新卒3年目のデザイナーが挑んだグッドデザイン賞 - その裏側と未来
この記事は、NAVITIME JAPAN Advent Calendar 2024 の21日目の記事です🎄
はじめに
こんにちはゴトです。
訪日外国人観光客向けのtoCサービスのデザイナーをしてます。
この度、私が担当しているサービス『Japan Travel by NAVITIME』がグッドデザイン賞を受賞しました!!🎉㊗️🎉
その備忘録として、受賞までのプロセスや注力したこと、自分自身がサービスとどう向き合ってきたのかをみなさんに共有します!
本記事では、グッドデザイン賞の取り組みを振り返りながら、サービスやデザイナーとしての経験をお話しします。デザインを学んでいる方や、グッドデザイン賞に興味を持つ方のヒントになれば幸いです。
賞を受賞した『Japan Travel by NAVITIME』の概要と魅力
サービスのコンセプトと特徴
『Japan Travel by NAVITIME』は、訪日観光のオールインワンアプリです。
旅マエの計画/手配から、旅ナカの経路案内、旅アトのプランシェアまで、個人旅行をシームレスに支援し、Webでも提供しています。
主な機能は、ドアtoドアのルート検索、徒歩ナビゲーション、カーナビゲーション、スポット検索(フリーWi-Fi、手荷物預かり所等)、観光記事、旅行プランニング、旅程投稿、モデルプラン、ホテル・アクティビティの予約などが可能です。13言語に対応しています。
本サービスはコロナ禍以前から提供を開始し、昨年(2023年)に10周年を迎えました。現在では、2024年3月の実績として、月間アクティブユーザー数(MAU)が170万を突破しています。また、2024年4月17日に日本政府観光局(JNTO)が発表したデータによると、同年3月の訪日外国人観光客数は308万人となっており、多くの訪日外国人観光客の皆さまにご利用いただいています。
対外的な評価と社会的影響
おかげさまで、『Japan Travel by NAVITIME』は先日開催された第8回ジャパン・ツーリズム・アワードにおいて、栄えある経済産業大臣賞を受賞いたしました。
日本特有の交通事情を考慮した情報提供や、旅のすべてをシームレスにつなぐサービスが評価され、旅行プラン作成だけでなくデータの取得が可能である点や、広域観光への貢献が高く評価されました。
ちなみにみなさん、TBSテレビの「ひるおび」やフジテレビの「Live News イット!」など、ニュース番組で訪日外国人観光客に人気のスポットやエリアを紹介する特集をご覧になったことはありますか?
実は、これらの特集で使用されるデータの多くに、『Japan Travel by NAVITIME』の利用データが活用されています!もしインバウンド特集をご覧になった際に「ナビタイムジャパン」という名前を見かけましたら、その元データは『Japan Travel by NAVITIME』のものです。ぜひ話の小ネタとして覚えておいてくださいね。
ユーザーへの価値提供だけでなく、サービス利用データを活用して地域の魅力発見にも貢献できている点をご評価いただき、さらにその点を発信していただけることを大変嬉しく思います。
グッドデザイン賞の評価ポイント
グッドデザイン賞の審査員の方からは、『Japan Travel by NAVITIME』が、訪日外国人観光客が日本の緻密で複雑な交通システムを使いこなす手助けをするアプリとして評価されました。さらに、旅ナカでの体験予約において、海外の予約サイトと連携する取り組みが、個人旅行を支える点で特に注目を集めました。
訪日外国人観光客の多様なニーズに応えるサービスの思想が、移動の便利さだけでなく、旅行全体の価値を高めるとして評価されました。
普段のデザイナーとしての役割
『Japan Travel by NAVITIME』を担当するまでの経緯
つらつらと、長年サービスに携わってきたかのように書いてきましたが、実は私自身、『Japan Travel by NAVITIME』のデザイナーとして関わり始めてからまだ1年ほどしか経っていません。
もともとは物流に関する部署で働いており、異動する形で今の事業に参画しています。
初めての異動ということや、異文化のユーザーがターゲットになり、異動の初めはとても大変でした。当たり前ですが、事業によって働き方が違ったり、対象の業界が変われば必要なドメイン知識も変わり、とてもドタバタした1年でした。
そんな怒涛の1年の中で、自分が携わった案件をいくつかご紹介します!
担当デザイナーとして取り組んできた案件
まず普段どんなことをしているか、ざっくりお伝えしますが私がやっている業務はおおよそ以下です。
新機能開発時や機能改善時のUXとUIの検討
バナーや広告などのグラフィック制作
利用者数や売上の向上のためのグロース施策検討
サービスの認知拡大やDLを増やすための広報活動
働きやすさ向上のための業務改善
ご覧の通り、幅広く様々な業務をしており、これ以外にも展示ブースの設計や、販促のためのチラシ/パンフレットの作成などもしています。
案件1:『Japan Travel by NAVITIME』10周年キャンペーン
冒頭で昨年10周年を迎えたとお伝えしましたが、その際にキャンペーンを実施しました。案件の立案から、チーム内でのアイデア発散を目的としたミーティングのファシリテート、キャンペーン関連のクリエイティブ制作まで、すべて自分が担当し、非常にアグレッシブに取り組みました。(めっちゃ大変でした)キャンペーンの目標設定にも関わり、目標達成に向けた施策を考えたりと、さまざまな面で関わらせていただきました。
案件2:課金導線別LPの新規作成
また私はサービスを成長させるためのチームに所属しており、サービスの売上向上に向けた案件にも携わっています。売上がないと、たとえ優れたサービスでも提供を続けることができないため、このような施策は非常に重要だと考えています。
この案件では、課金導線となる機能ごとの紹介ランディングページ(LP)を作成するもので、チームのメンバーと一から構成を考え、作成しました。ユーザーがプレミアムコースへアップグレードする際に、できるだけ迷わず魅力を伝えることを意識した結果、以前のLPよりもアップグレード率が約130%増加し、非常にうれしく感じています!
案件3:ナビゲーション機能のリニューアル
『Japan Travel by NAVITIME』はもともとシンプルなカーナビ機能を提供していましたが、アプリユーザーが投稿した旅行プランの約10%が車を使って地方を巡るプランであったことや、ユーザーからの要望を受けて、今年リニューアルしました。
基幹となる機能はナビタイムジャパンの『ドライブサポーター by NAVITIME』を元にしていますが、仕様検討からUI設計まで携わり、『Japan Travel by NAVITIME』にふさわしいカーナビを実現するために調整しました。(UI設計の参考として、世界中で使われているカーナビの調査がとても楽しかったです)
こうして、サービスに携わっている期間は短いですが、チームの方々と日々協力しながら、日本に旅行しにくるユーザーによりよいサービスを提供するために邁進し続けてきました。
グッドデザイン賞への挑戦 - プロセスと舞台裏
応募に至るまでのきっかけとその後の流れ
さて、デザイナーとしてサービスにどう向き合ってきたのかということはお伝えできたと思うので、そろそろ本題に入りたいと思います。
そもそもサービスをリリースして10年経ってなぜ今になって応募したのか、気になった方いらっしゃいませんか?
結論からお伝えすると
「世の中トレンド」「ユーザー利用実績」「サービス提供」「データ活用」
が揃ったタイミングとなったためです。
昨今、インバウンドの盛り上がりが見られますが、ナビタイムジャパンとしてもコロナ後に『Japan Travel by NAVITIME』が急成長を遂げ、コロナ前を上回る成果を上げています。現在では、プランニング→旅ナカの予約/移動がシームレスに提供できるようになりました。
また、たくさんのユーザーに利用していただけることで、インバウンドデータを社会に還元できるようにもなりました。さらに、地方のインバウンドを特集するテレビ番組などでメディア露出が増え、日本国内の地方観光資源への注目を高めるきっかけを作れていると感じています。
これまでもグッドデザイン賞への応募を検討していましたが、ナビタイムジャパンでは、応募するサービスを厳選しつつ、時期を見計らって応募しています。
実際のグッドデザイン賞の審査の流れとしては、1次審査と2次審査があり、無事に通過できればグッドデザイン賞を受賞し、その後一般公開向けの対応が行われます。デザイナーとしては、それぞれのフェーズでクリエイティブを作成しています。
審査パネルや展示ブースの工夫
1次審査では画像を3枚作成し、2次審査ではA2パネルとスライドショー形式の動画を作成しました。
実際に制作したアウトプットを詳しくはお見せできませんが、以下のものを作成しました。
審査の時のクリエイティブで工夫した点としては、「どんなサービスか一番始めにわかること」「サービスのトーンをクリエイティブに落とし込むこと」を意識しました。
審査員の方もおっしゃっていましたが、1次審査は応募数が非常に多いため、最初の1枚でサービスの特徴がしっかり伝わることが重要だと感じています。
私が制作した1次審査用のクリエイティブでは、訪日旅行をテーマにしたことがすぐにわかるよう、富士山の写真を使用しました。また、旅マエから旅アトまでサポートするオールインワンのサービスであることを、キャッチコピーで伝えています。さらに、サービスの強みが経路案内であることを表現するため、スマホのキャプチャには路線図やルート線が引かれた画面を使いました。
また、デザイナーとしてサービスのトーンを反映させることにも意識を向けていました。
例えば、『Japan Travel by NAVITIME』では藍色を非常に重要な色として扱っています。藍色は奈良時代から親しまれてきた歴史ある色で、伝統文化からポップカルチャーに至るまで、日本観光の深い歴史を表現しています。また、サービスとして日本に関連するさまざまなコンテンツを提供するという意図も込められています。
さらに藍色は多くの衣装に使われていることから、誰にとっても使いやすいサービスとして表現するためにも重要な色として位置づけています。
このような背景から、審査用のクリエイティブでも藍色をメインカラーとして一貫して使用していました。(色が濃いため、レイアウトを組むのが非常に大変でした...)
一般公開用の展示ブースでは、「お金をかけずよく魅せる」ことを意識しました。予算を多くかけられるわけでは無かったので、パネルだけでできることを模索しながら制作しました。
あらかじめお伝えしますが、予算をかけないというのは手を抜くことでは無いと思っています。予算のあるなしに関わらず、クリエイティビティを発揮することが大事だと個人的には思っているので、できる限り尽力しました。
制作の中で大事にしていたのは、以下の3点です。
「パネルが見やすいような角度」
「操作するスマホとアプリでできることの情報を近づける」
「配線を隠す」
展示パネルのレイアウトは、サービス利用の流れからデータを蓄積・分析し、それを地域貢献に活かし、さらに訪日外国人観光客を増やしていくという循環を伝えたかったため、少し見慣れないレイアウトになってしまいました。
しかし、設営をしていた同業者の方がブースの写真を撮ってくださり、とてもうれしく思いました。その方と実際に交流もできたので、尽力した甲斐がありました!よかった!
審査対応を通じて得た学びと次へのステップ
審査対応で得た学び
今振り返ると、改めて大事だと思うことが2つあります。
・慣れない案件であるほど、プロトタイピングをたくさん早く行う
・これで伝わるかを自分に問い続けブラッシュアップをし続ける
この2つは当たり前のことではあるかもしれませんが、やっぱり大事だなと思いました。
特に今回の案件では、プロトタイピングを早く沢山行ったことがよかったと思っています。
初めての審査対応で展示ブースを内製することになり、これまでサービスの背景から全体をまとめることにあまり慣れていなかったため、最初は不安でした。
ブースのモックを作成する際には、いくつか異なる角度のパーツを作って斜面の調整を行ったり、小さなスケールのモックを作成して全体感を確認しながら余白を調整したりと、たくさんプロトタイピングを行った結果、不安要素を取り除くことができたと思っています。
今後も慣れないことほど、プロトタイピングを意識して取り組んでいきたいと考えています。
次なる目標へ向けた新たな一歩
今回の受賞は、サービスの一定の評価を得たことを示す重要なマイルストーンですが、これでゴールではありません。むしろ、受賞を契機として見えてきた新たな課題や挑戦が、これからのサービスの成長への原動力になります。
例えば、現在対応している13言語のユーザーに対して、さらに使いやすい体験を提供するにはどうすればよいか。また、訪日観光の需要が多様化する中で、地域の観光資源をどのように活用していくか。こうした課題に対し、デザイナーとして具体的なアイデアを生み出し、サービスの可能性を広げていきたいと考えています。
さらに、グッドデザイン賞を受賞したことで、社内外での認知度が高まりました。この機会を活かし、他部門や外部パートナーとの連携を強化し、より多くの視点を取り入れることが今後の目標の1つです。グッドデザイン賞で得た経験を活かして、ユーザーの心に届く体験を生み出し、より良い訪日旅行を提供できるよう、これからも頑張りたいと思います!!!
(余談ですが、実は私が新卒1年目の研修を終えた時に、講師の方や先輩に3年以内にグッドデザイン賞を取ると目標を宣言していました。
1人の力では取れないのに烏滸がましいなと、今となっては恥ずかしい限りです。。。
ですが図らずも今回、その目標を達成できたので個人的はとても嬉しいです!
今回自分はいただいた機会に後から乗っかっただけなので、今度は自ら新しいサービスを立ち上げてもう一度グッドデザイン賞が取れるようにも頑張りたいと思います!!)