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【事業責任者インタビュー】MaaS/CASE/交通データ事業

ナビタイムジャパンというと、スマートフォンやWebブラウザ上で使うことのできる「ナビゲーションアプリ」のイメージが強い方が多いかと思います。ですが、現在当社が展開している事業のおよそ半分は、法人向け(to B)、官公庁・自治体向け(to G)のものとなっています。

今回は、当社のto B向け、to G向け事業のうちの一つである「MaaS/CASE/交通データ事業」の事業責任者に、事業の現在・未来について語ってもらいました。

【話し手】
森 雄大 : 2009年入社。エンジニアとしてモバイルアプリケーションの開発に携わった後、『自転車NAVITIME』『カーナビタイム』を企画。テレマティクス事業、トータルナビ事業の責任者を歴任した後、2019年にMaaS事業の立ち上げを行い、2022年度からはMaaS/CASE/交通データ事業の責任者に就任。

【聞き手】
採用チーム(あ)

「経路探索1.0」から「経路探索2.0」へ

ー今日はお忙しい中ありがとうございます。今日は、就職活動中のみなさんからも質問されることの多いto B、to G向けビジネスを展開している事業の中でも、「MaaS/CASE/交通データ事業」の責任者である森さんにお話を伺いたいと思います。まずは、どのような事業なのかということからお話しいただけますか?

ナビゲーションサービスを単純化すると、各移動手段・公共交通機関のデータやユーザーの希望を条件としてインプットし、経路探索エンジンを用いて条件に合った経路の回答をアウトプットする、というものです。これを「経路探索1.0」とすると、我々が「MaaS/CASE/交通データ事業」でやろうとしていることは「経路探索2.0」と言えるのではないかと思います。
ナビゲーションサービスによって、それまでは主に経験則や知識によって行われていた人の移動が、実際のデータやコンピュータによる計算によってはじき出された回答にもとづき変化していきました。
サービスを提供している我々のもとには、ユーザーの方々の「ログデータ」が残りますので、これを解析していくと「世の中の人の移動」が可視化できるようになってきたのです。これを各移動手段・公共交通機関側にフィードバックしていくことで、より良い移動・交通体系を作り上げていきたい、という考え方です。

事業の根幹を成す「交通データ事業」

その根幹にあるのが「交通データ事業」です。
当社は、徒歩、車、鉄道、バス、飛行機、フェリー、自転車、バイク、トラックなど、世の中のほとんどの移動手段を網羅するナビゲーションサービスを展開しています。このことが、自動車メーカー、公共交通事業者、乗換案内サービス提供者では持ち得ないデータを収集することができるという、当社の大きな強みに繋がっています。

交通データ事業の中では、いくつかのサービスを提供しているのですが、その中で2022年度大きく伸びたサービスの一つに、『道路プロファイラー』があります。

これは、当社が提供する車向けのナビアプリを使って移動していただいた方の走行ログデータを、官公庁や自治体、研究機関、建設コンサルタント会社、道路事業者などに購入いただき、今後のインフラ整備計画に活かしていただいています。

ー交通データ事業の今後の展望、課題についてはいかがでしょうか?

今後の課題としては、流通、データ量の部分だと考えています。競合するサービスとくらべて提供するスピード、分析できるスピードを上げていくことによって、使っていただくことへのハードルを下げていき、さらにデータ量も充実させていくことによって、「ナビタイムジャパンのプロダクトで充分だよね」と思っていただけるようにしていきたいと考えています。

MaaS・CASEと一体化していることの意味

ー交通データ事業については、この記事を読んでいただく方にもご理解いただけたのではないかと思いますが、MaaS、CASEという2つのビジネスと一体化していることについては、なぜだろう?と思う方も多いのではないかと思います。この点についてもお話しいただけますか?

私自身はこの3つのビジネスが1つの事業になっていることに強い必然性を感じています。事業全体を通じて、より良い移動・交通システムを作り上げていくことがミッションになっているのですが、先ほどお話ししたように、「交通データ」を根幹にしながら、MaaS事業を通じて公共交通機関へ、またCASE事業を通じて自動車メーカーや自動車保険を提供する損害保険会社などへ、それぞれアプローチしています。同じ事業の中に3つのビジネスが入っているからこそ、連携・連動性をより高めていくことができているのではないかと思います。事業を進めていく中で、このシナジーは強く感じています。

MaaS事業について

ー続いて、MaaS・CASEについてもそれぞれどのような事業なのか、お話しいただけますか?まずはMaaSからお願いします。

さきほども少し触れましたがMaaS事業の中でお客様になっていただいていていてお名前をお出しできるのが、トヨタ自動車様、JR西日本様、名古屋鉄道様です。

これらの企業様が乗客、利用者の方々と直接的な接点を持ちたいということで作られたアプリケーションに対して、当社としては経路探索エンジンの提供や、データ分析、その他各種助言・提案をさせていただいています。
またこういった事業者様向けに提供し始めたのが、『NAVITIME MaaSトレンド』という製品です。さきほどもお話ししましたが、この製品はまさに「交通データ事業」と「MaaS事業」のシナジーによって作ることができた製品だったと思います。

近年、公共交通事業者の「MaaS」に対する関心が非常に高まっていますが、これからの世の中のことを考えたときに企業や移動手段という垣根、枠組みを超えて連携していくことによって、移動を便利にし、移動機会を増やしていくことによって経済を発展させていきたいということがあり、特にコロナ禍によって一時的に世の中の移動の形が変わったことで、公共交通事業者がダメージを受けたところから、より顕著になったのではないかと思います。
また、もう一つ公共交通事業者がMaaSに対して関心を高めている理由があります。それは乗客の方々とのデジタルな接点を持ち、その分析を行うことで、公共交通機関に乗っていただくだけでなく、沿線で買い物をしていただいたり、沿線に住んでいただき、沿線の経済活動を活性化したい、ということです。
特に、日本の鉄道事業者は人を運ぶ旅客サービスだけでなく、沿線の都市開発や駅と直結する商業施設の開発などを通じて、衣食住働遊の全てにアプローチするというビジネスモデルをとってきました。MaaSが発展していく際にアプリ、そこから得られるデータ、というデジタルの接点を持つことによって、これまで鉄道事業者を支えてきたビジネスモデルを維持発展させていきたいということも、公共交通事業者がMaaSへの関心を高めている背景にあるのではないかと思います。

ーなるほど。そうなると、本来のMaaSの考え方とは異なってしまいますが、「MaaSアプリの中で、自社の路線が優先的に表示されるようにして欲しい」のようなオーダーも出てきますよね?

そうですね。そのようなお話をいただくこともあるのですが、我々はハッキリとお断りしています。仮に、自社の路線を使う経路が優先的に表示される、というような自社を利するようなことをしたとしても、今の時代、選択肢はたくさんありますし、企業と市民の情報の非対称性も無くなってきているので、結果的にユーザーの方々が離れていくだけですよ、ということをお伝えしています。
最近では、ナビタイムジャパンはユーザーの方々や「世の中にとっての最適」という視点に立って仕事をしている、ということを理解した上でお付き合いしてくださる企業が増えてきたのではないかと思います。結局のところ、正直に誠実に向き合う、作るということが、長く使われるサービスを生み出す上で大事なことなのだと思います。

ーナビタイムジャパンのモノづくりやサービス提供に対する姿勢を評価していただいた、ということも選んでいただいた大きな要因だと思いますが、他にはどのようなポイントがあったのでしょうか?

特に我々が提供できるものの中でバリューを感じていただいたのが、「地点データ」と「ファースト&ラストワンマイル」です。我々の一番の強みは「ドア to ドアのナビゲーションができるエンジンを持っている」ということなので、公共交通事業者の方々が持てていなかった、乗り物に乗る前にどこから来たのか/降りた後にどこに行ったのか、という部分まで分析できることが、選んでいただいた理由になっていると思います。

「未来の移動」に向けたCASE事業

ー最後にCASE事業についてもお話を伺えればと思います。

特に学生のみなさんにとっては「CASE」という言葉は聞き慣れないと思いますので、ここからお話しできればと思います。
元々はメルセデスベンツなどで知られるダイムラーグループが使い出した言葉で、「Connected(外部・相互接続性)」「Autonomous(自律走行)」「Shared & Services(シェア&サービス)」「Electric(電気自動車)」の頭文字を取ったものなのですが、一企業の話にとどまらず自動車業界全体に影響を与えるキーワード、トレンドでもあることから、一般でも使われるようになってきています。我々としては、とくに「Connected」の部分で、自動車メーカーや損害保険会社と協力していっています。

具体的なプロダクトについては、まだ世の中に出ていないこともあり、公にお話しできることは少ないのですが、「デジタル技術を活用した、新しい保険商品の開発を目指しています」ということだけお伝えします。

もう一つのトピックスとして電動キックボード向けのナビゲーションがあります。2023年7月1日以降、法律が変わるのですが、これを受けて自動車メーカー、あるいはモビリティメーカーという言い方をした方が良いかも知れませんが、それらの企業が電動キックボードやそれに類する個人用のモビリティにどんどん参入していくのではないかと思います。

そういった世の中の動きを受けて、モビリティメーカーに向けたCASE事業という発展があるのではないかと思います。
都内でも電動キックボードが多く見られるようになってきましたが、まだ新しく出てきたものでもあり、本格的な普及に向けては安全啓発の対策、交通ルールを守る仕組みづくりが不可欠で、そこに対する懸念の声も多いです。我々のアプローチとしては、安心・安全な運用がなされるためにどうしていくのか、ということについてあいおいニッセイ同和損保様と一緒に、実証実験を進めていく予定になっています。
電動キックボードが安心・安全に使われるように仕組みづくりをしながら、普及を後押ししていきたいということを考えています。

ー本日は貴重なお話をありがとうございました!


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