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#4-2 北海道名寄市あったかICT物語【シーズン4(運用編②_医療機関編)】

エピソード2「そっと寄り添い架け橋になる 患者総合支援センター(前編)」


執筆・インタビューを担当するのは・・・
こんにちは!
「名寄市医療介護連携ICT導入・運用アドバイザー」の大曽根 衛(地域包括ケア研究所)です。
シーズン4では、2021年7月の本格導入から2年が経った名寄市医療介護連携ICTの特に医療機関での運用状況について、見ていきたいと思います。

エピソード2・エピソード3では、名寄市立総合病院の患者総合支援センター(旧地域医療連携室)で主に退院支援を担当されている看護師の納村歩美係長ソーシャルワーカーの大松芽衣さんにお話を伺います。

大松芽衣さん(左)と納村歩美係長(右)

―大曽根 衛(一般社団法人地域包括ケア研究所)
納村さん、大松さん、こんにちは。今日はよろしくお願いいたします。

―納村さん・大松さん
はい、よろしくお願いいたします。

―大曽根
最初に、それぞれ簡単にご経歴を教えていただけますか?

―納村さん
私は、看護師として旭川医科大学で10年強働き、名寄に転居してきて最初の1年は病棟で働いたんです。その後、今の部署に移って4年くらいです。

―大曽根
ありがとうございます。
大松さんはいかがですか?

―大松さん
はい、私はソーシャルワーカーなのですが、札幌出身で1年半くらい前から名寄に移り、名寄市立総合病院に就職しました。最初はPSW(精神保健福祉士)として、その後MSW(医療ソーシャルワーカー)として働いています。

―大曽根
ありがとうございます。
続いて、患者総合支援センターのお仕事の概要や役割について簡単に教えていただけますか?

★患者総合支援センターの役割

―納村さん
はい。
名寄市立総合病院は、道北3次医療圏の中核病院として、主に救急医療・急性期医療の中心的な役割を担っています。

名寄市立総合病院

そのため、地域の医療機関や福祉関連機関と連携し、患者さんが地域で安心して療養生活を送っていただけるよう通院から入院・退院まで一貫して調整・支援させていただいています。

業務として、「①地域連携」「②入退院支援」「③医療介護福祉相談」の3本柱になっています。

「①地域連携」が広域連携を行うための窓口として、必要な場所で最適な医療サービスを受けることができるように、地域の医療機関と連絡を取り合って、調整・支援し、時に患者さん・ご家族からのご相談に対応しています。

「②入退院支援」は入院支援部門と退院支援部門の2つに分かれています。

「入院支援部門」は、患者さまが安心して入院し治療や検査が受けられるよう、入院予約時に面談し不安や疑問が解消できるよう支援しています。

「退院支援部門」では、入院患者さんやご家族の不安やお困りごとの相談を受け、それぞれの状況に応じた支援を行います。ご自宅への退院や施設入所など退院後の生活がより良く送れるよう病院内や、地域の様々な職種と連携し調整します。また、治療やリハビリ等に伴う転院が必要な場合には他病院と連絡調整を行っています。

「③医療福祉相談」は全体が関わってくるところで、病気によって起こる様々な問題について相談をお受けしています。開示やセカンドオピニオン、がん相談など療養生活の支援を行っていて、がんサロンなどの運営もおこなっています。

患者総合支援センターの職場の様子

―大曽根
ありがとうございます。
お2人はどちらの担当になりますか?

―納村さん
2人とも退院支援を担当しています。

―大曽根
主に1日はどのような動きをされているんですか?

―大松さん
私はまず、前日の即日入院の方や当日入院予定の方の情報を見て、急ぎで対応しなければいけない方がいるかどうかを確認したうえで、午前中は、在宅でのサービスを受けている方を中心にまわり、その合間で、元々入院してる方の動きを確認したりしていますね。

午後は、面談業務や所属してる委員会への出席などでしょうか。

―大曽根
ありがとうございます。
納村さんはいかがですか?

―納村さん
そうですね、係長になってからは動きがだいぶ変わりました。
担当患者さんもいらっしゃいますが、全体の把握の仕事がメインになっています。

気になるケース、少し気を付けて見ておいた方が良いところがあると、その患者さんのカルテの確認や、担当メンバーに声掛けをしたりするようなサポート的な役割が多いです。
休みのメンバーのサポートなどもですね。

―大曽根
なるほどですね。
ありがとうございます。

少し話は変わりますが、日々の仕事の中で大切にしてることや意識として心掛けているようなことなどお聞きしても良いですか?


★患者さんのことがやっぱり好き!

―納村さん
はい。
母が体調を崩したこともあって、「看護師になりたい」と小学校の頃からずっと言ってたらしく、自分自身が入院したことなど、看護師さんって良いなと感じるような原体験がいくつかあります。
そういったことを経て、患者さんとの距離感は比較的近い方なのではないかと思います。

旭川医科大学でも、がん患者さんの看護を深めたいと思い、認定看護師や専門看護師を取得しようと思っていました。

そんな矢先に名寄への転居が決まり、少し燃え尽き症候群のような状態になってしまっていた時期があったんです。
「もう何を目標にやっていったら良いんだろう」と。

インタビューに答える納村歩美さん

名寄市立総合病院には臨時職員として入職したのですが、正職員になりましょうというタイミングで、日下看護部長との面談があり、その機会が大きかったように思います。

部長から、「何したいの?」と聞かれた後に「何を大切にしてるの?」「どういうところを見て看護してるの?」といろいろ掘り下げてくださったんです。

その時に、「患者さんに寄り添った看護がしたい!」と伝えました。
患者さんのことがやっぱり好きなんです。患者さんが元気になって帰っていく、もちろん叶わなかった時でも最期の時を一緒に過ごして、一緒に楽しんだり喜んだり怒ったり、そういうことを経験できるのがやりがいなんです」と。

元々前の病院でも退院支援や介護保険に関連する業務や在宅調整などもしていた話をした際に、「退院支援ってどう?」って言ってくださったんです。

―大曽根
いろいろ想いが伝わって、提案してくれたんですね。

―納村さん
「向いてるんじゃないかなあ?」って言ってくださったのを覚えています。「あ、確かに!」って思いました(笑)。

病棟にいることで見えてきていたこともいろいろあったので、自分の中でも決断でき、異動となりました。

患者さんとお話したり、患者さんと「どうしていったら良いんだろうね」という相談に乗ったりできることがやりがいで、おひとりおひとり、とっても患者さんが大好きになります。

もちろん、その時その時で「これは大変だな」などあるのですが、最終的にはすごくその患者さんのことが大好きになって。
家族の立場ではないですが、一緒に「こうしていったらいいね!」と話し合ったり、外来にいらしていたら「あー!元気でした?」みたいに話ができるのが楽しくて。
患者さんからも、治療の途中で抜けてこられて呼ばれて、「辛いんだよね」と話をしてくださる。

頼りにされたり、気軽に話してくださる関係になれていることにやりがいを感じますね。

―大曽根
シンプルになりたい気持ちと今感じていることが繋がっていて、とても素敵ですね。

大松さんはいかがですか?


★「そっと」寄り添える人、でありたい。

―大松さん
はい、私は納村さんのように上手に言葉にするのは苦手なタイプではあるんですが、いつも心がけているのは「そっと」寄り添える人間になりたい、ということです。

―大曽根
「そっと」というとどういうことですか?

―大松さん
未だに思い出すと色々な感情があふれてしまうのですが、大学3年生の時に大切な方が突然の病気で倒れてしまって。

とても親しくしていた方だったこともあり、ショックが大き過ぎたせいで、自分のこころや体に異変が出てしまいました。

そんな折、当時所属していたゼミの先生が私の様子に気付いてくれて、そっと「どうしたの?」と声をかけてくださったんです。
その方は、現役のソーシャルワーカーさんだったんですけど、私の心がすごく軽くなり、こういう人になりたいって強く思ったんです。

実は、それまでは特別支援学校の教員になりたくて頑張ってたんですけど。

インタビューに答える大松芽衣さん

―大曽根
本当に道が変わるぐらいの出来事だったんですね。

―大松さん
そうなんです。

教職になろうと思ってきたので、「ソーシャルワーカーって何だろう?」という感じからでした。大学3年の秋くらいだったのですが、そこから一気にのめりこんでいきました。

最初は、「こういう大人になりたいな」というところから始まりました。
その方は、何をしてくれた訳ではなく、ひたすら話を聞いてくれたのですが、それによってその翌日から何も症状が無くなり、それまでずっと寝れなかったんですが寝れるようにもなったんです。

自分にとってメンターになってくださる方たちにとても恵まれたこともあるのですが、こういう大人になりたいというイメージを持たせてくださったことに感謝しています。

そして、すぐにSOSを発することができない方であっても気づいてあげられるアンテナをちゃんと持てるようになりたいと、常に意識しています。

―大曽根
そうだったのですね。
聞かせてくださって、ありがとうございます。

そっと気付いてあげることができるアンテナですね。

―大松さん
はい、私は最初入職したのが精神科でしたが、様々な方に関わる中で「少し調子崩しちゃいそうだな」というちょっとしたサインを自分でも吸収できるようになっていった感覚があり、その経験は今にもつながっているように思います。

「大丈夫です」「介護できます」って言葉ではハキハキ話されていても、表情の暗さなどを感じ取り、自信が無さそうな場面に少しずつですが、そっと寄り添えるようになってきているのかなと感じています。

―大曽根
ありがとうございます。

ひとつひとつ大事な事ばかりだと思うんですが、今のお仕事の中で印象に残っている出来事など教えていただけますでしょうか。

★地域の力って本当に偉大

―納村さん
そうですね、先日の地域連携会議in名寄の事例でも挙げさせていただいたケースは印象に強いです。

自宅に帰ることが難しいと皆が思っていた患者さんが、ICTがあったことも大きかったですが、様々な関係者が一致団結して、一度帰宅できたことはとても感動的でした。

納村歩美さん

―大曽根
たしかに、とても良いグッドストーリーでしたよね。

―納村
本当に地域の力が偉大だなって感じました。

もちろん病院として、医療者としてもっとできたことってあったとは思うんです。
充分な対応ができなかった状況もあった中でご帰宅されたところを、地域のみなさんが救ってくれたというか、引っ張り上げてくれたことに本当に感謝しています

私たちの仕事は、在宅に行きたくても行けない事が多く、お願いする事が多くなってしまうので、「すみません」と申し訳ない気持ちと、「お願いします」と頼りにしてる気持ちの両方があって。

―大曽根
そういうことですね。

―納村さん
はい、先日もこんなことがあったんです。

がん末期のおばあちゃんなのですが、身内の状況的に家に帰ることが難しそうで、でも帰るタイミングを見失ったら二度と帰れなくなってしまいそうだったんです。
もし娘さんが帰って来れなかったとしても、可能性を探ってみようと、家の状況をおばあちゃんと一緒に見に行こうと、一緒に外出したんですよね。

実際に家に行ってみたら、そのおばあちゃんが意外と元気にしゃかしゃか動くんですね。
何とかなる可能性も持ってはいましたが、「あれこれどうなってんのよ?」ってよく動いていたんです。

病院の医療者が「駄目だ」って言ったら駄目になってしまうんだなって強く感じました。
医療者は、リスクを冒したくないので、どうしても否定から入りやすいんです。
私自身も看護師なので、自然とネガティブに見てしまう傾向はあり、「できない。無理」って思わないようにして、「どうしたらできるんだろう?」と捉え方をするように心がけているつもりですが、改めてそのおばあちゃんと一緒に家に行って強く感じました。

―大曽根
傾向やしがちなことを意識することって簡単でないですが大切なことですね。

大松さんはいかがですか?

★「やってくれてありがとう」よりも大切なこと

―大松さん
そうですね。
それこそまだここに来て短いですけど、いろいろ印象に残っていることは多いです。

ちなみにですが、「ありがとう」って言われるのが、この仕事していて少し苦手に感じることがあるんです。

大松さん(左)と納村さん(右)

―大曽根
え、そうなんですか。

―大松さん
最近特になのですが、「(ずっと家族で悩んできて、)その選択を決めてよかったです」といったような、ご自身が決めたことを支援できたことに対してフィードバックいただいた時に特に「よし!」って感じるんです。

「やってもらってありがとう」よりも、転院するか、手術するか、在宅で看るか悩んでたけど、私やサービス事業者の方と話したことで「これなら連れて帰ってみようかな」と決断され、ご家族やご本人から「良かった」という言葉が返ってきた時にとてもやりがいを感じるんです。

―大曽根
ありがとうございます。

本当にお2人ともタイプは違いますが、一人ひとりを大切にしながら、ひとつひとつを丁寧に関わられている様子が伝わってきます。

その他、仕事の様子について教えてもらえますか?

★試行錯誤しながらクリエイトする

―納村さん
例えばこれ、病棟の看護師さんと作ったんです。

病棟と協働で作成した退院後の患者さん用の服薬管理ボード

―大曽根
えー素敵ですね!

―納村さん
服薬を自分で行うのが難しいけど「自分で飲む。」というおじいさんのために作ったんです。
ちなみに、この「のんだよ。」って私の絵なんです(笑)。

―大松さん・大曽根
え、かわいい!

―納村さん
最終的に病棟の看護師さんが仕上げてくれたんです。

―大曽根
これ良いですよね。ヘタウマ感など、ぴしっとしてない感じも。

―納村さん
はい、あったかい感じがして、これすごくお気に入りなんです。

―大曽根
こういうことも仕事の一環ですよね。

―納村さん
はい、これも仕事の一環です。

お一人暮らしの患者さんが家でどうやったらお薬飲めるかを、病棟の看護師さんと一緒にどうしたらいいか考えて、協働でつくりました
高次脳機能障害だったので、脳外の認定看護師さんなどいろいろな方に相談もしながら、試行錯誤をして完成しました。

それを使って自宅で生活をされているので、本当にうれしいです。

―大曽根
いやー素敵ですね。

その方にとってどういう状態がいいのか、様々な人と話しながら実際の環境を創っていくというのは、けっこうクリエイティブな仕事ですね。

―納村さん
個々に合わせて動くので、そう言ってくださるとうれしいです。

―大松さん
え、かっこいい。クリエイティブって言われることないですね、私たち。
たしかに、時には現場の司令塔にもなるし、物を作る必要があったら作ったりします。

―大曽根
クリエイティブワーカーだと思いますよ。

―納村さん・大松さん
わ、ありがとうございます。


前編は、主に患者総合支援センターの業務の様子やお2人のお仕事の様子や大切にされていることなどに焦点を当ててお聞きしました。
後編は、医療介護連携ICTに関することやこれからのことなどもお聞きしていきたいと思いますので、お楽しみに。

 

 ★★名寄市あったかICT物語の構成★★

【シーズン1(導入前夜編)】

·        エピソード0:「名寄ICT物語、始めるにあたって」

·        エピソード1:「つながったら動いてみる」

·        エピソード2:「焦りとICT」

 【シーズン2(導入編)】

·        エピソード1:「想いをカタチへ①」

·        エピソード2:「想いをカタチへ②」

·        エピソード3:「名寄医療介護連携ICTの概要」

·        エピソード4:「ケアマネジャーから見たICT①」

·        エピソード5:「ケアマネジャーから見たICT②」

·        エピソード6:「医師としての紆余曲折の全てが今につながる」

·        エピソード7:「孤独に陥らないあたたかいシステム」

 【シーズン3(運用編)】

·        エピソード1:「名寄ならではの訪問看護を探究し続ける」

·        エピソード2:「訪問歯科がある安心感と連携のこれから」

·        エピソード3:「利用者さんの笑顔のために」

·        エピソード4「前編:薬剤師だから創り出せる、在宅でのあたたかい連携のカタチ」

·        エピソード5「中編:薬剤師だから創り出せる、在宅でのあたたかい連携のカタチ」

·        エピソード6「後編:薬剤師だから創り出せる、在宅でのあたたかい連携のカタチ」

 【シーズン4(運用編②~医療機関~)】

·        エピソード1「道具の使い方と生身の情報~風連国保診療所」

·       エピソード2「そっと寄り添い架け橋になる患者総合支援センター(前編)」

·       エピソード3「そっと寄り添い架け橋になる患者総合支援センター(後編)」

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