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サイゼリヤのロゴが「日本語」と「英語」の2つあるメリットを研究者が独自に解明!
「サイゼ」の愛称で親しまれる日本のイタリアンファミリーレストラン「サイゼリヤ」。
充実したメニューと価格の安さから、日本全国で最も人気な外食チェーン店となっています。
そんなサイゼリヤのユニークな特徴は、ブランドロゴに日本語と英語の2タイプがあることです。
メニューブックや公式文書の記載から英語ロゴがメインのようですが、店舗や道路の広告看板には日本語ロゴが使われています。
なぜ2タイプのロゴを使っているのか、その真意は経営者に聞いてみないとわかりませんが、中央大学は最近、「視覚認知性」という面白い視点からこの理由を独自に探ってみました。
その結果、サイゼリヤのロゴは日本語版にすると周辺視野でも捉えやすくなることが判明したのです。
つまり、日本語ロゴは目の端にチラッと入ってきただけで「あ、サイゼリヤある!」と認識しやすいので、広告看板に非常に適していると考えられます。
研究の詳細は2024年7月13日付で科学雑誌『International Journal of Affective Engineering』に掲載されました。
参考文献
元論文
Visual Recognizability Evaluation for Brand Logos Using Covert Eye Tracking (CovET) Combined with a Go/No-go Task
https://doi.org/10.5057/ijae.IJAE-D-24-00019
ライター:大石 航樹(Koki Oishi)
愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
なぜサイゼリヤのロゴは2つあるのか?
外食産業の経営者たちは、お店の売上を上げる戦略の一つとして「ニューロマーケティング」という手法を使っています。
ニューロマーケティングとは、脳科学的な知見を使って消費者の心理や行動を分析し、お店へと自然に誘導したり、商品を買ってもらう方法を最適化する戦略のことです。
有名な例を一つ挙げますと、マクドナルドの看板は「赤色」と「黄色」を使っていますが、これは赤色に「興奮」や「食欲増進」を引き起こす効果があり、黄色に「幸福感」や「親しみやすさ」を与える効果があることを利用しているといわれています。
この作用により、ドライブ中にマクドナルドの看板が目に入ると、ついつい立ち寄りたくなるわけです。
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こうした色が与える心理作用の他に、ニューロマーケティングには「視覚認知性」を応用したものがあります。
視覚認知性とは、簡単にいえば、ある対象物を目で見たとき・視界に入ってきたときにどれだけ認識しやすいかを示す指標です。
例えば、マクドナルドの看板はあらゆる色の中でも最も目立つ「赤色」と「黄色」を使っているので、雑多な街中でも目につきやすく、視覚認知性はとても高いといえます。
では、他の外食チェーン店のロゴの視覚認知性はどうなのでしょうか?
この問題を探るため、研究チームが有名外食チェーン店のブランドロゴを調べていたところ、他のブランドと異なる特徴を持つお店が1つだけありました。
それがサイゼリヤのロゴです。
他の外食チェーン店が1つのロゴに統一しているのに反し、サイゼリヤだけは日本語と英語の2タイプのロゴを使っていたのです。
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しかも32名の学生に質問したところ、サイゼリヤの2つのロゴはどちらも非常に高い認知率を誇っていました(日本語ロゴは87.5%、英語ロゴは90.6%)。
日本語ロゴは緑バックに赤色のカタカナで「サイゼリヤ」と表記されており、英語ロゴは白バックに赤色のローマ字で「Saizeriya」と表記されています。
マーケティング戦略において知られている「コーポレートアイデンティティー理論」によりますと、1つのブランドに対しては1つのブランドロゴに統一するのが売上を上げるのに最も適切であるとされてきました。
これに反し、サイゼリヤは日本語と英語のロゴを長年使い続けた結果、どちらの認知度も極めて高くなり、マーケティング戦略においてもまったく不利には働いていないことが見て取れます。
どちらのロゴがメインなのかについて公式の発表はありませんが、メニューブックや公式文書の記載から察するに、英語ロゴがメインのようです。
一方の日本語ロゴは主に店舗や道路脇に立てられる広告看板によく使われており、サブ的な存在と見られます。
それでは、これらサイゼリヤの2つのロゴは視覚認知的にどのような特徴を持っているのか、チームが実験で検証してみました。
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