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気狂いピエロの決闘 -Balada triste de trompeta-
一つの愛を奪い合う、二人の壊れた道化
残酷なまでに美しく、幻想的なまでにグロテスクな戦い
そこには狂気にまで人を追いやるほどの...
心が耐えきれないほどの激しい感情がぶつかりあった…
私の中でかけがえのない映画の一つ
『気狂いピエロの決闘 -Balada triste de trompeta-』
「笑わせなければ愛されない」
偉大な道化師だった愛する父の姿を追い続け
しかし「笑わせるには悲しみを知りすぎた」…
涙のメイクに孤独を隠す心優しい
泣き虫ピエロ… ハビエル
「笑わせて愛され、笑われることでしか存在を確認できない」
しかし「笑に耐えきれなかった」…
笑いの天才として子供たちに愛されながらも
その反動の暴力で愛人ナタリアや周りを支配する
怒りのクラウン… セルヒオ
同じサーカス団の曲芸師ナタリアをめぐり
一つの愛を奪い合う
愛と怒りと悲しみの狂気に突き動かされた
二人のピエロの壊れた愛への渇望…
怒りは悲しみを殺そうとし
悲しみは怒りを許そうとしない
どちらも救いとして愛を求め、奪い合い
狂おしい感情の果てに醜く変わり果ててしまう…
しかしナタリアは二人から逃れ自由になろうと身を投げ
重力に耐えきれず二人の愛は壊れてしまう…
かつてあった美しさは永遠に失われ
取り残された醜さだけが無力に笑い…途方に暮れて泣くだけ…
求めすぎるがゆえにすべてを失ったあまりにも悲しい結末...
この映画はスペイン内戦の悲劇を描いたとも言われるが…
私の心になぜにこれほどまで突き刺さったままなのか…
もちろんゴダールの『気狂いピエロ』も好きだが
わたしはこの『気狂いピエロの決闘』が好きだ…
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