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「迂回ルート検索」機能強化の裏側ーちょっと離れているけど実は歩くと便利な乗換駅ー

こんにちは、tokiです。
ナビタイムジャパンの研究開発部門で乗換探索エンジン開発を担当しています。

当社が提供する『NAVITIME』、『乗換NAVITIME』などのサービスでは、遅延や運休が発生している区間を避けたルートを検索する「迂回ルート検索」機能を提供しています。

さらに便利なルートを提示すべく、機能を強化するアップデートを昨年12月にリリースしました!

今回はその機能の紹介と、開発の裏にあった工夫をお話しします。


強化された迂回ルート検索

迂回ルートの基本的な機能は「運休している路線や区間を避ける」ことですが、これを実現するために、出発地から少し離れた駅への徒歩移動を考慮しています。これは、出発地から少し離れていても、運行している路線を使ったルートを提示することが主な目的です。

今回の機能追加では、出発地だけでなく、「駅と駅の間」でも少し離れている徒歩移動が考慮できるようになりました。言い換えると、「ちょっと離れているけど実は歩くと便利な乗換駅」を使うルートも提示できるようになりました。

運休や遅延が発生している状況では、少し歩いてでも離れた駅への乗換ルートを提示することにメリットがあるのではないか?と考え、今回の機能強化に至りました。
近年、鉄道の運休が増加傾向にあり、迂回ルート検索のニーズも増えています。提示できるルートのバリエーションを増やすことで、移動の際の手助けになると考えています。

開発時の課題

「駅と駅」「駅とバス停」などを移動する徒歩乗換ルートを提示するには、乗換の徒歩時間設定データをあらかじめ作成することが必要です。このデータは、主に人の手で作られています。
徒歩時間設定データについての詳しいお話は、こちらの記事をご確認ください。

今回の機能開発においては、このデータ作成に課題がありました。

乗換距離が従来よりも長くなるため、新たに多くのデータを作成する必要があります。さらに、運休や遅延は日本全国で発生する可能性があるため、対応エリアを限定せず、全国規模のデータを作成してルートに反映させたいと考えています。

上記のことから、データ作成にかかる手間がとても大きくなってしまい、人の手で作成するのが現実的ではないという課題がありました。

解決策

当社は徒歩ルートを検索する経路探索エンジンの技術を保有していることから、今回はエンジンを利用して駅と駅の間の乗換時間を検索する方針としました。

徒歩時間データの精度を高める工夫として、当社が保有している屋内ルート検索の技術を活用しています。
「駅」から「駅」への徒歩移動という粒度では品質の高いルートを提示することができないため、「駅のホーム」から「駅のホーム」への移動も考慮したデータを作成しています。これは、東京駅や新宿駅などの規模の大きな駅では、路線ごとにホームの位置が大きく異なるため、必要な工夫となっています。

このような工夫によって、日本全国の品質の高い乗換データを生成することができました。データ数は約1万9,000件となり、人の手での作成ではハードルが高かったデータを短い期間で作成することができました。

終わりに

当社では、さまざまな選択肢のあるルートを複数提示することが重要だと考えています。特に、運休や遅延が起こった場合に使われる迂回ルート検索では、ルートの選択肢が移動の意思決定をサポートする上での重要な観点になります。

今回は鉄道駅同士の乗換データ整備を行いましたが、今後はバス停への乗換も考慮することを検討しています。
例えば、駅から少し離れているバス路線のバス停や、市街地からは少し離れた高速道路上にある高速バスのバス停へ乗り換えるルートなどの提供が可能になり、さらにルートのバリエーションを増やすことができると考えています。

今回の機能強化により、提示できるルートのバリエーションを増やすことができました。さらに便利になった『NAVITIME』、『乗換NAVITIME』などのサービスをご活用いただければと思います。