【事業責任者インタビュー】ソリューション事業
MaaS/CASE/交通データ事業、ビジネスナビタイム事業に続く法人向けビジネス紹介、「事業責任者インタビュー」の第3弾は、ナビタイムジャパンの創業時から続く「ソリューション事業」です。
【話し手】
鈴木 祐介 : 株式会社ナビタイムジャパンの創業初期である2000年入社。以降、個人向け・法人向けのサービスの開発や事業責任者を歴任。現在はソリューション事業の責任者を務めている。
【聞き手】
採用チーム(あ)
ナビタイムジャパンの技術資産を提供する「ソリューション事業」
ー今日はお忙しい中ありがとうございます。まずは、ソリューション事業がどのような事業なのかというところからお話しいただけますか?
一言でいうと、ナビタイムジャパンが自社サービスを開発・提供してきた中で培った技術を、他の企業の方々が開発するサービスやシステムの中で利用できるようなカタチにして提供しているのが、「ソリューション事業」がおこなっていることです。
ー具体的にはどのような技術を提供されていらっしゃるのでしょうか?
基本的には全部と言って良いと思います。ルート検索、地点検索、地図表示など、我々が提供しているナビゲーションサービスにはさまざまな機能が備わっていますが、その全てを他の企業でもお使いいただけるようにしています。
ーそうすると、お客様によって当社のどの技術を使いたいと考えられているのか、そのニーズは各社バラバラなのでしょうか?
そうですね。なので、提供する技術は細かく分けていて、使いたいもの、欲しいものだけを組み合わせて使えるようにしています。
現在、「ソリューション事業」が提供するプロダクトの中で最も多くご利用いただいているのが『NAVITIME API』になるのですが、住所検索、スポット検索、地図を表示する、移動手段ごとのルート検索など、その一つひとつがAPIとして切り出されています。
「地図だけ使いたい」というお客様には地図表示の機能だけを使っていただき、「スポット検索をして、該当箇所を目的地としてルート検索し、選んだルートを地図に表示して・・・」というような感じで、複数のAPIを組み合わせて使いたいというお客様にはそれができるように、お客様自身が何を実現したいかによって選んでいただけるようになっています。
「API」をあまり聞いたことが無いという方のために簡単に説明すると、Webのブラウザで何かを表示する際、「https://・・・」みたいなかたちのURLと呼ばれるものがありますが、APIも同様に、決まった書式でURLを記述するとナビタイムジャパンのサーバに接続され、ルート検索を実行して結果を表示したり、地点情報を呼び出したりすることができるようになる、というものです。
Webのブラウザの場合は、Webページのかたちでサーバが結果を返し、それをみなさんが見ているのですが、APIの場合はJSONと呼ばれる形式でサーバが情報を返すようになっています。当社のAPIをご利用いただいている企業の方は、その返ってきた情報を使って、表示方法やデザインなどを自由に作り込むことができるようになっています。
ソリューション事業の顧客は多岐にわたる
ーソリューション事業にとってのユーザー、主な法人のお客様というのは、どのような業界が多いのでしょうか?
ご利用いただいている業界は非常に多岐にわたっていて、不動産、人材派遣、電鉄やタクシーなどの交通、物流、IT、自動車メーカーなど、本当にさまざまです。
私たちがやっていることは、端的に言えば法人のお客様に対して技術提供をする、ということですが、お客様がなぜ当社からの技術提供を求めるかと言うと、何か課題を感じていたり、何かニーズを持っていたりするからなんですよね。その課題を解決したり、ニーズを満たしたりするには2つ選択肢があると思います。
①世の中に既にあるものを利用して解決/満たす
②解決する/満たすためのものを新しく作る
だと思います。この②に当たるのが私たちがやっていることです。
企業にはそれぞれに固有の仕事の進め方や文化などがあって、①の「既にあるもの」を利用したとしても、うまくハマらないケースもあります。そうしたときに、「自分たちで作ったほうがいいよね」という選択肢が出てきます。ただここで、例えばルート検索の機能のように、そんなに誰もが簡単に作れるものではないものもあるので、私たちが開発したAPIを活用することによって問題を解決/ニーズを満たしていただいています。
こういう動きになっている大きな背景として、多くの企業がDX化に取り組むようになったことが挙げられると思います。既に進んでいる業界や企業も、まだまだこれからのところもあります。その中でも、人やモノの移動に関わる「現場」でのDX化がまだ進んでいないところも多くあるんですよね。そこにナビタイムジャパンの技術を活用していただくことで、移動を伴うような「現場」での課題解決ができるということで、さまざまな業種業態の企業様から引き合いをいただいているのかなと思います。
移動を伴う現場のDX化を行う際に、例えば本当に効率よく移動できるルートが出てこない、存在しているはずの公共交通機関がルートとして出てこない、といったことがあると、DX化をしたかったはずなのにかえって無駄が発生してしまうということもあると思います。その点において、技術力やデータの精度の高さ、カバレッジの高さで当社を評価していただいているのかなと思います。
ー同じ業界のお客様は、近しいニーズをお持ちで、同じ技術やデータを求められるケースが多いのでしょうか?
そういう面もありますが、意外に全く違うものを求められるケースもあります。そういうところが、先ほどお話しした「既にあるものを利用する」がうまくハマらない所以なのかなと思います。ナビタイムジャパン全体としては、ビジネスナビタイム動態管理ソリューションなどのように、「既にあるもの」にあたるパッケージ型のシステムを提供することも、私たちが取り組んでいるソリューション事業のように「お客様ご自身が新しく作るための技術を提供すること」も、どちらにも取り組んでいて、世の中のニーズに応えようとしています。
DX化の時代だからこその「ノーコード」「ローコード」
ーテレビCMなどでは「パッケージ型のシステム」を見かけることの方がまだまだ多いのではないかと思いますが、世の中の流れとして課題解決の手法、DX化の手法として「『APIを活用』して自分たちで作る」という動きが増えてきているのでしょうか?
そうですね。こういう動きの中で良く取り上げられるワードとして、「ノーコード」「ローコード」というものがあります。
課題を解決したい、DX化を進めたい現場の方がソフトウェアを開発できるわけではないことも多いので、これまではパッケージ型のシステムを選択するしかないことも多かったのですが、近年ではそこに「ノーコード/ローコードの開発」を行う、という選択肢が入ってくることが増えてきました。
今までは何かのシステムが必要なときに「エンジニアがいないと開発できなかった」ため、それをシステムインテグレータなどに発注していましたが、非エンジニアである現場の方でもシステムの開発ができ、課題解決やDX化を進めていく、ということが「ノーコード/ローコードの開発」によってできるようになってきました。これが「エンジニアリングの民主化」です。
先ほどお話しした『NAVITIME API』も、エンジニアの方であればすぐにわかっていただけるかと思いますが、非エンジニアの方にとってはハードルに感じてしまう方もいらっしゃると思います。そこで私たちも、ナビタイムジャパンの技術をより多くの方に活用していただきやすくするために、「ノーコード/ローコード」の技術提供に取り組んでいて、その一つが『Widget API』や『NAVITIME Tools』です。
システム開発ができる方がいらっしゃれば『NAVITIME API』、本格的な開発はできないがローコードに取り組んでいる方には『Widget API』、開発無しで簡単に技術を活用したいということであれば『NAVITIME Tools』、というように、お客様自身がそれぞれに合ったかたちでナビタイムジャパンの技術を利用できるように、プロダクトのラインナップを拡大しています。『NAVITIME API』はDX化の推進のために全社で活用するようなシステムの開発にご利用いただくことが多いですが、一方で『NAVITIME Tools』は会社全体で導入というよりも、お客様の企業の中でも特定の部署だけで使っていただく、というケースが多くあります。
また、『NAVITIME API』はこれまで企業のお客様にご利用いただくことを想定していましたが、特に交通・移動に関連した分野に関する研究をされている大学の研究室やそこに所属されている学生の方から問い合わせをいただくことも増えてきました。ただ、研究室の予算の壁もあると考えられるため、割安でAPIを活用いただける「アカデミックプラン」を用意しました。そこからは、学生のみなさんが地域交通の課題解決や最適化、MaaSの実現に向けた研究などで活用いただくケースも増えてきています。
さらに、個人の方でも『NAVITIME API』をご利用いただけるように、「Rapid API」というマーケットプレイスを通じて販売を始めました。法人契約が不要で、サイト上でAPIを購入できますので、個人で開発をされている方が気軽にナビタイムジャパンの技術を活用できるようになりました。
創業期から続く事業が見据える未来
ー現在のソリューション事業にあたる、「法人向けにナビタイムジャパンが開発した技術を提供する」ということは、当社の創業時からおこなわれていたことかと思いますが、改めてその歴史や変遷についてお話しいただけますか?
私が入社したのは創業の年に当たる2000年でしたが、当時行われていた事業活動は実質的にこのソリューション事業につながるものだけでした。当時はAPIもありませんでしたので、「経路探索エンジン」という経路探索を実行するソフトウェアが売り物でした。これは今のAPIと違って、非常にマニアックで使う人を選ぶ、誰でも使いこなせるものではないものだったのですが、他にこういったものを提供できる企業がなかったということもあって、さまざまな企業の方にご利用いただいていました。
その後2003年くらいからはAPIのかたちで提供するようになって、より多くの方にご利用いただけるようになり、また経路探索エンジンだけでなく、他のサービスを開発する中で培われた技術やデータを合わせてご提供できるようになってきました。
こうして多くの業界、企業と接するようになって、それぞれが抱えているさまざまな課題を伺う場面も増えてきました。当事者である企業でしか知り得なかったような課題に触れることで、「ナビタイムジャパンの技術はこういうことの解決にも使えるんだ、こういう活かし方もあるんだ」という気づきが増えてきたことによって生まれてきたのが、今では数多くの事業に成長していったナビタイムジャパンの法人向けサービスなんだと思います。
なので、ソリューション事業は「対法人向けの技術提供」という面を持ちながら、「新しい事業・ビジネスの源泉」という面も持っているのかなと感じています。
2023年2月には、ソリューション事業から新しいサービスとして、『通勤費管理クラウド』の提供を開始しましたが、この背景にも「社会課題」があります。コロナ禍以降、世の中の「通勤」に対する在り方が変わってきて、出社とリモートワークが組み合わされるようになってきたりしましたが、企業ごと、部署ごと、あるいは個人ごとに出社とリモートワークの割合がバラバラになったりしています。これにより、これまでのように社員の通勤交通費を管理することが非常に難しくなっていて、かつてのようなアナログな管理では限界になっています。さらには、鉄道会社による運賃改定やオフピーク定期券の設定など、さらに複雑化は進んでいて、これまで以上に通勤交通費の正確な管理が企業の課題になってきているということを、さまざまな企業とやりとりをしていて強く感じました。
そこで、正確な通勤交通費を、簡単に、確実に、使いやすいユーザーインターフェースで管理できるシステムを提供したら、多くの企業に喜んでいただけるのではないかという想いで開発したのがこの『通勤費管理クラウド』です。
今はソリューション事業が提供するサービスの一つですが、世の中の動きやニーズを考えると、これまでナビタイムジャパンのさまざまな法人向けサービスが辿ってきたように、一つの事業として一本立ちし、大きく成長していくことも充分に考えられるのかなと思っています。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!