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ユーザーの走行ログから目に見えない課題を改善した話

はじめに

こんにちは、てぃーまさです。
ナビゲーション向けの測位技術の研究開発を担当しています。
当社では正確なナビゲーションをお届けするためユーザーからいただいたご意見をもとに精度改善に取り組んでいます。
ご意見は多種多様にあるためナビゲーションに関するご意見の内容を分類し、件数の多いものから改善を進めています。
(参考)

一方で、ご意見の少ない課題や、ご意見に表れていない課題がないということではありません。
今回は、そのような目に見えない課題をユーザーの移動ログから発見し改善した内容を共有しようと思います。

経緯

当社で実施しているカーナビアプリを実際の道路走行でテスト利用するフィールドテストで、トンネル内でのナビゲーション中に速度が急減速したような動きになる事象が起きました。
事象の規模を把握するために発生件数を確認したかったのですがご意見としては着信していませんでした。
ご意見のない事象の発生件数を他の手段で知ることはできないかと考え、ユーザーに提供いただいている走行ログをもとに発生件数を可視化し事象の改善を実施してみました。

やったこと

走行ログから事象の発生件数を可視化するためには以下の手順が必要になります。

  1. 走行ログから特徴を探す

  2. 事象が起きている走行ログのみをグラフで可視化する

  3. 事象を改善し可視化したグラフで効果を見る

以降紹介する事例は個人情報保護上、ユーザーのログではなく、フィールドテストのログの画像になります。

走行ログから特徴を探す

トンネル内で速度が低下している走行ログ

トンネル内で速度が低下している走行ログを実際に確認してみると、
以下の特徴があることが分かりました。

  • トンネル内に入るまでは時速60kmで走行している

  • トンネルに入った直後から時速20kmまで低下している

事象については報告を受けたとおり実際の走行ログからも、
トンネル内で速度が低下している特徴を確認できました。

事象が起きている走行ログのみをグラフで可視化する

事象の件数を算出するために前述の特徴に当てはまる走行ログのみを抽出しました。
当社で保持している走行ログはSQLで抽出することができるようになっているため、トンネルに入る直前と直後の合計3点の走行ログが以下の条件に当てはまるものを絞り込みました。

対象とする3点の走行ログ
  • 赤丸

    • トンネル以外を走行している

  • 青丸

    • トンネルを走行している

  • 緑丸

    • トンネルを走行している

    • 青丸よりも時速が20km以上低下している

事象を改善し可視化したグラフで効果を見る

事象について可視化するとご意見に表れてはいない事象でしたが発生しているユーザーが多いことが分かったため早急に改善をリリースしました。
改善リリースがされている現時点では大幅に件数が減っていることが分かります。

現在も発生してしまっているユーザーについては、
別の原因である可能性もあるため今後も継続改善をしていきます。

結果

件数を可視化することで規模感を知ることだけではなく、
不具合対応後の効果も同時に可視化できるようになりました。

今まではご意見の増減でしか対応の効果が見られませんでしたが、
実際の走行ログからも改善が表れているかを見ることができるようになりました。

おわりに

今回は、ユーザーの走行ログから目に見えない課題を可視化した内容について共有しました。
今回紹介した手法によってユーザーの走行ログをもとに課題を発見することができるようになったため、今後はより迅速に課題の発見から改善までを進めていきます。