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iOS版『NAVITIME』アプリをリニューアルした話

はじめに

こんにちは。2Fのひとです。
ナビタイムジャパンで『NAVITIME』アプリの開発、運営を担当しています。

この記事では2022年7月1日にリリースしたiOS版『NAVITIME』アプリのリニューアルについてお話させていただきます。
プレスリリースはこちらです。

『NAVITIME』アプリとは

『NAVITIME』アプリは、ドア to ドアで徒歩・電車・車・バス・自転車など様々な移動手段を組み合わせたマルチモーダルなルート検索を提供しています。
2010年にスマートフォン向けのサービスを提供開始しており、当社のサービスのなかでもっとも長い歴史のあるサービスのひとつです。

リニューアルに至った背景

iOS版『NAVITIME』アプリは2010年にサービス提供を開始して以降、2015年の全面リニューアルを経て、その後も機能追加、改善を行ってきていましたが、技術面とUI面でいくつか課題を抱えていました。

技術面の課題

技術面の課題としては、過去にさまざまなバージョンアップや他サービスとの連携などを積み重ねてきた結果、今となっては利用されているかどうか判断の難しい処理や、Objective-Cで書かれた古くからの処理がいたるところに残ってしまっていたことです。
これまでも部分的なリファクタリングを行ってデッドコードの削減やSwift化を進めてきましたが、そういった技術的な負債を一掃することはできていませんでした。
最近では社内のiOSアプリエンジニアのなかでもObjective-Cの経験者が少なくなっていることもあり、Objective-Cのソースコードを読み解く必要がある『NAVITIME』アプリはメンテナンスコストがかかってしまっていました。

UI面の課題

一方、UI面については以下のような課題がありました。

  • サービス全体の統一感
    長年、機能追加や改善を行ってきましたが、その時々で機能・画面に最適なUIを採用してきた結果、特に古くからある機能・画面と、最近できたものとで、使用しているUIパーツや画面遷移時の挙動がバラバラになってしまっているなど、サービス全体で統一感のない作りになっていました。

  • 主要な機能へのアクセシビリティ
    『NAVITIME』アプリはルート検索、時刻表、地図、運行情報、道路混雑情報、またそれに付随する便利機能など多くの機能をもったサービスです。しかし例えばルート検索と並んで多く利用されている時刻表機能は、「メニュー」タブから便利機能の一覧にある「時刻表」をタップして、はじめて検索できる画面にたどり着きます。このようにユーザーの利用ニーズとサービスの構成とが必ずしも一致していないことによって利便性が損なわれていました。

  • 多種多様なルートバリエーションへの対応
    実際のサービス利用シーンとして、電車で行くルートを確認してから、バスやタクシーなど移動手段を変えてルートを比較したり、はじめて行く場所だからゆとりをもって乗換できるルートを確認したり、といったように条件を変えてルート検索をしなおすことがあるかと思います。しかしそのように再検索をしようとした場合、既存アプリではその都度検索TOP画面に戻って検索条件を入力しなおす必要がありました。
    ユーザー一人ひとりのニーズにそった多種多様なルートバリエーションを提供できることが『NAVITIME』アプリの魅力のひとつである一方で、それを提案しづらいUI設計になっていました。

以上の背景から、今後よりスピーディにサービスの新しい価値をユーザーに提供するため、また『NAVITIME』アプリをより便利で快適に使っていただくため、全面的なリニューアルの実施に至りました。

リニューアルのコンセプト

『NAVITIME』アプリの特徴である徒歩・電車・車・バス・自転車などを組み合わせたマルチモーダルな経路検索かつ、一人ひとりのニーズにあわせた、きめ細やかで充実した経路バリエーションをより体験してもらえるよう、

「マルチモーダルな経路探索で、一人ひとりに合わせた豊富な経路バリエーションを提案する」

というコンセプトのもとリニューアルを実施することになりました。
また近年普及が進んでいるシェアリングサービスやマイクロモビリティなど、新たな移動手段にも対応できる拡張性も考慮することになりました。

リニューアルで取り組んだこと

前述のとおり、リニューアルにあわせてUI面での課題も解決するため、デザインも大幅に刷新することになりました。

デザインのコンポーネント化

サービス全体の構成を再整理し、サービス内で使用するアイコン、フォント、カラーなどのデザイン要素をコンポーネント化することで、サービス全体で統一感をもたせるようにしました。

サービス構成を整理したワイヤーフレームの一部
サービス内で利用するデザイン要素をコンポーネント化

デザイン要素をコンポーネント化したことによって、サービス全体の見た目を統一することができました。さらにはエンジニア、デザイナー間でデザイン要素が共通言語化されたことにより、どのフォントサイズ、カラーを使うかといったやりとりがスムーズになりました。

またデザイナーが意図した見た目に落とし込みやすくなったため、細かいデザインを調整する際のコミュニケーションコストを下げることにもつながりました。

ユーザーテストと、テストアプリの配布

ただ、リニューアルにあわせてデザインの刷新を行うためには、既存ユーザーへの影響を最小限にとどめる必要がありました。既存アプリに慣れ親しんで使っていただいているユーザーが操作に迷うことなく、スムーズにリニューアルアプリに移行していただくためです。

そこで、既存アプリを使い慣れているユーザーが感じた課題を抽出し、あらかじめ取り除くことで、リリースした際の影響をおさえられるよう、以下のようなプロセスを踏むことにしました。

  • 社内でのユーザーテストの実施

  • 社員向けのα版テストアプリの配布

  • 一般ユーザー向けのβ版テストアプリの配布

1つめは社内でのユーザーテストの実施です。
今回のリニューアルの詳細を知らない、既存アプリを普段から利用している社員のなかからテスターを募り、いくつかのシナリオにそってリニューアルアプリを体験してもらうユーザーテストを実施しました。

実際に操作している様子を観察し、操作に迷ったり、こちらが期待した操作と違った行動をとったりしたところを洗い出していきました。そこで出てきた課題はインパクト分析の手法を使って分類分けをし、致命的な課題から優先的に対応しました。

ユーザーテストで課題を抽出
インパクト分析で課題を分類し優先度を決定


2つめに社内向けにα版のテストアプリの配布を行いました。
社内で呼びかけたところ100人近い社員がテスターとして参加してくれて、細かい文言レベルの指摘から技術的なアドバイスまで、たくさんのフィードバックをもらうことができました。
また検証では見つからなかった不具合やクラッシュが発覚するなど、品質面の向上においても非常に重要なプロセスとなりました。

最後にTestFlightを使った一般ユーザー向けのβ版テストアプリの配布を行いました。
特に既存アプリを長く使っていただいている一般ユーザーを中心にβ版アプリを限定公開し、実際に使ってみたご意見やご感想をフィードバックしていただきました。

社内でのユーザーテストと違い、実際に操作している様子など詳細を確認することはできませんでしたが、さまざまな方からフィードバックをいただくことで、社内調査では気づけなかった、既存アプリと比較して使いづらい点や分かりにくい点をリリースする前に解消することができました。

乗換駅の色味が薄くて見づらいとの指摘を受けて色のバランスを微調整


また、リニューアルにともなって利用者数の少ない一部機能のクローズなど機能の絞り込みを検討していましたが、単純な数字からは読み取りきれないコアユーザーからいただくフィードバックは、アイテムの優先度を決めるうえで非常に貴重な材料となりました。

こうして実際にリリースしたリニューアルアプリの詳細についてはプレスリリースで紹介していますので、ぜひそちらもあわせてご覧ください。

さいごに

無事リニューアルアプリをリリースし、およそ1か月がたちました。
リリース後、ユーザーからいただくすべてのご意見やレビューに目を通していますが、「バージョンアップしてよくなった」というご意見の一方で、なかには「以前に比べて使いづらくなった」というご意見も寄せられています。またチーム内でもいろいろと新たな課題が見えてきており、ようやくこれからの改善のスタートラインに立った、という心境です。

現在はユーザーからいただくフィードバックをもとに、週1回のペースでバージョンアップすることで日々サービスの改善を進めていますが、リニューアルをしたことによって以前に比べてそういった要望にスピーディに応えられるようになったと実感しています。

今後も引き続きサービスの改善を行いながら、機能拡充や情報連携など新たな価値提供を推進し、より多くのユーザーに安心安全で快適な移動体験を提供できるサービスの実現を目指していきます。

ぜひ一度リニューアルした『NAVITIME』アプリをお試しいただき、ご意見、ご感想をいただければ幸いです!