出社を好む上司とリモートを望む現場:役割による働き方の違い
リモートワークの普及により、「出社」の意味やその有意性が大きく見直されています。しかし、出社を好む人とそうでない人の間には、役職や仕事内容の違いから来る深いギャップがあると感じます。特に管理職など役職が上がるほど出社に対する意欲が強まる傾向があり、リモートワークがしづらい状況が生まれやすいのです。
出社を好む管理職の心理:承認欲求と対話の比重
役職が上がるにつれて、業務内容は「何かを創る」から「意思決定」や「調整」にシフトします。多くの場合、管理職やリーダーはプロジェクトの進行をチェックし、方向性を示す役割を担っています。会議で他部署やメンバーと意思疎通を図り、問題があれば解決の道筋を示す必要がある。そのため、「人と直接会って話をしたい」「顔を見ながらやり取りしたい」という気持ちが強くなるのです。
また、承認欲求という側面も無視できません。物理的に人と会うことで、より存在感が示され、周囲に自分の影響力を感じてもらえるという満足感を得る場面もあります。オフィスにいることで「自分がここで仕事をしている」という実感が湧きやすく、それが出社を好む理由の一つになっていると考えられます。
実作業を担う側の視点:集中と効率重視
一方で、コードを書く、設計を行う、分析を進めるといった実作業を担う人たちにとって、リモートワークは集中と効率性の観点から非常に理にかなっています。実作業者は一つの課題に深く入り込み、集中して手を動かすことが求められます。このような環境では、通勤時間は単なる無駄に感じられるばかりか、オフィスでの雑音や話しかけられるリスクも集中を阻害する要因となります。
リモートワークでは、雑念を排除しやすく、自分のペースで取り組むことができるため、むしろオフィスにいるよりも生産性が上がると感じる人も多いのです。
勤続年数による価値観の違い
リモートワークと出社の好みに関して、もう一つの要因として「勤続年数」も関わっている可能性があります。長年会社で働いている人ほど、対面でのコミュニケーションや信頼関係の構築を重視する傾向があり、出社によって感じられる一体感や連帯感が業務において重要と考えるケースが多いです。特に勤続年数の長い社員は、会社にいること自体が仕事の一環であり、物理的に顔を合わせることで築かれる関係性が成果に結びつくと考えがちです。
一方、キャリアの浅い社員は、デジタルツールを活用したリモートでのコミュニケーションや自己管理に慣れていることが多く、柔軟で効率的な働き方を重視する傾向が強いです。この世代にとっては、成果が評価の中心であり、物理的な出社が必ずしも必要ではないと考えることも多いです。
こうした勤続年数やキャリア段階ごとの価値観の違いも、出社とリモートの選択に影響を与えている点が興味深いですね。
出社を巡る価値観のズレと働き方の再考
リモートワークが可能な状況において、なぜわざわざ出社する必要があるのか。この疑問は実作業者の間で特に強いでしょう。一方で、上の役職の人々は、会社全体を見渡し、多くの人とコミュニケーションを図る必要があるため、出社には彼らなりの価値があるのです。
このようなズレは、単なる個々の嗜好の違いにとどまらず、仕事のあり方や働き方に対する価値観の違いを象徴しています。リモートワークと出社のバランスを再考し、それぞれの役割に合った働き方を模索することが求められていると言えるでしょう。