「東洋の竜と西洋のドラゴンの美術史における文化比較論」の結論としては、「東洋の竜と西洋のドラゴンは、一見似てはいるが、文化的には全く別のものである」The Way of the DRAGONS東の“竜”と西の“ドラゴン”の深くて暗い淵
ドラゴンはなぜ“ラスボス”になったのか、進化の歴史をひもとく
古代ギリシャから現代まで、時代とともに変わった竜のイメージ
2024.12.30
文=Nadia Mariana Consiglieri/訳=荒井ハンナ
日本の神話に関連付ければ、やはり、スサノヲのミコトが退治したとされる、ヤマタノヲロチ伝承ですね。
八岐大蛇は『日本書紀』での表記。
『古事記』では八俣遠呂智と表記している。
「高志之八俣遠呂智、年毎に来たり(古事記)」がみえ、古代日本の地方である高志(こし)から来たとされる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%82%BF%E3%83%8E%E3%82%AA%E3%83%AD%E3%83%81
ただし、『古事記』では、「コシノヤマタノヲロチ」と、出自が、万葉仮名の高志=コシ=北陸の越のクニ、(または、中国の越のクニ)であることが示され、
八つのアタマ=カシラ=リーダーに率いられた部族が、イヅモ地方を制圧して、そのイヅモのクニのリーダーであるオキナに、人身御供として、毎年自身のヒメを差し出せと命令していたようです。
実際のところ、この時代に、北陸の豪族の墓=四隅突出型墳丘墓(よすみとっしゅつがたふんきゅうぼ)と呼ばれる墳丘墓が造成され、それは、山陰と北陸の両方に見られる形式で、弥生時代のもの。
前方後円墳が全国に拡がる前の時代でした。
そして、ある研究者のフィールドワークによると、四隅の突出の先には人骨が埋められていて、まるで殉葬のようであったが、それが見られるのは、出雲側だけであったという研究がなされています。
これは、ある時期において、出雲側が北陸=越のクニの支配を受けていた時期があったことを示しているのではないかという見解が述べられていました。
そのことを知った、“天孫降臨”(私見ですが、朝鮮半島を長年支配していた孫氏が三國志時代に魏に滅ぼされ、その残党が日本の宮崎県の高天原に逃亡して上陸した)後に、当時の日本を支配したアマテラスから、権力闘争の末に、イヅモに追い払われた同族(弟?)のスサノヲが、
私がヒメの命を救い、ヤマタノヲロチを退治=饗応の席で酒を飲ませてから騙し討ちにより首を刎ねるという、ヤマト王権のいつものやり方、後年、アテルイの反乱を鎮圧したのと同じ戦術を提案して、晴れてヲロチ退治に成功し、
最終的には、クシイナダヒメ(スサノヲがヒメを櫛=クシに変身させてヲロチョン族からの監視の目を潜る作戦+稲田姫)を自身が娶り、
遂に闘争に勝利して、めでたくイヅモの王に収まり、「八重垣の〜」で知られる、日本初の和歌を詠んだ後にイヅモの王国が誕生して、
やがて、子孫と伝えられるオオクニの時代まで繁栄したが、その後はヤマト王権の圧力に負けて統合されてしまった(ただし、王国の遺産として、イヅモの社を敬えと遺言を遺す)話となった訳ですね。
なお、ヤマタノヲロチの伝承は、古事記や日本書紀では語られますが、出雲風土記などのイヅモ側の伝承では語られないということは、ある意味、ヤマト王権側に都合の良い話であることが示唆されていますね。
***
いつの間にか、ブルース・リーのトップファンになってしまった件
https://www.facebook.com/BruceLee/videos/826512281902496/
2000年代初頭は、まだブログもSNSもなかったので、ウェブサイトで、中日ドラゴンズ関連の投稿記事を掲載していました。
Niftyで開設していたブログページ『竜之独白』は、はもう見れないのですが、ホームページの方は完全に残ってることに気づきました。
この記事の中で、ブルース・リーの『ドラゴンへの道』をモチーフにした記事をアップしており、これが、ネットでブルース・リーについて言及した最初の記事だと思います。
タイムリーコラム
星之★戦争 "STAR'S WARS"
エピソード7
The Way of the DRAGONS
東の“竜”と西の“ドラゴン”の深くて暗い淵
――フロリダのカントリーボーイはなぜ太平洋を渡らなかったか――
【長文注意】ですが、この頃は、こんな感じの投稿が一般的でしたね。
タイムリーコラム
星之★戦争 "STAR'S WARS"
エピソード7
The Way of the DRAGONS
東の“竜”と西の“ドラゴン”の深くて暗い淵
――フロリダのカントリーボーイはなぜ太平洋を渡らなかったか――
管理人より:ケビン・ミラーについて見てきたようなことを言っている部分は、もちろん偽南渕の妄想ですよ。
【『ミスターベースボール』の功罪】
2002年の暮れ、フロリダの自宅で、愛妻のジーナと、これから自分が活躍の場を求めて旅立つ日本について、少しでも勉強しようと思った研究熱心なケビン・ミラーは、まずは映像で日本を知るのが一番と、『ミスターベースボール“Mr. Baseball” 』なるアメリカ映画をビデオで取り寄せて見ることにした。
トム・セレックという、お世辞にもあまり知名度が高いとはいえないアメリカ人俳優が主役を務めたこの映画は、1990年代の初めに製作されたアメリカの野球映画で、メジャーリーガーに扮したトムが、選手生活の後半に力の衰えを感じ始めたところに、思いもかけなかった日本球団への移籍話が舞い込み、心ならずも海を渡って日本にやってきて、日本の野球とアメリカのベースボールとのあまりの違いに最初はとまどうが、最後は彼なりに日本野球を“消化”し、優勝に貢献し、その後、アメリカに戻ってあるマイナー球団の指導者となっていたというオチでエンディングを迎えるというストーリーであった。
この映画では、そのメジャーリーガーが入団する球団が中日ドラゴンズであり、この映画自体、ドラゴンズも全面的に撮影に協力したようで、ミラーにとっては、日本野球と、これから自分が出稼ぎに行く球団を勉強するのにうってつけの教材といえた。
さて、ビデオを見終わったミラーは、まずは妻のジーナとお互いの顔を見合わせて、感想を言い合うことにした。見ると、彼女はちょっとショックを受けているようであり、自分も最初に感じたのは、ある種の“違和感”であった。と同時に、そこから急に不安感が広がり始めたのだ。
「本当にオレの選択は正しかったのか…」
さて、ベースボール発祥の地であり、ベースボールが国技でもあるアメリカ人にとって、日本の球団というものが、彼らにとってどのような印象を持つものであろうかということをちょっと考えてみたい。
まず、最初に耳にするのが球団名である。
我が中日ドラゴンズというのは、アメリカ人にとってどのように感じられるのであろうか。
まずは“CHU-NICHI”という名称であるが、日本人には、親会社の「中日新聞社」のことであり、「中部日本」の略称だということがわかっていても、アメリカ人にとってはなんのことかわからないはずだから、そのまま頭の中を素通りしてしまい、次に続く「ドラゴンズ“Dragons”」にすぐに関心が移ることになる。
実は、ここがアメリカ人にとって大きな“違和感”を感じる点なのである。
「ボク、今度日本でプレーすることになったんだよ。ドラゴンズっていう球団名なんだ」
「Oh! What? Dragons? Unbelievable!」
最初は、自分の来年の進路について友人や知人に無邪気にしゃべっていたミラーだが、どうも、相手の反応がイマイチなのである。これはどうしたことか…。
【悪魔の球団、ドラゴンズ?】
中日ドラゴンズのドラゴンズという愛称の由来は、球団創設時のオーナーが辰年(いわゆる干支の“竜”)であったことにちなんだもので、竜というのは、中国や韓国、日本では神の使いでもあり、強そうな名前でもあるので、それの英語版に当たるのはドラゴンというわけで、この球団名にしたというように、記憶している。
日本のプロ野球創設時にあった球団としては、読売巨人軍がジャイアンツ、猛虎軍がタイガースという愛称であったが、これらの球団は、既にアメリカにあった球団のニックネームであるジャイアンツとタイガースを流用しているのに対して、中日は、ドラゴンズという、アメリカではほとんど使用されない名称を使用するという“独自路線”によって、球団の歴史を歩むことを選択したのであった。
それでは、なぜ、アメリカでは“Dragons”という名称のチームが、野球はおろか、アメフトやバスケット、アイスホッケーなどの人気スポーツの球団名に使われないのであろうか。
ここで、私事で恐縮であるが、あるエピソードを紹介しよう。
それは、このサイト「竜之巣」でのお遊び企画<MOEDORA 2001:English ver.1.01>の作成過程でのある“再発見”であった。
http://tamagawa.my.coocan.jp/dra/nest/others_song5.htm
MOEDORA 2001:English ver.1.01
※よいこの中高生は、けっして米国人の前で歌わないでね。
2001年のある日、ペナントレースではるか後方に追いやられたドラゴンズに対する憂さ晴らしも兼ねてカラオケに出掛け、なかばヤケクソで、かの山本正之先生作詞作曲の「燃えよドラゴンズ」をカラオケで歌っている際に、ちょっとした思いつきで英語バージョンを歌ってみたのがきっかけで、少しホンモノっぽく和文英訳して作ってみたのだが、その歌い始めはこのように作ってみた。
So far away from the dark sky,we're gonna listen to a dragon's shout.
実はこの英語版の歌詞は、EXCITEというポータルサイトの「無料翻訳サービス」を活用しながら、偽ネイティブ・スピーカーによる“監修”を加えて完成させたものなのだが、ここでさらに悪乗りして、これをさらにEXCITEで再度英文和訳させたらどうなるかを“機械翻訳”させてみたのが、次の一節である。
暗い空から非常に遠く離れています。私たちはgonnaです、悪魔の叫びを聞きます。
「なに、この訳は? 『私たちはgonnaです』というのは機械翻訳のご愛嬌としても、なんだ、この“悪魔の叫び”というのは?」
そのとき、はっと、遥か昔の学生時代に受けたある講義の記憶が蘇ってきたのだ。
私の出身校である、東都大学野球リーグにも所属する某N大学は、マンモス校としても有名で、学部間交流講義なるものが存在しており、関連学部である芸術学部の教授がうちのキャンパスに出向いて、教養課程的な講義をしてくれるというのがあり、たまたま私も、興味本位でその講義を受けることにしたのだった。
芸術学部の教授で、元々はカメラマンでもあり、最近は“セクハラ大魔王”とまで揶揄されているS.K.と同級生だった(ちなみに、S氏は学生当時から、建物や静物を撮るのはからっきしダメだったが、女性を撮るのはものすごく上手だったそうである)その先生の講義のテーマは「東洋の竜と西洋のドラゴンの美術史における文化比較論」であった。
その講義では、さまざまな文献や写真、絵画などを検証した後、結論としては、「東洋の竜と西洋のドラゴンは、一見似てはいるが、文化的には全く別のものである」ということであった。
そして、東洋の竜は、中国や韓国、そして日本でも神の使いや竜神様などとして崇め奉られているが、西洋のドラゴンは、【遥か古代は別として、キリスト教の影響が色濃く反映されてきた中世からは、悪魔の使いとして捉えられており、特に、竜退治の専門家として名高い大天使(「大天使」というのは、天使の階級の1つだそうである)ミカエル“Michael”に槍で突き殺される宗教絵画が多数見られるのが象徴的な、悪の権現としてのイメージが強いのである。】
そういえば、ごく最近の、アンソニー・ホプキンス扮する異常な犯罪者を描いた映画のタイトルが“Red Dragon”であるし、ショーン・コネリーが老いたドラゴンを演じた“Dragon Heart”でも、あくまでドラゴンは、退治されるべき罪深き存在であり、東洋的なイメージでドラゴンを勇者の象徴として使うことはあっても、西洋的キリスト教の世界観にあっては、ドラゴンはむしろ悪の権現、罪の象徴として描かれていることのほうがはるかに多いのである。
【あの「ドラゴン」が悪役にかけた情け】
これでは、「日本のドラゴンズという球団に行きます」と、友人や知人に胸を張って言ったとしても、「東洋ではドラゴンは神の使いである」というある程度の知識をもった連中にでも出会わない限り、そのこと自体は、ミラー夫妻にとってはけっして喜ばしいことではなかったに違いない。
それに加えて、夫妻が見た“Mr. Baseball”の内容である。
主人公の元メジャーリーガーは、日本のナゴヤというところに着くと、まず日本の生活習慣の違いに驚き、さらに“Ya-kyu”なる、ルールは一見ベースボールに似ているが、彼らの目から見れば全く別のスポーツとしか思えない競技(この点については、1990年代の半ばに、年俸をめぐる、球界オーナーと選手間のストライキの影響で、現役バリバリの大物メジャーリーガーとして初めて来日し、ヤクルトスワローズで1年間プレーしたジャック・ホーナーの『地球の裏側にもうひとつの野球があった』に詳しいが、研究熱心なミラーのこと、その本も英語版を買って読んだことだろう)に戸惑い、そうでありながらも、日本のせっかちなファンは、自分たちを「助っ人」と呼んで、神のように崇め奉ったかと思えば、成績が落ちると、今度は鬼“demon”のように批判にさらされるということを知る。
さらに、この映画では、主人公に通訳兼身の回りの世話役として、ナゴヤでデザイナーとして活躍するキャリアウーマン風の女性が球団から“あてがわれる”(その後、この女性が監督の娘であるというオチが付く)のだが、その女性が、最初は主人公に反発しながらも、なぜか主人公と一緒に風呂に入って背中を流したり、献身的に尽くしていくうちにやがてお互いの間に恋愛感情が芽生え、そのうち主人公も、日本野球への対応法を会得し、遂にはその年のペナントレースを勝ち抜き、彼自身もその優勝に貢献するという、まあ、よくできたハッピーエンドのストーリーであった。
だが、この映画を見終わったミラー夫妻は、きっと暗たんたる思いであったのではないかと想像する。
まずは、日本に単身赴任するミラーに、そんな“ナゴヤ妻”みたいな女性があてがわれたのでは、夫人としてはたまったものじゃない。
それに、なんかチームも非常に野蛮な雰囲気を漂わせている。
本来、ベースボールチームの監督は、“manager”という名称が使われるはずなのに、この映画では、日本の球団の監督に対する呼び名は、“chief”という言葉が使われていた。
これは、主に白人がネイティブ・アメリカン(昔は、アメリカ・インディアン=アメリカに居るインド人と呼ばれていた人たち)の酋長に対して使う呼び名であり、まさに、日本野球の監督は、酋長のようなものであるという意味も込められていたのである。
ただ、この映画のエンディングでは、日本野球の“良さ”も学んだ主人公が、その後アメリカに戻って、マイナー球団とはいえ、指導者として活躍し、晴れてくだんの“日本人妻”とパートナー契約を結び、愛情を込めて彼女に“chief”と呼ばれているという、誠に“八方美人(ミラー的?)”の結末で終わったのだが、こんな映画を、なんの予備知識もないミラー夫妻が見たとしたら、安堵感を感じるどころか、不安感のほうが先立つのはやむを得ないところであろう。
そこに持ってきて、ボストンという、アメリカで最も歴史の古い町、日本でいえば、古都京都とでもいうべき、“アメリカ人、特にアングロ・サクソンの心の故郷”の、これまた由緒のあるレッド・ソックスという老舗球団から、「日本より安月給ではあるが、キミを必要としている。一緒に打倒巨人じゃなかった、打倒ヤンキースを目指さないか?」とのありがたい、レッド・ソックスのオーナー直々の言葉をもらえば、フロリダに住む、純朴な青年であるミラーが舞い上がってしまったとしても、致し方はなかったのかもしれない。
以上の状況を察するに、ミラーが、広い太平洋を自由自在に行き来するマーリン(通称カジキマグロと呼ばれる、魚の王様)のような行動をとれなかったのは想像に難くないが、では、ドラゴンという、西洋人にとって抵抗感のあるニックネームを背負ってしまった中日ドラゴンズという球団は、どのような道を歩くべきなのであろうか。
確かに、中日ドラゴンズは、球団創設時に、西洋文化圏、特にキリスト教文化圏からは違和感をもって迎えられる宿命を負った球団なのである。
もちろん、現在、中日ドラゴンズに所属してくれているアメリカ人の多く、そして過去に多大な貢献をしてくれたアメリカ出身選手の多くは、きっと、Dragonsというニックネームに少々抵抗感を感じながらも、さまざまな思いでそれを乗り越えて、チームの一員として溶け込もうとしてくれたのだと思っている。
一方、元来、竜を神の使いや竜神として崇拝する東洋では、韓国や台湾のプロ球団にドラゴンズの愛称を使った球団が存在することでわかるように、東洋での野球先進国(最近はちょっとこの地位も危なくなってきたが)の1球団である日本のドラゴンズは、それなりに憧れの対象としての地位は保っているようである。
その昔、香港出身のカンフー・スター、ブルース・リー(香港名、李小龍)は、事実上の遺作となった『燃えよドラゴン“Enter the Dragon(ドラゴン、登場! の意)”』で、長い下積みの道程の末にハリウッド・メジャー・デビューを果たすが、
その数本前の、香港資本なりに西洋への進出を目指した映画に『ドラゴンへの道“The Way of the Dragon”』というのがあった。
この映画は、ブルース・リー扮する主人公が、香港からイタリアのローマに中華料理店を出店した仲間を助けるために、悪役のライバル店の中国人が雇った白人のカラテマン(その役は、当時は無名であった、後の“炎のテキサス・レインジャー”チャック・ノリスが演じたが)と、単身、古代ローマの闘技場であるコロシアムに出向いて、苦闘の末にそのカラテマンを倒すのだが、
悪役とはいえ、格闘家としては卓越した技を持っていた彼に敬意を表して、李小龍は彼の遺骸に格闘ジャケットをかぶせて合掌し、静かにその場を立ち去るシーンがとても印象深いものとなっていた。
今回の“ミラー騒動”で、中日球団が、香港からハリウッド進出を目指した李小龍が“The Way of the Dragon”で見せた、悪役のカラテマンに対する“武士の情け”のような態度を、今回のトラブルの“悪役”であるケビン・ミラーに示すことができたのなら、東と西を隔てる溝を、ほんの少しではあるが、埋めることができるかも知れないのである。
“The Way of the Dragons”は、これから中日ドラゴンズが歩むべき道ではないだろうか。
***
★TRIVIAL PURSUIT★
偽南渕の“TORU-TARA”コラム
日本の球団名、よもやま話
2003/2/2
さて、本編では中日ドラゴンズという球団名に対して、西洋人、特にアメリカ人が感じてしまう印象について取り上げてみたが、日本の他球団に対しては、彼らはどんな印象を持つのであろうか。ちょっと考察してみたい。
■セントラル・リーグ
まず、昨年のセリーグの順位ごとに球団名を見ていこう。
読売ジャイアンツ
読売ジャイアンツは、サンフランシスコ・ジャイアンツというメジャー球団名があるので、アメリカ人にとっては安心できるネーミングであるが、逆にいえばあまり面白味のない名称ということになる。
なお、とにかく無難路線を歩むことで、一応の地元である東京だけでなく、「日本テレビ放送網」のネットワークを駆使して、プロ野球球団不毛の地に「巨人戦テレビ中継菌感染型巨人ファン」を増殖させていたジャイアンツであるが、2002年シーズン開幕前に、突如“通称”の球団名であった「“東京”読売ジャイアンツ」の「東京」という“愛称”をはずした上に、ユニフォームの背中をYOMIURIとして、読売色を前面に押し出してきたことは、結果的にこの球団の本性をさらすことになって、むしろ喜ばしいことであると、個人的には思っている。
ヤクルトスワローズ
第2位に終わったヤクルトスワローズであるが、これは、球団創設時の親会社であった、国鉄(現在のJRグループの前身)の当時の花形列車(現在でいえば、「のぞみ」に当たる)であった「特急つばめ」にちなんで付けられた名称であった。この名称は、アメリカ人にとってどのように感じられるのであろうか。
ツバメはすばやく飛び回る鳥であるとともに、“One swallow does not make a summer.”ということわざがあるそうで、「 ツバメが 1 羽来ただけで夏にはならない(早合点は禁物である)」という意味から考えるに、夏を告げる鳥としてありがたがられている反面、どこか軽薄で尻が軽い鳥という印象があるようである。
また、“swallow-tailed coat”は 燕尾服のことでもあり、シャレ者という雰囲気も漂わせている。
そういえば、現在のスワローズの選手たちは、都会的で尻が…。
広島東洋カープ
さて、3位のドラゴンズに続いて4位に終わった広島東洋カープであるが、この球団は、珍しく地名についてもインパクトがある球団である。
そう、HIROSHIMAというのは、やはりアメリカ人にとっては、どこか罪悪感を覚えさせる地名であり、この球団に入団するアメリカ人には、敬虔なクリスチャンも多い。
ただし、日本の鯉には、「鯉の滝登り」の勇壮なイメージや、広島の名産である「錦鯉」に象徴されるような優雅な印象があるところから、この名称が付けられたものと思われるが、残念ながら、carpという魚は、「欧米では泥の中にすむ汚い魚。食用にもされるが、あまり上等な魚ではないとされる」というもので、ある意味、中日ドラゴンズに対してアメリカ人が抱くのと双璧な、悪いイメージを持っているようである。
そのためであろうか、HIROSHIMA CARPにやって来るアメリカ人は、先ほど述べた、敬虔なクリスチャンか、ハングリー精神旺盛な、ちょっと泥臭い選手が多い。
阪神タイガース
一方、5位に終わった阪神タイガースは、メジャー球団にデトロイト・タイガースという球団があるので、アメリカ人にとっては何の違和感もなさそうであるが、メジャーでのタイガースは、残念ながらほとんど優勝に縁がないようで、日本のタイガースにやって来るアメリカ人は、ちょっと都落ちした感傷に浸っていることであろう。
横浜ベイスターズ
昨年、最下位となった、横浜ベイスターズについては、YOKOHAMAという地名は、アメリカ人にとってもかなり馴染みのある港町の名前を冠している点はポイントが高い。ただし、baystars(港湾星?)というのは、完全に和製英語なので、球団マスコットのホッシー君を見ても、それが日本人にはヒトデに見えることさえも、彼らは気づかないことであろう。
■パシフィック・リーグ
それでは、さらにパリーグに目を転じてみよう。
西武ライオンズ
昨年のパリーグの覇者、西武ライオンズについては、アメリカではアメフトのNFLのチーム、デトロイト・ライオンズがあり、数年前にスーパー・ボウルにも出場した、近年の強豪でもあるので、アメリカ人にとっては好印象を持って迎えられるであろう。
大阪近鉄バファローズ
2位となった大阪近鉄バファローズはどうであろうか。
buffaloという言葉は、元来はアジアやアフリカの「水牛」を意味していたのだが、ヨーロッパからアメリカに移民としてやってきた、いわゆるヨーロッパ系の人たちは、アメリカ原産の草原を疾走する野牛バイソンを、なぜか「水牛“buffalo”」と呼んで親しんでいるのだが、俗語では、動詞として「人を面くらわせる、まごつかせる」という意味でこの言葉を使っているようで、愚鈍な扱いにくい動物という印象が強いようである。
なお、アメフトNFLのチームにも、バッファロービルズという愛称を持ったチームがあるが、これは、アメリカ西部開拓史上の伝説的人物バッファロービル(もちろん、彼のあだ名の由来はbuffaloから来ているのであるが)に由来するものであろう。
福岡ダイエーホークス
それでは、3位の福岡ダイエーホークスはどうであろうか。
hawk=タカやワシの仲間の総称として、アメリカ人はこの言葉を使っているようだが、そのイメージは、「いわゆるタカ派の人、強硬論者、主戦論者」という意味合いが少々強いので、積極的にスポーツの球団名には使われていないようである。
日本ハムファイターズ
4位の日本ハムファイターズについては、fighter=戦闘機や戦士、闘士、武人という意味のようで、ボクサーのスタイルでファイター・タイプというのは、がむしゃらに前に出て泥臭く闘うタイプなので、たぶん、そのようなイメージで捉えているに違いない。
なお、日本ハム球団は、2004年から北海道の札幌に“入植”することになっている。
考えてみると、北海道という土地は、はるか昔の原日本人として全国で暮らしていたアイヌ民族が唯一暮らす土地(ただし、民族のルーツを同じくするといわれる琉球民族は沖縄に在住しているが)であり、後に日本と呼ばれるアイヌとは異なるヤマト民族が、ある時は征服戦略を、またある時は同化戦略をとるによって、最終的には、純粋な意味での原日本人を現在の沖縄と北海道に押しやった歴史を考えると、日本という名称を持ったこの球団(1942年の太平洋戦争直後に四国の徳島市内で創業した徳島ハムが前身で、1963年に関西のハムメーカー、鳥清ハムと合併して日本ハムとなり、一気に全国区の食肉会社にのし上がったそうである)が、
プロ野球球団としては初めて北海道に誘致されるというのも、偶然とはいえ不思議な事象である。
それにしても、現在「巨人の植民地」と揶揄される北海道が、やや読売系(&ヤンキース支援系)とはいえ、アメリカ植民地時代の歴史がダブる北海道に骨を埋める覚悟を決めたパリーグの球団が進出することで、いずれは読賣色が払拭されることを期待してやまない。
千葉ロッテマリーンズ
5位の千葉ロッテマリーンズであるが、marineはずばり海兵隊員のことであり、ちょっと軍隊色が強すぎるので、シアトル・マリナーズに使われているmariner=水夫あたりのマイルドなネーミングのほうが好まれるようである。
オリックスブルーウェーブ
最下位に終わった、神戸のオリックスブルーウェーブについては、まず親会社であるオリックス“oryx”という社名が、アフリカの、長く鋭い角を持ったカモシカに似たウシ科の動物の名前 にかけたものであるが、それを知っているアメリカ人は少ないものと思われる。
それに対して、ブルーウェーブ“blue wave”という言葉そのものは、英語の単語としては存在しないが、blueは、もちろん青いという意味で使われるので、blue waveには、爽やかな青い波という意味を込めてこの愛称を採用したようであるが、
実は英語では「憂うつ(ブルースは、その意味から派生した音楽)、厳格、わいせつ」などのイメージが強く、アメリカ人にとってblue waveというのは、むしろ「憂鬱な波」というような、よくわからない抽象的なイメージに囚われてしまうように思われる。
なお、神戸オリックス・ブルーウェーブの前身である、阪急ブレーブスについては、アトランタ・ブレーブスというメジャーの球団名があるように、由緒のある名称で、さすが(?)、常勝軍団のエースであった山田久志、現ドラゴンズ監督の出身球団であり、セパ両リーグ分裂前の1リーグ時代から続いた名門球団にふさわしい名称であったが、
実はブレーブ“brave”は、勇士と訳されてはいるが、元来はネイティブ・アメリカンの戦士のことであり、アトランタという土地柄を考えると、なるほどそういう意味が込められているのか、と妙に納得させられるものがある。
これで、セパ12球団の球団名についての考察を全て済ませたわけであるが、最後に、ドラゴンズについての、最近のある面白い事象について、簡単に述べてみたい。
本編では、「アメリカでは“Dragons”という名称のチームが、野球はおろか、アメフトやバスケット、アイスホッケーなどの人気スポーツの球団名に使われない」という実態を述べたが、実は、アメフトをヨーロッパに“輸出”する戦略を打ち出しているNFL(National Football League)の、NFLヨーロッパリーグには、バルセロナ・ドラゴンズというチームが存在するのである。
では、このチームは、“悪役チーム”の使命を帯びてこのようなネーミングにしたのであろうか。
私はそうではないと思う。
【実は、ドラゴンが悪の権現として定着したのは、キリスト教的世界観が確立してからのことであり、それ以前のヨーロッパ文化では、必ずしもドラゴンは悪の象徴ではなく、むしろ、勇者の象徴であり、信仰の対象でもあったのである。】
つまり、キリスト教がヨーロッパ社会を支配する際に、それまでの“邪教”を駆逐する手段の1つとして、ドラゴンを悪の権現に選んだのである。
まるで、かつて、日本の読売教大長嶋主義信者が、悪の象徴として、星野ドラゴンズを目の敵にしたのと、何か相通じるものがあるように感じるのは、筆者だけであろうか。
<エピソード3>参照。
タイムリーコラム
星之★戦争 “STAR'S WARS”エピソード3:
Enter the Dragons
(1999/08/27)
★竜を悪役として描く“讀賣教”の系譜★
――情けなや! テレビ東京の『特集』の名を借りた
“讀賣教”信者向け負け惜しみ企画――
そのように考えると、アメフト“不毛の地”ヨーロッパにおいて、バルセロナという、周囲の圧力に屈せずに独自文化を守っていこうという気概を見せている都市が、アメリカに倣ったスポーツであるアメリカン・フットボールを広めようとする球団名に、ドラゴンズという名称を敢えて使用している“ガッツ”に、敬意を表したいと思う。
2003/2/2
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%93%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%A9%E3%83%BC%E5%95%8F%E9%A1%8C