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どっちが傾いて見える?同じ画像なのに片方が傾く「斜塔錯視」の不思議

上の画像のエッフェル塔はどちらのほうが右に傾いて見えるでしょうか。

おそらく多くの人は右側のエッフェル塔がより右に傾いていると答えるでしょう。

ところが左右のエッフェル塔の画像は全く同じものなのです。

この現象は「斜塔錯視(Leaning tower illusion)」と呼ばれています。

なぜ同じ画像なのにも関わらず、片方はより傾いているように感じるのでしょうか。

本記事では、斜塔錯視がなぜ生じるのかを解説します。


参考文献
The Leaning Tower Illusion
https://illusionoftheyear.com/2007/05/the-leaning-tower-illusion/

元論文
The Leaning Tower illusion: a new illusion of perspective
https://doi.org/10.1068/p5722a


ライター:AK(AK)
大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしていました。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。


同じ画像なのに片方が傾いて見える「斜塔錯視」

同じ画像なのに傾いて見える「斜塔錯視」
同じ画像なのに傾いて見える「斜塔錯視」 / Credit: Canva

トップ画像に掲示したのは、普通のエッフェル塔のフリー画像です。

しかし、この画像をコピーして左右に並べると、右側の画像は左側の画像よりエッフェル塔が右に傾いて見えます。

この現象は、前述した通り「斜塔錯視」と呼ばれています。

斜塔錯視は、カナダのマギル大学のフレドリック・キングダム(Fredirick Kingdom)氏らにより発見されました。

2枚の画像を並べるだけというシンプルさと錯視量(錯視の効果)の大きさから、2007年にはBest Visual Illusion of the Yearで1位に輝きました。

この発表の際に使われたのはピサの斜塔が左右に並んだものだったので、斜塔錯視ではこのピサの斜塔を用いた画像が有名です。

その画像ではこの記事のトップ画像のようにピサの斜塔が右側に傾いていたため、斜塔錯視は右方向に傾く錯覚だと思っている人もいるかもしれませんが、必ず右に傾くわけではありません

左の画像が左に傾いて見える斜塔錯視
左の画像が左に傾いて見える斜塔錯視 / Credit: Canva

画像内の建物が左に傾いている場合は左側の画像の建物がより傾いて見えます。

また斜塔錯視は、塔などの建物以外の画像でも生じることが分かっています。

路面を走る電車や橋で生じる斜塔錯視の例。
路面を走る電車や橋で生じる斜塔錯視の例。 / Credit; Canva

例えば、路線を走る電車の画像であれば奥から侵入してくる角度が、橋の画像であれば手前から奥に伸びていく場所が上下の画像で違うように感じられます。

ではなぜこのような現象が生じるのでしょうか。

その原因は私たちが画像を見た時の予測との不一致にあるようです。


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