アトランティス幻視 崩壊前夜20
そして天狼星は星を読む
夜空に億万と輝きを放つ
星のエネルギーを感じとり
願いの幾何学となし
地上に転写する
調和のかたち
美のかたち
今日の夜空の
今日だけのエネルギーを
次々と地球に転写していく
この星に調和を
そして
永遠のいのちを
祈りとともに
地に写し続ける
生き生きと星を読み
写しとる天狼星の姿を
喜びとともに
遠く眺めつつ
青鷲は夜空に浮遊する
この宇宙のすべては
調和と安らぎに満ちている
そうだ
これが私たちの宇宙だった
久しく忘れていた
すべてがひとつに溶け
わたしではなく
わたしたちである世界
なんと心地よいのだろう
いっそ
この夜に溶けてしまおう
そっと目を閉じ
青鷲は幸せに身を委ねる
こんなにも満ち足りた世界を
この星に写すことが
朱斗さまの
そして
星読みさまの願いであったのだな
そこまで考えて
青鷲はふと目を開ける
だとすれば何故
なにゆえに
かすかな疑念が沸き上がり
青鷲は意識を体に戻す
そして自由に夜空を舞う
天狼星に問うた
星読みさま
神々はなぜ
こんなにも不完全な星を
楽園の映し場へと選ばれたのでしょう
完全なる調和
ひとつになる世界を目指すならば
彼らのお力をして
ほかに幾つなりと
適した星が有りましたでしょうに
なぜこんなにも辺境の星に
街を造られたのか
この宇宙の
唯一つの
法則を外れた
この星に
青鷲の問いに
天狼星は撃たれたかのような衝撃とともに
青い目を見開く
これと同じ問を
遥か昔
聞いたことがある
いや
同じ問を発したのは
わたしだ
そしてそのとき
わたしの問を受けたものは
金色の長い髪
優しく揺れる
どこまでも青い瞳
遥かな時を遡り
その姿は再び
はっきりと像を結ぶ
そして天狼星は思い出す
はるか昔
この街がつくられたばかりのころ
自らが
神と交わした約束を