眠っているテキスタイルと、特別な一枚のストーリー[tttt_vol,2]
これまで誰かに真摯に大切にされてきた、
これからも大切にしていきたいこと&大切にされていくべきだとわたしが思うことを、
これからも大切にしやすい形に変えてみなさんに届ける
前回の[tttt_vol,1]にて、サステイナブルという言葉から着想した考えやその思いに至る経緯についてご紹介しました
今回はその本質、”これからも大切にしていきたいこと&大切にされていくべきだとわたしが思うこと”、の部分、デザイナー地元愛知のテキスタイル産地についてご紹介します
地元”尾州産地”
私は愛知県の出身で、地元・愛知県一宮市を中心に広がる織物の産地「尾州産地」をいつも身近に感じながら25歳まで愛知で過ごしました
ファッション・お洋服周り、特に生地関係を仕事にしている人が非常に多いエリアです
祖母の家の裏手にも昔は機屋さん(生地を織る工場)があり、ガシャン・ガシャンという織機の音は小さい頃から耳馴染みのある音
大きな工場のシャッターの隙間から中を見るとそこには、いつもたくさんの数の生地の反物(くるくると巻いてある生地の巻物)が天井までびっしりとあり、その荘厳さに子供ながらに圧倒されたことを今でも思い出します
服にならないテキスタイル
が、大人になりアパレル業界で働き出すと、その生地たちは全てが全てお洋服になるわけではないということを知りました
オーダーの必要分が足りなくなってはいけないからその予備として織られたもの、企画途中で見本として織られたもの、企画の途中で中止になったもの、売り先がなくなってしまったもの、機屋さん自体が廃業してしまったもの、など、など
その事実を知った時は静かな衝撃でした、誇らしくかっこいいあの織機たちが頑張って織り上げたのに日の目をみないものがあること
ぽかんと寂しい気持ちになったのを今でも思い出しますが、冷静に考えるとそれにはもちろん理由があります
手芸をしてみたことがある人なら想像してみてください
生地を買う時、足らないと不安だから必要な量に少しプラスしてお店で買いますよね
そして半端が余ってしまう
捨てるのももったいないからしばらく置いておくけど、そこから何か作れるような量でもなく、大掃除の時にごめんねと思いながら捨ててしまう
もしくは、何か作ろうかなと生地だけ買ってみたけれど、やっぱり忙しくて使えなかった、引っ越しの時にまとめて捨てちゃう
一人で何かを作るだけでもそうなのだから、それの何千倍・何万倍も大きな規模の話ならば使われないものが出てくるのは当然のことで、それは大きな量のテキスタイルが常に動き続けるアパレル業界の中では、仕方のないことでもあります
楽しめる形にして、届けたい
ただ大切なのは、そのテキスタイルはただ、ただ偶然眠ってしまったということ
粗悪だからでも、かっこ悪いからでもないのです
むしろその逆で、かっこよくて、素敵で、とても手がかかっていて、生み出されるべくして生み出されたものばかり
ただ、服になるチャンスをぽろりと逃してしまった
昔に比べて今は日本産のテキスタイルは非常に貴重で、だからこそ伝えていきたいものでもありますが、その反面じゃあそのまま紹介したらよいのかというとそうでもなく、布は、布のままではたのしむことが意外と難しいという一面もあります
何かその素敵さを皆さんにお伝えして楽しんでもらえる方法はないだろうか
例えば、その素敵なテキスタイルの中から好きなものを選んでもらって、それをtactorがお洋服にするのはどうだろう
丁寧に織られた特別で素敵な生地がいっぱいある、それを世界で1枚だけのお洋服に仕立てて、大切にしてくれる方のところにお届けするのはどうだろう
そうしたらそのストーリーを、きっとずっと伝えていける服になる
そんな思いつきから、ファッションが大好き・特にお洋服が大好きな方達と、眠っている素敵な素材を繋げること、その仲介役のような、ことが出来ると楽しいのではという考えに行きつきました
時と場所を超えて出会うテキスタイルと私たち
時と場所を超えて出会うテキスタイルと人とストーリー
長くなってしまいましたが、tttt<tactile textile>プロジェクトはその考えをそのまま実現したものです
tactorのアーカイブデザインから形を選び、テキスタイルを選んでオーダーをお受けする
その昔、祖母や母がご近所さんへ向けてお届けしていたような、小さなセミオーダーのお針子さんのような、そんな懐かしくも温かい時間がご一緒できたらと思っています
(もちろん縫製は熟練のプロの方にお願いしています!)
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ただ、思いがあっても企業さんの倉庫やストックにどんどん入り込んで行って見せてもらって生地を自由に買うことは一個人の私にはもちろんできるはずもなく、いつもお世話になっている素材の問屋さんや、一宮市で長く素材のお仕事をされている稀温さんのお力を大いにお借りして実現できています
実際に産地へ出向いて稀温さんのスタジオからtactorらしいものを一緒にセレクトさせていただいたり、問屋さんが長く温めていた一点ものをみせてもらったりと、その一歩踏み込んだコミュニケーションもこのプロジェクトならではと感じています
次回このシリーズのnote最終回、tttt_vol,3では、プロジェクトの詳細についてご紹介できたらと思います!