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「この電車間に合わないかも!?」を助ける機能 ~駅混雑による乗換時間遅延予測~

この記事は、NAVITIME JAPAN Advent Calendar 2024の 3 日目の記事です。

こんにちは、こんにゃくざむらいです。
ナビタイムジャパンでAI分野の研究開発とサービス開発を担当しています。

先日、『乗換NAVITIME』に新機能をリリースしました。
ルート検索結果で提示される乗り換え時間内に間に合わない可能性がある場合、駅の混雑による遅延を予測し、以下の提案を行います。

  • 混雑を考慮した推奨出発時間や到着予定時刻

  • 混雑する乗り換え駅を避ける代替ルート

今日はこちらの機能に関して、プレスリリースからさらに踏み込んで技術的なお話をしようと思います。


なぜこの機能が必要か

通勤や通学の際に「この駅人多すぎ…混んでて歩きづらいな…」と思ったことはありませんか?またはライブやイベントの始まりや終わりに「人混みすぎ!ちょっと危ないな…」と思ったことないでしょうか?

通勤ラッシュ時のJR品川駅改札前

そんな時に一番気になるのは「時間に間に合うか」「混んでいるところを避けられないか」ということですよね。こんな時でも安心して移動できるための機能を作成 & 提供開始しました!

なにをしているか

今回の機能は、ラッシュ時やイベントによる混雑が発生しても乗り遅れないよう、動的に適切な乗換時間を設定し、経路検索結果を提供します。

具体的には、以下のような仕組みです。

  • ユーザーが設定した徒歩速度(例:「ゆっくり」「せかせか」)より遅くなると予測される場合、余裕を持った検索結果を表示

  • 予測には、時間帯、イベント、駅情報などを基にした過去のデータを活用

例えば、ある駅に対する過去の検索数とその日の検索数から、この日のこの時間は駅利用数がこのくらいだな🤔というのを時系列予測モデルで推論しています。対象の駅が混雑すると推論された場合には徒歩速度も遅くします。例えばクリスマスや年末年始で通常よりも駅利用数(検索数)が増えれば、最大徒歩速度が遅くなります。結果的にユーザーには余裕を持った検索ルートが提示されます。

苦労&工夫したこと

主に時系列予測モデルでの推論結果を利用しますが、初めはそれだけでは予測精度がよくなかったため、ロジックによる補正を組み合わせて推論しています。

今回の機能では、曜日や季節を考慮した時系列予測モデルを利用し、平日や土日の混雑など定期的なデータの増減に対して、高精度な予測を実現しました。一方、イベントによる突発的な混雑については、時系列予測モデルだけでは対応が難しいため、検索数をもとにロジックで補正しています。

混雑予測においては、以下の2種類の検索数データを組み合わせています。

  • 通勤ラッシュなどの定期的な混雑:過去の検索数を活用

  • イベントによる突発的な混雑:未来に向けた検索数を活用

検索数の予測方法

特に、イベントによる急増の補正では未来の検索数を基にしていますが、当日や翌日の検索数に比べ、それ以降の検索数が大幅に減少する傾向があります。そのため、単純な補正では対応が難しい状況でした。

検索対象日時と検索を行う日時が離れるほど検索数も少なくなる

最終的には、過去の検索数を利用して、検索対象日時と検索を行う日時の間隔ごとに減衰率を計算して、その減衰を復元するように補正しています。

予測の結果

予測の結果は以下の図のようになっています。実測の方は1日ごとに記載していますが、予測の方は10/26時点で予測したものになっています。上記の工夫の甲斐あって1週間ほど先も精度よく予測できていますね!

検索数の実測と予測

こちらの予測を利用して、通学&通勤ラッシュによる混雑とイベントによる混雑で発生する遅延を考慮する経路検索結果を提供することができるようになりました。

実際の機能

実装された機能は、混雑により通常より遅れそうな場合に提供されます。到着時刻を指定した場合はより早い出発時間を提案したり、混雑駅を回避したルートを提案したりします。また出発時刻を指定した場合は、遅れることを考慮した検索結果が一目で分かります。実際に「時間に間に合わない」というご意見をいただいたルートに関して、この機能で余裕を持ったルートを提示することができました。

機能イメージ図(プレスリリース引用)

本稿執筆時点(11/20)でこの機能によって、より早い出発時間を提案された例です。茗荷谷駅から浜松町駅の経路検索で東京駅が混雑することによって、遅延する可能性があります。赤枠の順にタップしていくと余裕を持ったルートが提案されます。この経路や他の経路でどうなるかを、ぜひ実際にインストールしてお確かめください!

混雑を考慮した余裕を持った経路検索結果を提示する

今後の展望

今回は駅の混雑に着目した機能であるため、駅間の検索を行う『乗換NAVITIME』だけでなく、駅とスポット間の検索を行う『NAVITIME』にもぜひ導入したい機能です。
今後追加される際には、ぜひご活用いただければ幸いです。