「ふりかえり」をやったことがないチームに「ふりかえり」を実践することで「ふりかえり」に対してのイメージを変える
こんにちは、青春パンクです。ナビタイムジャパンでナビゲーションエンジンの研究開発をしています。
本記事の主題の「ふりかえり」は、「リトロスペクティブ(Retrospective)」とも呼ばれ、プロジェクトやチームの活動を振り返り、改善点や学びを見つけ出すための会議やプロセスを指します。これはアジャイルな開発方法論やスクラムなどのフレームワークで一般的に行われる活動です。
本記事では、ふりかえりに対してポジティブでないイメージがあり、ふりかえりを行っていないチームに、ふりかえりを導入した事例についてお伝えします。
ふりかえりに対してマイナスなイメージがあったり、ふりかえりをやったことがなかったりといった理由でチームにふりかえりを導入するかどうかを考えている方の参考になれば幸いです。
経緯
私は、2021年に新卒で入社してから2年半の間、別の研究開発チームに所属していました。そして、2023年の10月から現在の研究開発チームに異動をしました。
現在のチームと前に所属していたチームについて
前に所属していたチームでは2021年の4月にはアジャイル開発を取り入れていました。前のチームでのアジャイル導入のnoteは以下です。
一方、現在所属しているチームは、同じ研究開発部門のチームではある一方で典型的なアジャイル開発とは離れたチームでした。
以下に両チームの状況をまとめました。
以上のような背景の中で現チームに異動した際のPMとの1on1で「現チームに、前のチームのいい文化を導入したい」と相談しました。そこで上がったのが「ふりかえり」だったため、導入してみることになりました。
ふりかえりを導入する前の状況
ふりかえりをやってみたいという話をメンバーに朝会で伝えたところ、返っ以下のようなリアクションが帰ってきました。
アクションが身になるのかわからない
誰かを批判する場になってしまうのではないか
その人の行為や技術力に関するふりかえりになる
過去にしたふりかえりが身になってないと感じている
案件単位だと他の案件の時に意味がない
ふりかえりをやってみた
実際に異動して約2ヶ月後の2023年11月末に、ふりかえりを実施することになりました。
注意したこと
ふりかえりに対してあった印象の1個1個に対して、以下の対策を行いました。
1回目やってみた
フレームワークとしてはアイスブレイク(チェックイン)、タイムライン、KPTを使いました。各フレームワークについてはこちらを参考にしてチームに合うようにチューニングをして行いました。
アイスブレイク
タイムライン
KPT
アイスブレイクではまず、話すハードルを下げたり、明るい気持ちで臨んでもらったりする名目で最近あったいいことを話してもらいました。
タイムラインでは、事前にファシリテーターがチーム内の大きな出来事に関しての付箋(グレーの付箋)を配置し、少ない時間で思い出せるようにして取り組みました。その結果、自然とチームに関連した内容を中心にそれぞれが思い出せていたと感じました。
KPTでは、あえてTryを出す時間は確保せずに、KPを出すことに取り組んでもらいました。時間の制約があったためもありますが、ここでは議論したいことが決まればいいと考えていました。
結果としてはメンバー個々人がPJ全体に関わる様々な課題を持っていたこと、そしてそれを全体で共有する機会があまりなかったことが明るみに出ました。
全体を通して
最初の想定通り、メンバー間で共有できていない課題がたくさん出てきた印象でした。また、それぞれの課題に対して、少しだけ深掘りをすることで各課題に対するアクションが明確になっていた印象を受けました。これはベテランのチームだから出来たのだと思っています。
また、実施前に一番懸念されていた個々人を責めるような意見も出ませんでした。タイムラインの内容は伏せましたがタイムラインで各個人ではなくチーム全体に関連した話題を思い出せていたからではないかと思っています。
続けてみた
実施後にチームメンバーからやってよかったという声が伺えたので12月末と1月末にも行いました。
2回目、3回目のふりかえりについて
フレームワークはタイムライン以外はすべて違うものを用いました。
意図としては、ふりかえりをやらなくていいものと思っていたメンバーが続けてやっていくには、まず飽きさせてはいけないと思いました。また、よりポジティブに行えるフレームワークでふりかえりを今後も続けていきたいと思ってもらいたかった意図もあります。
学習マトリクス
4L
実際のふりかえりボードは次のようになりました。
アクションやその行動
各回明示的にふりかえりのアクションを決めるつもりはなかったのですが、自然とアクションが1つ決まりました。
さらにそのアクションはチーム全体に関係あり、大きすぎないものが決まっていきました。
そのおかげで、次回のふりかえりまでには確実にアクションを消化することができ、実績としてもチームメンバー全員の成功体験につながっていると感じています。
2、3回目とふりかえりをやってみて、アクションはできるだけ大きすぎないものに決まると続けやすいのではないかとわかりました。
ふりかえりをして変わったこと/良かったこと
ふりかえりに対する印象の変化
2回目のふりかえりが終わったタイミングでメンバーにアンケートを取りました。以下がそれの一部抜粋になります。
アンケートで興味深い結果になったのはメンバーのふりかえりに対する印象の変化です。ふりかえりを始める前はマイナスな印象が多かったのに対して、ふりかえり後はポジティブな印象であったり有意義に感じてくれていたりしていて印象が180度変わっていました。
また、今後も続けたいかについては、全員が続けたいという回答をしていました。導入した身としては非常に嬉しい回答でした。
以上のことから今回のふりかえりの導入としては成功したのではないかと考えています。
まとめ
導入する上で重要だったこと
事前のヒアリング
事前に朝会でヒアリングをしたことでなぜ今までふりかえりをやらなかったのか、ふりかえりをやるにあたって何が懸念されていたのか、これらを聞くことができたので対策を立てて導入ができたと思っています。
根付くための工夫
上のような懸念事項があるためそういったふりかえりにならないように、ポジティブなフレームワークや話しやすくなるフレームワークを選んだり、ハードルを下げたりといった工夫が、ふりかえりを続けていきたいに繋げられたと思っています。
また、30分以内に収めることで参加自体のハードルを下げたり、時事的なアイスブレイク(チェックイン)をやることで心理的なハードルを下げたりしたことが、ふりかえりを続けていきたいに繋がったと考えています。
アンケートの実施
ふりかえりをやってみたフィードバックをもらうために、メンバーが感じていたことを率直に聞いてみましたが、これからどのようにふりかえりを続けていったらいいかや、メンバーがふりかえりに対してどう感じていたかを知ることができました。
結論
上のような工夫で今回のチームへのふりかえりの導入がうまくいったと思っています。
今後も、チームでのふりかえりを続け、よりよいふりかえりにしていくのと同時に、アジャイル開発の文化のよいところをチームに導入していきたいと思っています。
さいごに/今後の展望
私が一番今回のふりかえりの導入のなかで大切だったと感じたことは、メンバーがなぜふりかえりをやってこなかったかを聞いたヒアリングとそれをもとにおこなった対策がすべてだと思います。
もし、導入を検討している方がいらっしゃいましたら、まずメンバーがふりかえりに対してどんな印象を持っているのか聞いてみるのがいいのかもしれません。