせています。生まれた時から、すでに暗闇でも自ら光を放っていました。ピットが黄金の光で人々を愛の光で包むのならば、ピットの光はCOSMOSの人々の内面の光に灯をともす役割をしています。
COSMOSの人々の中には、自分の楽しみを見つけるまで時間がかかる人もいます。ピッチはそういう人の話をよく聞いてあげることができました。ピッチと話ができた人は、みな不思議とワクワクすることや楽しみを見つけ心の灯がともりはじめるのです。
それは、ピッチが喋る言葉の響きに秘密がありました。ピッチの声は人々を穏やかな気持ちにさせる魔法のような響きを持っています。ピッチの口から発せられる言葉ひとつひとつに愛が宿っていると言えばよいのでしょうか……。
その愛は話した人の心に響きわたると、いつのまにか心を乱していた不協和音がなくなり体全体が愛で調和され満たされるのです。COSMOSの人々はピッチと話すと、「全てはみな一つワンネスだ。」と思うようになり心が満たされます。「自分はひとりではないみんながいる」まるで体に羽が生えたように心が軽くなるのです。
そうやってピッチは、COSMOSの悩める人々に心の灯をともす手伝いをしてきました。
ピットの仕事
エメラルド銀河の調査はピットがいつも担当します。ピットの黄金の光は、グレートセントラルサンの光を強く浴びることで愛のパワーが増します。エメラルド銀河の調査に行くたびに、光がパワーアップして、COSMOSの人々に愛を与えることに役立てていました。
COSMOSの人々は輝くオーラのような光で包まれています。安定していれば、いつも虹のように輝いています。
しかし、楽しみよりも不安や悲しみが強くなるとその光の色が濁りはじめます。そんな時はゆっくりグレートセントラルサンの光を浴びてお昼寝をすればたいていはもとに戻るのですが、十分に愛の光を補充しなければ、急に怒り出したり、攻撃的になったりします。
最近、COSMOSの人々の光の濁りがなかなかもとに戻らない人々が増えました。そういう時、ピットが愛のハグをすればあっという間にもと通りになりました。だから、ピッとは忙しい毎日を送っていました。
COSMOSの王様と王妃様
エメラルド銀河への調査へ行く日が近づいてきたある日、COSMOSの王様に呼ばれたシュバルツは、王広間の大きなドアをノックしました。
「失礼します。王様。宇宙大臣のシュバルツです。」
「入りなさい。」
いつものように、王様の低くゆったりした声が聞こえました。シュバルツが王広間にはいると、王様と王妃様が並んで微笑みながらシュバルツを迎えてくれました。王様の光はとてつもなく大きい光です。王広間全体を輝かせ周りにいる人の光が何色かがわからなくなってしまうくらい、強く輝いています。王様がきっとお城の外へ出たならばグレートセントラルサンの光は必要ないのではないだろうか?とシュバルツはいつも思います。
「シュバルツ。いつもピットとピッチがお世話になっているわね。ありがとう。」
隣に座っていた美しい紫色とマゼンタ色の光を放つ王妃様がシュバルツに声をかけました。王妃様の声も王様の声と同じような響きを持っています。王妃様の美しい光は内面から湧き出ています。その光を見ただけで、人々は本来の光の色の強さが増すのです。王様は王妃様と一緒にいることで、王様の本来の光が強まっているのです。お二人はそうやってCOSMOSの人々をお城から見守っていました。
「シュバルツ。最近のCOSMOSの人々はどんな様子かな?」
王様がシュバルツに尋ねました。
「はい。ピッチ様の働きのおかげで、みな自分のワクワクすることを見つけ楽しんで創作活動をしております。ですので、COSMOS星の新しいステージを迎える準備が整いました。」
「それは、よい報告だ。やっと星全体のステージアップを迎えるのじゃな。だから、ピットは毎日大変なのじゃな。ピットの愛の光のパワーはどうじゃ?」
王様は、全てを理解してシュバルツに尋ねました。
「はい。大丈夫です。ピット様のパワー不足を私も心配しておりましたが、光をとり戻した人々に笑顔でお礼を言われるたびに、ピット様の愛の光のパワーはさらに強くなっております。ピット様は、今までになく一番愛の光で輝いております。」
「そうか、そうか。ピットも王になる準備ができてきたのじゃな。よっかた。よかった。」
王様の笑顔と対照的に王妃様は悲しげな表情で王様に尋ねました。
「では、王様。ピッチの役目が来たということでしょうか?」
王様は王妃の心配を拭い去るようように、暖かい光で王妃様を抱き寄せ優しくささやきました。
「大丈夫じゃよ。ピッチは理解してくれる。いや、きっとそれをすでに望んでいるのではないだろうか?きっとあの子なら……。」
「そうですね。あの子なら大丈夫。私たちの子どもですもの。」
王様の光に包まれた王妃様元の笑顔にもどり、優しく二人で微笑み合いました。
「シュバルツ。二人を呼んできてくれないかい。大事な話をする時がきたようじゃ。」
「はいかしこまりました。」
ピッチの船出
「失礼します。ピット様とピッチ様をお連れしました。」
シュバルツに呼びだされた2人の王子が王広間に入ると、いつものように穏やかで優しい王様と王妃様が笑顔で待っていました。ピットとピッチは二人に近寄り挨拶のハグをしました。
COSMOSの人は心で会話をすることができます。多くの人は会話をすることが大好きなので、心で会話をする時は遠い場所にいる人しかその能力を使いません。また、お互いをもっと理解したい時はハグをします。ハグをすることで、ピットのようにエネルギーが強い場合は弱い人にエネルギーを分け与えることができます。お互いが元気な時はお互いのエネルギーが混ざり合い、知識や情報を共有できるので叡智が増えます。
ハグをした王様たちは、ピットとピッチが有意義な毎日を過ごしていることをすぐ理解し安心しました。二人ともとてもベストな状態です。
「COSMOSの人々のためにいつもありがとう。」
王様は2人にお礼を言いました。ピットとピッチはちょっとはにかんで笑いました。シュバルツはそんな笑顔の王子たちを愛おしそうに見守っていました。
「今日2人を呼んだのは大切な話をしなければならないからだ。最近ピットが忙しいのは、ピッチのおかげでCOSMOSの人々の心の灯がみなともったからだ。ついたばかりの灯は、まだ弱弱しく風が吹いたらすぐ消えてしまいそうになる。自分の好きなことをすることは楽しいことばかりじゃないからな。選んだ道が本当に正しいかどうか自信がなくなる時もある。その時必要なのがピットの愛の光だ。」
そう言った王様はピットを見て話を続けました。
「愛の光は自分を愛すること、大切にすることを思い出させてくれる。そして、自分が本当にしたいことを教えてくれるのだ。その愛の光を必要としているCOSMOSの人々のためにピットこれからもよろしく頼む。もっともっとこれからは忙しくなることだろう。」
「はい。わかっています王様。みんなの笑顔で僕も元気をもらっています。これからもCOSMOSの人々の力になれるよう最善をつくします。」
ピットは答えました。王様はピットの言葉を聞き満足げに頷くと、今度はピッチを見て話し始めました。
「ピッチ。ここまでCOSMOSの人々の心の灯をともす仕事は大変だったろう。本当によく力を尽くしてくれた。ありがとう。COSMOSが新しいステージへ行くことができたのはピッチのおかげだ。」
「ありがとうございます。僕も嬉しいです。人々が心から自分のやりたいことを見つけ、楽しんでいる姿を見られることは僕の幸せの一つですから。」
そうピッチが言うと、王様は王妃様に目で合図をしました。そして、
「新しい仕事をピッチにお願いしたいと思っているのだが。」
そう言いました。
「新しい仕事?ですか…。」
「そうだ。実はピットの代わりにエメラルド銀河の調査に行ってもらいたいのだが。」
「ぼくがエメラルド銀河へ……!」
ピッチは自分の心が今まで一番びっくりしているのがわかりました。生まれてからずっと宇宙を旅する役目はピット。そう思って育ちました。宇宙に輝く星を見上げてはずっと自分の星を探し続けていたピッチにとって、王様の言葉は、今まで見たどんな流れ星よりも衝撃的で美しい響きでした。
「やっと自分の星を見つけることができる」ピッチの頭の中に一番最初に浮かんだ言葉です。ピッチは体全身が喜びで震えているのがわかりました。嬉しさのあまり言葉が出てきません。
何も言わず黙り込んでいるピッチを見て心配したピットは、
「ピッチ。僕の代わりに本当に申し訳ない。大丈夫宇宙は怖くないよ。調査隊の仲間は何回も宇宙へ行っているエキスパートだから安心して。」
そう言ってピッチを励ましました。その声でピッチはハッと我に返り、やっと我に返りました。そして笑顔でピットに言いました。
「ありがとうピット。僕は嬉しいんだよ!」
そう言うと王様と王妃様に感謝の気持ちをこめてこたえました。
「王様、ありがとうございます。喜んでエメラルド銀河へ行かせていただきます。僕はずっと宇宙へ行きたかったのです。いつか宇宙へ旅立つ日を夢にみてきました。こんなにはやく夢が叶うなんて。本当に感謝いたします。」
そういって深々とお辞儀をしました。
「そうか。そうか。ピッチの夢だったのじゃな。よろしく頼むよ。」
そう言って王妃様と微笑みあいました。
旅立ちの前に
話が終わったピットとピッチは、2人に挨拶をすると王広間を後にしました。そして、長い螺旋階段をのぼり、天空の間へむかいました。
天空の間は、360度大きなガラス窓のある部屋です。お城で一番高い場所にあり、COSMOSの国を一望することができます。
すでにグレートセントラルサンが沈みはじめ、夜空に星が1つ2つ姿を現しはじめた頃でした。
「ピッチ。宇宙へ行きたかったなんて、初めて聞いたぞ。」
そう言うとピットは、ピッチの肩に手をまわし、ピッチの頭をグチャグチャにしました。遠くからみたら黄金と青白い光が揺らいでいるようにしか見えないかもしれませんが、COSMOSの人々は光輝くオーラの中に人間の体と同じ体があるのです。普段は光輝いているためその体を見ることはできませんが、人間のようにスキンシップはできるのです。オーラは光なのでお互いの光が重なっても何も問題はありません。
「ごめん。だってピットの仕事だと思っていたから。ずっと胸に秘めていたんだ。」
「でも良かったよ。僕はCOSMOSがこんな状態で調査にいくなんて絶対無理だと思っていたから。ピッチが僕の代わりなら本当に安心。だって、ピッチの方が実は宇宙のことは僕よりずっと詳しいし、宇宙船の扱いだって完璧だからね!」
「ありがとうピット。遊びじゃないとわかっているけど、ワクワクして仕方がないんだ。楽しんでくるよ。」
「うん。そうだな、毎日を楽しむことがCOSMOS人のサダメさ。」
そう言って2人は、宇宙にのみこまれるCOSMOSを静かに眺めていました。こうして、数日後ピッチは元気にエメラルド銀河へ旅立ったのでした。
つづく