連符入門!連符の世界を見渡そう!
こんにちは、こんばんわ、ユートピア!
変拍子兄さんです!
変拍子と双璧を成すリズムの世界「連符」
本日からは、この連符シリーズを始めていこうと思います。
この1,2年ほど変拍子、微分音に加えて連符に関するテクニックを蓄え、
自然に連符を扱う方法を探求してきました。
今回はその導入として、連符というのにはどんなものがあるのか?
連符の知られざる世界に突入していこうかと思います!
Lv0 イーブン
まずは、連符ではない通常の音符について復習していきましょう!
それは「2分割」で構成されるシンプルな系統の音符たちです。
具体的には2分、4分、8分、16分、32分音符といった
2の累乗で分割できる音符たち
これら、楽譜の読み方としても基礎、DTMで打ち込みをするにもグリッドの基本形として現れる最もシンプルな音符の系統でしょう
これらは変拍子の話題では「サブディヴィジョン(分解能)」として紹介しました。
イーブンというのは2分割のみのサブディヴィジョンのことであり
連符というのはこのサブディヴィジョンに2以外の数値を導入してより詳細にリズムを捉えていくという世界になってます
そこでまず、連符ではない2のみで分割した状態を「イーブン」と呼ぶことにしましょう。
つまり、連符は使わないよっていう状態をざっくり「イーブン」と表現します。
イーブンという言葉は多義的なので
厳密には2の累乗の系統なので「バイナリー」と言いたいところですが
本記事ではイーブンで通しましょう。
Lv1 ノーマル連符
それではいよいよ連符についてお話していきます。
今回の記事では具体的な使用法、使用例については述べませんが
どのような連符があるのか、ステップアップで知っていきましょう
・分割数
連符とはサブディビジョン、つまり分割数を自由に決められるというもので、N連符といった場合、N分割していることを意味します。
具体的には
3連符、5連符、7連符、9連符… 何分割でも可能です。
また連符には上限はなく理論上、如何なる整数でも分割可能です。
音符で表記する場合はこのようになります
MIDIで見る場合は長さが分かりやすいですが何連符かが分かりづらいですし、
記譜の場合は個数が分かりやすい反面、休符や結合があるとわかりづらいという欠点もあります
・乗算可能
連符というのは分割ですので、かけ合わせが自由なのです。
イーブンでは「2」しか使いませんでしたが
3以降の素数分割が解放されたのです。
ここでは奇数連符しか挙げていませんが、2分割を組み合わせればもちろん偶数連符も可能です。
3分割x3分割で9連符といったことも可能です。
・分割範囲
単に連符と言った場合、分割数は指定できますが
分割範囲については言及しません。
そのため連符を厳密にいうには2拍3連、4拍7連といいふうに
頭に「分割範囲」を宣言する必要があります。
さらに厳密にいうには、サブディビジョンも指定して4分2拍3連という風に
呼ぶ必要があります。
1拍といえば4分1拍のことですので、ノーマル連符では困ることはありませんよね。
・ビートクラス
次にイーブンを基準に連符のクラス分けをしていきます
これらをビートクラスと呼ぶことにしましょう。
さらに、音価が
2分~4分未満を2分クラス
4分~8分未満を4分クラス
8分~16分未満を8分クラス
16分~32分未満を16分クラス
…
とします
これは音符の旗を考えるときにも便利な概念ですね。
クラスの判別をするには、イーブンの音価と比較してどの間にあるのか
計算するなり、DAW上で見るなりして確認すればOKです
1拍N連であればN分音符となるのでそこまで困りはしないでしょう
サブディヴィジョン(分解能)と混同してしまいそうですが
連符もサブディヴィジョンの一種ですのでこれをクラス分けしたもの
それがビートクラスです。
・ビートクラス調整
連符は分割範囲を倍または半分にすることで、
好きなビートクラスに持っていくことができます。
例えば1拍5連、6連、7連は16分クラスですが、
倍の音価、2拍5連、6連、7連とすれば8分クラスになります。
数字の大きな連符であっても、ビートクラスを2分~16分クラスあたりに調整すれば、速すぎ・遅すぎということは防げます
・タイムハンドル
DAWに連符を打ち込む際、通常は3連符のグリッドや5連符のグリッドを用意してから打ち込みますが、
実は引き延ばしや押しつぶしが可能です
この操作を「タイムハンドル」と呼びます
連符を作る際には、この動作が大事になってきます。
グリッドの方が便利なときもありますけどね。
また、頭の中で連符を想像する際にも「タイムハンドル」的思考力が必要になってきますので押さえておきましょう!
Reaper,Logic,Abletonではこの操作ができていますが、
他のDAWではタイムハンドルが可能か未確認です。
Lv2 拍子内拍子
さて、お次のステージは「拍子内拍子」です
連符の話じゃなかったっけ?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが
連符と拍子は鏡合わせの存在で、お互いに組み合っていきます。
そのためにいったん、拍子のお話をさせてください!
・連符と拍子は対概念
連符とは分割数を決めるもの、
それに対してまとまり、すなわち「範囲」を決めるのは拍子なのです。
連符が分子、拍子が分母であると捉えていただければOKです。
計算上は対となるものですが
拍の数は同じなので、扱いは似てきます。
例えば11拍子の内訳をどうするか、11連符の内訳をどうするか
ここの発想自体は共通しているものがあります。
「11拍子は3+3+3+2で分けるよね」っていう発想をそのまま
「11連符は3+3+3+2で分けるよね」っていうところに移せます
・拍子内拍子の種類
ある拍子がありながら、
内部に別の拍子構造を持つものを
「拍子内拍子」と呼ぶことにしています。
拍子内拍子は次の技法として知られています
①ポリリズム
異なる拍子と拍子を同時に演奏する技法です
どちらの拍子が主軸なのか曖昧にしていくほど、ポリリズムの効果は強くなっていきます。
このアプローチでは「重ねる」ことが重要で
拍子を3段、4段…と重ねていく発想がしやすくなります
②メトリックモジュレーション
基本の拍子とは異なる拍子構造をつくりテンポ感を翻弄させる技法です
このアプローチでは「テンポの攪乱」が重要です。
こちらは、メインの拍子とサブの拍子の主従関係はありながら、パワーバランスをどう演出するのかというスリリングなリズムを味わえます。
③Nつ割り
3つ割りや5つ割りのように音符のグルーピングを変えてリズムのフックを作るというもの。
これはドラミングテクニック由来のものですが、その他のパートでも応用可能です。
このアプローチはあくまでもフックであるため、
元の拍子に合うように帳尻をあわせます。
今回の連符のお話では、このスタイルで登場することが多いですね。
④トレシーロ(3+3+2分割)
拍子内拍子の中でも最もカジュアルに使われるのがトレシーロ
ラテンリズムで多用される3+3+2で4拍子を分ける技法です
これも3拍子を内包しているので拍子内拍子の一種ですが
次の項目でクローズアップしていきましょう!
・調整拍
拍子内拍子の代表例トレシーロではその中で、
8つの拍を3で割っていく、つまり中に3拍子を作っていくわけです。
また3つ割りを続行して、3+3+3+3+4とすることもできます。
しかし、その過程で余りが生じ帳尻を合わせる必要があります。
332分割の話でいえば、2がそれに該当しますね。
この余りの拍を調整拍と呼んでいます。
トレシーロ、メトリックモジュレーション、ポリリズムはそれぞれの目的に応じて、調整拍の扱い方が変わってきます。
・分割範囲
拍子内拍子は通常
拍子の内訳(サブメータ)として、これをどのように組み合わせるとよいか?と捉えていきます。
これが変拍子的な発想でした。
これを分割範囲として捉えなおすと連符的な発想に持ち込むことができます。
ただし分割数は分割範囲に準ずるのでそこに選択の余地はありません。
つまり3つ割りをしたら中にある拍数は当然3つということです。
これを連符に応用していきましょう!
Lv3 拍子内連符
Lv1とLv2を組み合わせることでさらに、連符の概念を拡張していきます。
それが拍子内連符です。
この類の連符を目にする機会はあまりないはずですが
ノーマル連符よりも扱いが楽になることもありますので押さえておきたい連符ですね。
・N拍M連
連符では分割数、拍子では分割範囲が自由になりました。
ここからは、
分割範囲N、分割数Mの両方とも選択できるようになった連符です
ノーマル連符でも分割範囲はありましたが、1,2,4拍といった選択しかしませんでした。
ここからは、分割範囲は自由、3拍でも5拍でもOKという世界です。
そのため、MIDIの場合はグリッドをまたいできます。
パッと見での判別が難しくなってきます。
一方、記譜ではM:N という風に表記します。
N拍M連とは順序が逆なのが注意です。
3拍5連の場合、5:3と表記しますが
「俺は5連だ!そして範囲は3拍だ!」と心の中で叫んでいます。
ofなどの前置詞の使い方に似てますね
ちなみにFive against Threeと呼ぶようです。
上記の例では単に数字で書きましたが
8分3拍、16分5拍といったサブディビジョン付きで細かく指定することもできます。
・ビートクラス
連符でさえ数に限りがなくキリがないものでしたが、
さらに分割範囲が増えてキリがなくなりました。
そのため頭を楽にするために、「区切り」を知っておくと良いでしょう。
例として最もシンプルな3拍M連とは何か考えてみましょう
長さが3拍分あるなら3つに分けるとイーブンになります
要するに、4分音符。
拍子内連符の見た目をしていながら、実質イーブン
こいつ基準にするとN拍M連も整理がついてきます。
同様に、
3拍6連も8分音符ですし、3拍12連は16分音符です
8分から16分にかけて音価が縮まり半分になるのと同様に
3拍6連から3拍12連にかけて音価が縮まっていきます
このように、
分割範囲そのものから2倍まで、2倍から4倍までという区切りが分かれば
ビートクラスがどこなのか判断が付きますし
比較対象の連符を探すのにも役立つでしょう。
・拍子内連符⇔連符内拍子
内という概念は非常に便利で、概念同士の組み合わせ関係を明示することができます。
この関係を逆転させることも可能です
これはつまり、拍子内拍子 N拍M連
というのを
連符内拍子 M連のNつ割りとして解釈しなおすことができます。
具体例として3拍7連をみてみましょう
グリッドを7連のグリッドに変えます
7連の3拍ごとに配置されてるのが分かりますか?
場合によっては3拍7連をタイムハンドルで作成するより
7連のグリッドを3つ割りで作成したほうがいい場面もあります。
特に、ビートが遅い連符に取り組むとき
この解釈変更が活きてくることがあります。
拍子内連符が分子分母の関係であること踏まえれば、自明なことなのですが
このスイッチングを頭の片隅に入れておいて損はないでしょう
Lv4 連符内連符
さて、連符の最終奥義
連符内連符、通称Nested Tuplets(ネスト) です。
今まで分割範囲はイーブンで決めていましたが、そこすら連符で決めることができるというもの。
もっと端的に言うならば、連符の中に連符というものがこいつです
この連符を使用すれば、非常に不可解なリズムを簡単に作りだすことができます。危険ですね。
この段階においては、こんなのがあるんだな~程度の認識でOKです。
シチュエーションとして、基本のグルーヴを連符で構成している際に
音数の調整としてさらっとネストが発生したりします。
・N拍M連 in L連
この連符内連符というものは、記譜上では連符の中に連符があるように表記されます。
ある意味、2次元的な要素を持ってると言えます。
文章や言葉でも連符内連符を扱えるように「in」を使用することにしました。
(内やらinやらがやたら暗躍していますね!)
使用方法は前置詞inと同様です
I Live in Tokyo では 東京の中に私がいますね。
同様に考えてください
3拍4連 in 7連とは
7連の中に、3拍4連が入っている ということです。
・ダブル・タイムハンドル
連符内連符を実際に打ち込んでみましょう。
3拍4連in7連を作成するには合計2回のタイムハンドルが必要になってきます。
まずはイーブンで4拍用意します
これを3拍4連にタイムハンドルします。
次に合計7拍になるように、ノートを追加します
これをもう一度タイムハンドルすると全体は7連になります。
7連の内の3拍が3拍4連となっています
・交換法則
足し算や掛け算では交換法則が成り立ちます。
つまりAxB=BxA と言ったように入れ替えが可能なんですね。
(可換であるともいう)
これを連符内連符に応用できます。
たとえば、3拍4連in7連 というものを 3拍7連in4連
という風に置き換えが可能です。
in 4連というのはイーブンなので明記しなくてもOK
結局3拍7連になります。
※あくまでも連符内連符の音価が同じなのであって
調整拍まで含めるとリズムパターンは変わってしまうので注意です。
拍子内連符⇔連符内拍子 のスイッチングと似てますね。
これは因数ごとにもできるということです。
連符内連符においても交換法則を利用して、見方を変えると楽になる場合や新しい発見があったりします。
・キリがないシリーズ
・マルチネスト
キリがないシリーズです。
連符内連符内連符内連符‥‥という風に
理論上はマトリョーシカ的に何重にすることもできます。
結局のところN拍M連の形に変形することができるのですが
複雑な計算が過ぎて、クリエイティビティの阻害要因となりえます。
使い過ぎには注意ですね
・10分3拍7連 in 14分5拍3連
キリがないシリーズその2です。
分割範囲にサブディビジョンを明記したものを両サイドに用意することで
より不可解な連符内連符を形成することも可能です。
これも計算上、分割数因子(分子)と分割範囲因子(分母)のどちら側が見分ければビートクラスの判定ができますが
やはりクリエイティビティの阻害要因となりえます。10分3拍7連 in 14分5拍3連
→3拍7連 in 2拍5連 in 5拍3連 in 7連
→30拍735連
という風にN拍M連の形に無理やり戻すことで計算可能です。
Lv5 連符分類法
連符においては、カオス極まりない連中がワンサカいます。
いたずらに頭を使って消耗する可能性が多々ありますので、
これらを扱いやすくするために「分類」をしていきましょう。
分析も楽になりますし、連符の選択の際もあたりが付けられるようになるでしょう!
・速い連符/遅い連符
連符では分割数が多いほどビートが細かくなっていきます
これを似た連符同士で比べると速い・遅いの感覚が出てきます。
数が多い方が速い連符ですので、数値で比較すれば確実に速い/遅いの判断が付きますが、聞いた感じの判断でもOKです
それでは問題です。
3拍5連と4拍7連はどっちが速いでしょうか
計算方法は分数計算をすると分かります
5/3と7/4を比較、5/3≒1.6 7/4≒1.7なので
「4拍7連の方が速い」
という結果になります
・6分類法
速いと遅いと比較を身に着ければ
基準となるものを立てればOKです。
その基準はイーブンとトリプレット(3連)
まずは、イーブンに近いか、トリプレット(3連)に近いか
それよりほぼ同じ、速いか、遅いかで判断します
ある種中間型もありえるので、聞いた感じなんとなくで捉えてもOKですし
数値の比較で求めてもOKでしょう
イーブンより遅い|イーブン|イーブンより速い
トリプレットより遅い|トリプレット|トリプレットより速い
この6タイプに分類可能です。
8分クラスで代表例を挙げるならこうでしょう。
・イーブンより遅い→7連(2拍7連)
・イーブンより速い→5連(2拍5連)
・トリプレットより遅い→3つ割り(32分3つ割り、8分3拍4連)
・トリプレットより速い→5つ割り(16分5拍4連)
ノーマル連符は音価が長いほど難しく
拍子内拍子は音価が短いほど難しい傾向があります。
・連符の円環
後々気づいてくるかもしれませんが
速いイーブンと遅いトリプレットはオーバーラップしていて
速いトリプレットと遅いイーブンはオーバーラップしています。
6分類法では、表として書いていますが、
本来は色相環のように循環しているのです。
また、ドレミファソラシドで循環する音程にも似ていますね
更に言うならば、一周すると分割数が倍になるので
螺旋(スパイラル)ですね
6分類法だけでも連符の外観が分かりますが
これに円環的イメージが組み合わさるとその繋がりまで見えてきます
ここまでくれば上出来、まさに大局観ですね!
・16分類法
さて6分類法では、
こと足りなりなくなってきた場合、
さらに細かいこの16分類法を使用します
近似できる連符は4,5,6,7連符のうちどれか?の4タイプ
ほぼ同じ、速い、遅い、中間 の4タイプ
合計16タイプで分類していくとよいでしょう
これは僕が各16タイプの典型例を選抜したものです。
N拍M連はM/Nと分数での表記になっており、連符内拍子の形式で書かれています。
注意点としてこれらの分類法は連符のビート感に着目したもので
連符の開始位置、連符内で使用する拍の選択によってもリズムは多様に変化します。
あくまでも大枠として捉えてくださいね。
〆
さて今回は連符入門の一手として
連符の作り方とその分類法を見ていただきました。
とにかく複雑なので、「そんなのがあるんだ~」となんとなく見渡してもらえばOKです
実際の作曲に活かすために分類法を突破口として
ビートの作り方などを紹介していく予定です。
またYoutubeの配信でも連符ワークショップとして、発信していきます。
https://www.youtube.com/watch?v=YFpKMHYA38I
ゲストとして参加したい方、随時募集中ですので
変拍子ラボへお越しください!それでは!