なかた

出版社→(略)→Webメディア記者/文春オンライン主催の「あなたが書きたい『平成の名言』と『平成の事件』は?」で最優秀賞。週刊Gallop主催の「週刊Gallopエッセー大賞」で最終候補ノミネートなど。

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出版社→(略)→Webメディア記者/文春オンライン主催の「あなたが書きたい『平成の名言』と『平成の事件』は?」で最優秀賞。週刊Gallop主催の「週刊Gallopエッセー大賞」で最終候補ノミネートなど。

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ファドを聴こうと銀座「ヴィラモウラ」へ行ってきたとのこと

ヒップホップ、なかでもニュースクールに岡惚れしてきた俺にとって、長らく民族歌謡は縁遠い存在であり、「ファド」なる音楽ジャンルを知ったのもつい2、3年前のことだった。 魅力に気付くきっかけとなったのは、いしいひさいち御大が描いた漫画『ROCA』である。 漫画を読み終えてからというもの、一時、音楽配信サイトでファドを聞く日々が続き、次第に、「生で一度聴いてみてえな」という思いが募った。しかしファドは日本においてマイナーな音楽ジャンルであり、機会はなかなかない。 厳密にいえば

    • 早稲田松竹で『汚れた血』を観る

      子供のときに感銘を受けたけれど、大人になるとイマイチだった。あるいは、子供のときはイマイチだったけれど、大人になると感銘を受けた……。なんてことは、作品の受容において珍しくない。 ◆◆◆ 14歳の冬、俺は『汚れた血』を初めて見た。 母からもらっていた昼食代を節約して浮いたお金を携えて、自宅から徒歩5分ほどのレンタルビデオショップ「ポパイ」に向かうのが当時の金曜日の習慣。サービスデー、たしか10本500円の旧作VHSを借りるのが生活における数少ない楽しみで、そうしているう

      • ホラー映画において「新しさ」はどれだけ必要なのか

        Xのタイムラインに流れてきたツイート。 これを見て、酩酊した脳みそでグルグルした考えを手癖で書き留める。 ◆◆◆ 「真新しさ」の定義が棚上げされているのはさておき……ホラーは新奇性が求められる/られてきたジャンルといえる。なんで? 大半のホラー映画(なかでもゾンビ映画)が、反復、リメイク、焼き直しでつくられているからだ。“概ね同じ”だからこそ、類型からの差異に目が向けられる。 単調な反復と作り直しを超えた「新しさ」。そこにジャンルの魅力があるし、批評的な意味合いでの価

        • 映画『箱男』を観る

          小説『箱男』の映画化企画が再始動していると知ったのは、たしか去年の夏頃だった。同じニュースの中で、だったか、スポンサー募集をかけていたような記憶もある。 石井岳龍(いまだに慣れない)も安部公房も好みの作家である俺はといえば、その報を受け、喜ぶよりも先に「どうせ、また頓挫するんだろうねえ……」なんて気持ちになった。 「スポンサーをネットで募る状況ってことはさあ……」 が、その数ヶ月後にはベルリン映画祭でワールドプレミア。 「おいおい本当に完成させちゃったのかよ……」

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          サスペンダーズ単独ライブ『㫪』を観るとのこと

          早稲田大学で俺が仲良くなれたごく少数の人間には、ある共通点がある。なんというか、物事を斜めから面白がろうとする姿勢、みたいなものを皆が持っていたとでもいうか。 同じ空気感を感じたのが、「馬場歩き(高田馬場駅からキャンパスまでのおよそ1.5kmを徒歩で往来するという早大生ワード)」というタイトルでラジオをやっていた芸人「サスペンダーズ」からだった。 過剰な規範意識の強さが垣間見える依藤、反面、社会規範からの逸脱ぶりをユーモアのある詭弁で正当化する古川。センス溢れる言葉づかい

          サスペンダーズ単独ライブ『㫪』を観るとのこと

          男、齢30にして生活に日傘を導入する

          コンビニで買ったビニール傘を重用する人間として、傘に1000円超の金額を支払うことにひどく躊躇がある。 して、この酷暑を少しでも緩和すべく日傘を買おうと店に行っても、閉じたり開いたり、生地を触ったりしては「いいな」と思いながら、値札の数字を見ては「うーん……」「やっぱりええか……」と、何も買わず帰路についてしまう。そんなことを4,5回繰り返した。 いや、それにしたって、暑い。陽射しが強い。体力の衰えもあってか、朝の散歩(1km)に出かけるだけでひどく疲弊。その後の仕事に支

          男、齢30にして生活に日傘を導入する

          どこか胡散臭い印象があるものの…『東洋医学はなぜ効くのか』を読む

          国内有数の薬品メーカー「ツムラ」が製造販売する漢方薬の供給量が、ここ20年で約3倍にまで伸長しているという。 需要が拡大した要因は、医薬品不足か、健康志向の広がりか……。ハッキリしたところはわからない。が、なんにせよ、漢方薬のニーズは高まっている。 そうした世間の流れとは裏腹に、俺は漢方をはじめ、東洋医学なるものを基本的に信頼していない。 明白な化学式のもと製剤された「クスリ」の方に“効き”を実感できる“気がする”し、「人生のあらゆるステージに寄り添うことで、自然の叡智

          どこか胡散臭い印象があるものの…『東洋医学はなぜ効くのか』を読む

          あまりに美味しい「鰻」について

          庶民の味方である吉野家ですら、鰻重にはとてつもない価格設定がなされている。明らかに物足りない一枚盛りで1108円、それなりのボリュームとなる二枚盛りが1922円、見た目だけで満足感のある三枚盛りが2736円。 貧乏な俺、目が丸くなる。広告モデルの藤田ニコルの笑みでは誤魔化せない凶暴な値段設定だ。 にもかかわらず、吉野家でも、コンビニエンスストアでも、オリジン弁当でも、街の至る所で鰻は訴求されている。別に天然鰻の旬ってわけでもねえのにさ。平賀源内に踊らせ続けられちゃってさ。

          あまりに美味しい「鰻」について

          オペラシティアートギャラリー「高田賢三 夢をかける」展へ行ってきたとのこと

          ファッションに興味を持った頃の俺にとってのスーパースターは川久保玲であるからして、高田賢三というデザイナーは、なんとなく山本寛斎と同じような括りというか、なんとなく過去の世代の人たちというか。そんな印象を持っていた。 近年の虎柄スウェット謎ブームが偏見に拍車をかけたところもある。とかく流行の理由、愛好する人の気持ちが理解できずにいた。 嫌悪してはないが、KENZOは、俺とは文化的背景が異なる人が好んで着ているブランド……。そんなイメージがあったのだ。異なるハビトゥス……。

          オペラシティアートギャラリー「高田賢三 夢をかける」展へ行ってきたとのこと

          都知事選’2024…俺が人生で二度目の投票をしてしまったワケ

          縁側に設けられた小さな書斎。肘掛けもない事務椅子に腰掛け、主に健康に関する本を熟読する祖父は、現役引退後、地方都市で政治家として3,4の任期を務めあげ、後、畑仕事に勤しみ、そして死んだ。 俺の政治に対する向き合い方は、彼の影響が大きい。 「選挙に与するんがそもそも体制を肯定する態度じゃけえの」 上京まで数日……珍しく酒を飲んでいた祖父が俺をアジってきた言葉である。そして、今も忘れられない言葉となっている。 思えば、議会で何もできなかった呪詛(祖父は社民党所属の超党派。

          都知事選’2024…俺が人生で二度目の投票をしてしまったワケ

          はたして俺ならどうできた? 映画監督のインティマシー・コーディネーター拒否問題

          主にドラマや映画の性的なシーンの撮影現場で、俳優の心情、演技面での不安をケアし、よりよい映像を撮れるよう調整する専門家、インティマシー・コーディネーター(IC)が注目されはじめて5年ほどが経つ。 いまだ、日本では数少ない専門職として紹介されるケースが多いものの、国営放送のドラマでもICが採用されていたり、その需要、重要性については、一定程度知られているといえよう。 ドラマや映画のスタッフロールでもよくクレジットされており、ジェンダーバランスやコンプライアンス意識なんて枕詞

          はたして俺ならどうできた? 映画監督のインティマシー・コーディネーター拒否問題

          「大ヒット中&めちゃくちゃ評判のいい映画『ルックバック』を観に行って最悪な目に遭った」を受けて

          2024年に入って、映画館のマナームービーでの啓蒙が「上映中のおしゃべりはご遠慮ください」「上映中はお静かに」から、「声は出さないで」といった内容へと変わっている場面に何度か遭遇した。 俺はといえば、劇場で他の観客がふっとこぼすリアクションを好意的に思っており、ーー上映中に携帯にかかってきた着信に対して「いま映画館なので……」と電話を切った女性には驚かされたがーーなんなら、それも含めての「劇場体験」ってやつじゃねえの? という立場。発声そのものを禁止する流れにははっきり反対

          「大ヒット中&めちゃくちゃ評判のいい映画『ルックバック』を観に行って最悪な目に遭った」を受けて

          なんでこんなに観客入ってねえの…? 『ザ・ウォッチャーズ』を観る

          人里離れた森を舞台に、アイルランドの民間伝承を取り入れた超自然ホラー『ザ・ウォッチャーズ』。 M・ナイト・シャマランの娘が(レオス・カラックスの長編デビューと同じく)24歳にして初監督作品を手がけたとのことで、人並みにシャマランが好きな俺は朝8:15の新宿ピカデリーへと出向いた。 公開からわずか数日しか経っていないにもかかわらず、観客は俺を含めて10人に満たず。いくら早朝の上映とはいえ、熱の入った宣伝(映画『ザ・ウォッチャーズ』の恐怖を体感できるイベントが下北沢で開催)が

          なんでこんなに観客入ってねえの…? 『ザ・ウォッチャーズ』を観る

          『体験格差』を読むとのこと

          休日に一緒に出かけたり、自宅で料理や酒を振る舞ってもらったり。仲良くしてもらっている上司との私的な付き合いが続いてはや数年が経つ。 そんな上司家には小学2年生の長男がいる。初めて会ったのは3,4歳の頃か。以来、彼と俺とは、お互い友達としてコミュニケーションをとる関係性を築いている。年齢なりに生意気なところもあるが、俺がプレゼントしたキーホルダーをランドセルにぶら下げてくれたり……とにかくかわいく、子ども嫌いだった俺にすら「子どもを持つのも悪くねえかもな」と思わせてくれる存在

          『体験格差』を読むとのこと

          神話/神格化を批判する映画としての『マッドマックス フュリオサ』

          思うように体が動かせず、本も読めなければ映画も観られない。おやおや布団から起き上がれもしないぞ、おいおい。抑うつの波に襲われ、当然noteも更新できずにいた数ヶ月。 が、「これだけはどうしても観に行かねば……」と、這うような気で映画館へと向かう。 俺は「怒りのデス・ロード」でマックスが背中に刻まれてしまう刺青を、自分にも彫る程度にマッドマックスシリーズが好きで、人生の支えにしてきたのです。 TOHOシネマズ新宿。きたこれ。 待ちかねたシリーズ新作というだけあって、気分

          神話/神格化を批判する映画としての『マッドマックス フュリオサ』

          アピチャッポン・ウィーラセタクンの個展「Solarium」へ行ってきたとのこと

          どの駅からも絶妙に距離があり、出不精の俺にとって“余程のこと”がなければ訪れることがない「SCAI THE BATHHOUSE」でアピチャッポン・ウィーラセタクンの展示が開かれていると知る。 アジアを代表する映画監督の新作映像が見られる。かつ、この機会を逃せばいつ見られるのかもわからない。これは“余程のこと”となる。 というわけで、山手線を降り、日暮里駅の西口から谷中霊園の脇をひたすら歩く 牧野富太郎といえば、高知県の生まれだったはずだけど、墓は東京にあるのな。 徳川

          アピチャッポン・ウィーラセタクンの個展「Solarium」へ行ってきたとのこと