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Wiiリモコンで操作できる「生き物みたいに歩くテーブル」

疲れ果てて、「一歩も動きたくない」と感じる時があるでしょう。

思わず、「飲み物や軽食を乗せたテーブルが自分で歩いてきてくれたらいいのに!」なんて口にすることさえあるかもしれません。

最近、エンジニアのギリアム・ド・カルパンティエ氏は、そんな自堕落な願望を現実のものとしました。

12本の足で動く「歩くテーブル」を開発したのです。

過去にも「歩くテーブル」は作られてきましたが、彼の作品では滑らかな動きが追及されており、歩く様子はまるで生物のようです。


参考文献

Carpentopod: A walking table project
https://www.decarpentier.nl/carpentopod


ライター:大石 航樹(Koki Oishi)
愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。


生物のような動きを追求する

ストランドビースト / Credit:Theo Jansen

「生物のような動き」を再現する芸術で有名なのは、彫刻家テオ・ヤンセン氏が製作する「ストランドビースト」です。

ストランドビーストは、プラスチック材料で作られた作品ですが、風の力を受けて、まるで生きているかのように歩くことができます。

その「生物らしさ」は、ヤンセン氏が設計した特殊な機構「ヤンセンのリンク機構(Jansen’s linkage」によってもたらされています。

これは、ヤンセン氏がコンピュータシミュレーションによって発見したものです。

1本の脚につき11本の骨組みがそれぞれ適切な長さで組み合わさることで、円を描くような柔らかな動きを生み出すことができるのです。

ヤンセンのリンク機構(6本足のアニメーション) / Credit:MichaelFrey(Wikipedia)_Jansen’s linkage

そして6本足のアニメーションから分かる通り、中心の軸を回転させるだけで、全ての足が滑らかに動き、歩行させることができます。

ヤンセン氏は、このストランドビーストを改良し続けており、現在でも彼の様々な作品を見ることができます。

一方で、ヤンセン氏のストランドビーストやリンク機構にインスピレーションを受けた人々も多くいます。

例えば、オランダの家具デザイナーであるウーター・シューブリン氏は、ストランドビーストの動きに少し似た「歩くテーブル(ウォーキングテーブル)」を開発しました。

彼の開発したリンク機構は、ヤンセンのリンク機構とは異なるものの、どこか生き物らしさを感じます。

ちなみに、このウォーキングテーブルは、自力では歩くことができず、人間が押すことで「生き物みたいに」移動してくれます。

またストランドビーストのような作品の別の例として、エンジニアのギリアム・ド・カルパンティエ氏が作成した歩くテーブル「Carpentopodが挙げられます。

カルパンティエ氏が開発した歩くテーブル「Carpentopod」 / Credit:Giliam de Carpentier(YouTube)_The Carpentopod table being put to use!(2024)

彼の作品は、ヤンセンのリンク機構を用いつつ、進化させたものであり、シューブリン氏のウォーキングテーブルよりもいっそう滑らかな動きが可能です。

さらに人間が押す必要は無く、モーター駆動により自力で歩くこともできます。

まさに、「疲れているから動きたくない。テーブルが歩いてきて」なんて言ってしまう人にぴったりなアイテムです。

では、カルパンティエ氏の「Carpentopod」は、どのようにして生み出されたのでしょうか。


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