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進化した交通事故AI予測とナビタイムジャパンの研究環境
🎄この記事はNAVITIME JAPAN Advent Calendar 2023の25日目の記事です。
はじめに
こんにちは、サバ缶ほうれん草です。
ナビタイムジャパンでAI/統計数理分野の研究開発を担当しています。
早いもので2023年も残りわずかとなりました。
このnoteでは、私が今年担当した案件の中で特に印象深い「交通事故AI予測」についてお話し、その中で実感したナビタイムジャパンの研究環境の強みとあわせてお話しします。
交通事故AI予測
年間で2度に渡ってリリース
「交通事故AI予測」は、AIを用いて事故の危険が高い道路を予測する機能です。
入力データとして、警察庁の公開している事故データと、ナビタイムユーザーの走行実績や道路の特徴などを組み合わせています。
2023年1月には、旅行会社や貸切バス事業者向けのSaaS型Webサービス『行程表クラウド』の地図機能の1つとしてリリースされました。以前公開したnoteでも、そのときの経緯を詳しくお伝えしています。
そして10月には、予測対象地域を全国に拡大いたしました。
さらに、行程を作成するユーザーにわかりやすい注意喚起になるよう、予測結果となるデータをリニューアルしています。
高い精度で事故の危険地点を予測
予測では、全国から学習用の道路を抽出し、交通量に比べて事故の多い地点を「危険」と定義し、その特徴を学習しています。
都心にある交通量の多い地点よりも、交通量が多くないにも関わらず事故が多発している地点を「危険」と判断しやすくする仕組みです。
これによりユーザーは、「もし、この車でこの道路を通ったら」という潜在的な危険度を知ることができます。
検証データでは、
適合率:AIで危険と予測した道路の88%が、実際に危険である
再現率:実際に危険である道路の94%が、AIでも危険と予測できている
正解率:AIにより、全体の90%の道路を危険かどうか正しく予測できている
という結果が出ており、高い精度と言えます。
実際のサービスでは、作成したモデルで全国の道路全てに対して危険度の予測結果を出力し、車種ごとに危険な道路を出力して配信しています。
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それぞれから、危険度上位にあたる道路のみ抽出しています。
ナビタイムジャパンの研究環境の強み
次に、交通事故AI予測がどのようにサービス化に至ったかの舞台裏をお話することで、ナビタイムジャパンの研究環境についてお伝えできればと思います。
高度な自主性を発揮できる
きっかけは、所属している部門(AIによる研究開発やサービスリリースを担当)が「自由研究期間」に入ったことでした。2022年の8月ごろのお話です。
当時は、成果物が手持ちの技術スタックとリソースで出来る範囲のものになり、規模感や品質に限界を感じていました。
そこで、当時のプロジェクトマネージャーを中心に話し合って、チームでの動き方を見直しました。
その結果、結果、下記のように現状を整理して、新しい取り組み方を考えました。
これまでは、サービスを開発部門からの依頼ベースの研究開発が多かった。
質の高いものをリリースするために、発想を逆転させて、AIを研究開発している私達からサービス提案をする必要がある。
こうして、未導入の技術をひたすら試行錯誤し、新規の技術やデータを用いたプロトタイプの開発を行う期間が始まりました。
この間、緊急性の高いものを除いてサービス開発を原則行わず、研究に没頭していたことを記憶しています。
今振り返ると、自由研究期間を実現するにあたって、当時のプロジェクトマネージャーの尽力と、サービス開発部門の皆さんのご理解があったものと思います。
期間中に私は、警察庁の交通事故に関するオープンデータのことを知りました。
その後、数週間で社内にあるデータとオープンデータを結合し、学習と推論の試行錯誤を行いました。
2022年10月ごろに、デモページを作成して社内にデプロイし、チャットを通じて社内に投稿しました。
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ナビタイムジャパンでは開発者向けに情報を共有するチャンネルがあり、
作ったものを発表できる文化があります。
※実際の投稿を元に、内容を抜粋・加工しています
程なくして、投稿を見た『行程表クラウド』のプロジェクトマネージャーから連絡があり、2023年1月のサービスリリースに繋がりました。
その後、冒頭でお話したような全国展開や改良を経て、現在に至っています。
いい挑戦ならすぐにサービスになる
以上のようにナビタイムジャパンでは、「作ったもの」「動くもの」をベースにして、自分の取組を社内に提案し、期間を開けずにサービスリリースができます。
これが可能となる理由として、下記が挙げられます。
コードの品質を保ち、機能拡張やサービスの横展開が素早くできる準備をしていること
各サービス部門の意思決定が自律しているため、開発とレビューの回転を速められること
環境を活かすために
こういった環境を土台にして、研究開発部門・特にAIという専門性が高い分野を研究している部門は、どのようなことを心がけると良いでしょうか。
専門性の高い研究分野では、それを使ったサービスの実現像も研究開発部門が一番イメージしやすいという側面があります。
言い換えると、技術のことを関係者でよく共有していないと、「サービスをこう作ろう」という発案も難しくなるということです。
そのため研究開発部門から、
こんなことができるようになりました
ユーザーの課題をこのように解決できます
サービスへの組み込み方は、こういう形です
開発や運用で難しい点があるとしたら、この部分です
という提案が求められます。
振り返ってみると、交通事故AI予測も以上のような条件が揃っていたために、サービスリリースができたのだと思います。
おわりに:2024年も挑戦します
2023年は、生成系AIが世の中に普及するなどAIにとって節目となる年だったかと思います。
AIの技術発展が目覚ましい中で大切なのは、経路探索技術により、ヒト・モノ・情報といった移動する事象を瞬時に計算して、より有益な時間を生み出すという、ナビタイムジャパンが社会で果たすべき役割に照らして、どの技術をどう使うと最も有効になるか見極めることと考えています。
そして、どの技術が有効か考えるためには、移動の課題についていつも考え、価値あるものがユーザーに届くまで何度でも挑戦することが必要です。
幸いにしてナビタイムジャパンには、移動の課題とその解消法を考え続け、試行錯誤を繰り返せる仲間がいます。これまでお伝えしたように、高度な自主性を発揮でき・いい挑戦ならすぐにサービスになる環境も整っています。
この環境を活かして、2024年も経路探索・移動とAIを掛け合わせた観点から研究開発を進め、質の高い機能を皆様にお届けしたいと思います。