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【短話】離職と転職【夜会④】

出張先で2回目の冬を迎える頃アパートに一通の封書が届いた。

嫌な予感がしたが取りあえず開封確認は後回しにした。それから次の日曜の朝、将来の魔王(予定)の少年が何か出来そうな気がするから頑張る特撮を正座で視聴した後封書を開いた。

悪い予感は当たるもので、中身は新しい雇用契約に関する書類が入っていた。

取りあえず海賊王になる(予定の)ゴム人間のアニメを優先するためテーブルに書類を置きチャンネルを変える。書類の内容を本能で拒否したがっている。

逃避の時間は容赦なく流れ現実と向き合う時間が訪れる、大きなため息を一つ。

ゆっくりと内容を確認する。やはり給与体系が変わる新たな内容だと分かると身体の力が抜け落ちた。

無言で立ち上がり台所の換気扇を回すとタバコに火を着けた。地方の小さな会社には何時もカツカツなのは知っているし近く施行される法律の内容も分かるが・・・

新しい契約書通りの給与体系だと大幅に手取りが下がる。出張先で独人、会社から離れ社長に抗議しようにも電話じゃ理解されまい。

現状をどれだけ改善しようと努力しようと我が社には分かる人間は居ない。社命で前任者が失敗した仕事を整理し客先から信用を勝ち取り、前任者が月100時間近くかけていた内容もほぼ残業無しで回せる所まで改善した。

そんな事を説明した所で理解できない社長とは話になら無い。

それでも社長とこの会社を大きくしたかった。どんなに理不尽な出張でも長期家を空けることとなり家族と会えなくとも、いつか社長と笑える日が来ると思っていたが・・・だけど、その思いは届かなかったし結果としては減給だ

理不尽

今の職場をいきなり放棄するわけには行かない・・・今は取りあえず契約書にサインし送り返す他無い。

理不尽

其からの1ヶ月は理不尽に折れそうな心のまま生活し仕事した。そして理不尽に立ち向かう方法に至る。

退職だ!

あーーなんか給料安くてやってられるか!

モトモト安い給料に我慢して働いてたのに更に安くされてやってられるか!

そう心が決まると後は早い。

退職届を書きとっとと会社に送る。そして出張先の客先へ会社を辞め九州へ帰る旨を伝える。

出張先で次の仕事を探せる余裕も時間も無いがどうにかなるだろう。ってか今時ネットで何とかなる・・・気がする。

まぁしかしあれだけ思い悩んだ事柄も解決方法が見えるとどうでも良い問題へとランクが下がる。

晴れやかな気持ちで其から退職日を迎えるまでの数日を過ごした。次の職場探しには少し手こずりはしたのだが。

職場での最終日を終え、引っ越し荷物を自宅へ送りアパートを引き払った。

新幹線に乗り込む前に最後にある人と会食をした。

その後九州行きの最終列車に乗り込んだ、20年に及んだ当ての無い長期出張生活の終わりを迎え最初に場所で再スタートを迎えることとなる。

数年振りに自宅でのんびりと無職透明な生活を過ごし、社会人になって初めて何にも縛られない日々を家族と過ごした。無駄に朝まで眠り、昼からドライブをし本屋で買い物をした後、娘のバイト終わりに迎えに行く。何気ない穏やかな数日の後、書類が届いた。

新しい会社との雇用契約書だった、内容を確認しサインをした。これから新しい生活が始まる。無職透明な穏やかな時間にサヨウナラだ。

今までは九州の一地方の小さな会社に勤め東京湾沿岸の地域で仕事をしていた。のだが、今回は新たに勤める会社は東京湾が見える場所に有り、勤務地は九州の某所だ。今までと間反対になるのが可笑しい。

給料も職場も内容も今までとは比べられないほど待遇が良い。今までが何だったのだろう?笑いが漏れそうになるが、一般的な待遇になっただけなのだが。

ついに楽しいは正義!と叫びアドレナリン全開ジャーで釣りバカへとジョブチェンジする新たな扉が開かれたのだ。




たのしいは正義!この言葉を胸に楽しめるコンテンツで在りたいとおもいます。(*´ー`*)